このページでは、清少納言『枕草子』第102段「中納言参りたまひて」の品詞分解をまとめています。敬語の種類や敬意の方向、助動詞の意味についてもあわせて解説します。現代語訳とあわせて確認したい方は、枕草子「中納言参りたまひて」現代語訳をご覧ください。
目次
「中納言参りたまひて」の品詞分解
中納言参りたまひて
各文をクリックすると、品詞分解の内容が開きます。
中納言参りたまひて、
- 中納言:名詞。藤原隆家。
- 参り:ラ行四段活用「参る」の連用形。謙譲語。参上する。
- たまひ:ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の連用形。尊敬語。中納言隆家に対する敬意。
- て:接続助詞。
御扇たてまつらせたまふに、
- 御扇:名詞。扇。「御」は敬意を表す接頭語。
- たてまつらせ:サ行下二段活用「たてまつらす」の連用形。謙譲語。差し上げる。
- たまふ:ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の連体形。尊敬語。中納言隆家に対する敬意。
- に:格助詞。時を表し、「~するときに」の意。
「隆家こそ、いみじき骨は得てはべれ。
- 隆家:名詞。藤原隆家。ここでは隆家が自分自身を名前で呼んでいる。
- こそ:係助詞。強意。結びは「はべれ」の已然形。
- いみじき:シク活用の形容詞「いみじ」の連体形。たいそうすばらしい。
- 骨:名詞。扇の骨。
- は:係助詞。
- 得:ア行下二段活用「得」の連用形。手に入れる。
- て:接続助詞。
- はべれ:ラ行変格活用の補助動詞「はべり」の已然形。丁寧語。「こそ」の結び。
それを張らせて参らせむとするに、
- それ:代名詞。隆家が手に入れた扇の骨を指す。
- を:格助詞。
- 張ら:ラ行四段活用「張る」の未然形。
- せ:使役の助動詞「す」の連用形。~させる。
- て:接続助詞。
- 参らせ:サ行下二段活用「参らす」の未然形。謙譲語。差し上げる。
- む:意志の助動詞「む」の終止形。~しよう。
- と:格助詞。
- する:サ行変格活用「す」の連体形。
- に:接続助詞。~するのだが。
おぼろけの紙はえ張るまじければ、
- おぼろけ:ナリ活用の形容動詞「おぼろけなり」の語幹。並一通り。普通。
- の:格助詞。
- 紙:名詞。
- は:係助詞。
- え:副詞。打消の表現と呼応して「~できない」の意を表す。
- 張る:ラ行四段活用「張る」の終止形。
- まじけれ:打消推量の助動詞「まじ」の已然形。ここでは不可能。「張ることができない」の意。
- ば:接続助詞。原因・理由。~ので。
求めはべるなり」と申したまふ。
- 求め:マ行下二段活用「求む」の連用形。探し求める。
- はべる:ラ行変格活用の補助動詞「はべり」の連体形。丁寧語。
- なり:断定の助動詞「なり」の終止形。~のだ。
- と:格助詞。
- 申し:サ行四段活用「申す」の連用形。謙譲語。申し上げる。
- たまふ:ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の終止形。尊敬語。中納言隆家に対する敬意。
いかやうにかある
「いかやうにかある」
- いかやうに:ナリ活用の形容動詞「いかやうなり」の連用形。どのように。どのような様子に。
- か:係助詞。疑問。
- ある:ラ行変格活用「あり」の連体形。「か」の係り結び。
と問ひ聞こえさせたまへば、
- と:格助詞。
- 問ひ:ハ行四段活用「問ふ」の連用形。尋ねる。
- 聞こえ:ヤ行下二段活用「聞こゆ」の未然形。謙譲語。申し上げる。中納言隆家に対する敬意。
- させ:尊敬の助動詞「さす」の連用形。
- たまへ:ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の已然形。尊敬語。
- させたまへ:「さす」+「たまふ」による二重尊敬。中宮定子に対する敬意。
- ば:接続助詞。已然形に接続し、~すると。
「すべていみじうはべり。
- すべて:副詞。まったく。たいそう。
- いみじう:シク活用の形容詞「いみじ」の連用形「いみじく」のウ音便。たいそうすばらしく。
- はべり:ラ行変格活用の補助動詞「はべり」の終止形。丁寧語。~ございます。
さらにまだ見ぬ骨のさまなり、
- さらに:副詞。打消の「ぬ」と呼応して「まったく~ない」の意。
- まだ:副詞。
- 見:マ行上一段活用「見る」の未然形。
- ぬ:打消の助動詞「ず」の連体形。見たことのない。
- 骨:名詞。
- の:格助詞。
- さま:名詞。様子。形。
- なり:断定の助動詞「なり」の終止形。
となむ人々申す。
- と:格助詞。
- なむ:係助詞。強意。結びは「申す」の連体形。
- 人々:名詞。
- 申す:サ行四段活用「申す」の連体形。謙譲語で、ここでは丁寧な意味を表す。「なむ」の結び。
まことにかばかりのは見えざりつ」
- まことに:副詞。本当に。
- かばかり:副詞。これほど。このくらい。
- の:格助詞。「骨」「もの」などを補って考える。
- は:係助詞。
- 見え:ヤ行下二段活用「見ゆ」の未然形。
- ざり:打消の助動詞「ず」の連用形。
- つ:完了の助動詞「つ」の終止形。これほどのものは見たことがなかった、の意。
と、言高くのたまへば、
- と:格助詞。
- 言:名詞。言葉。声。
- 高く:ク活用の形容詞「高し」の連用形。「言高く」で「声高に」の意。
- のたまへ:ハ行四段活用「のたまふ」の已然形。尊敬語。おっしゃる。中納言隆家に対する敬意。
- ば:接続助詞。已然形に接続し、~すると。
さては、扇のにはあらで
「さては、扇のにはあらで、
- さては:接続詞。それでは。そういうことなら。
- 扇:名詞。
- の:格助詞。「骨」を補い、「扇の骨」の意。
- に:断定の助動詞「なり」の連用形。
- は:係助詞。
- あら:ラ行変格活用「あり」の未然形。
- で:接続助詞。打消の意。~ではなくて。
海月のななり」と聞こゆれば、
- 海月:名詞。くらげ。
- の:格助詞。「骨」を補い、「海月の骨」の意。
- な:断定の助動詞「なり」の連体形「なる」が撥音便化した「なん」の「ん」が表記されていない形。
- なり:伝聞・推定の助動詞「なり」の終止形。ここでは推定。~であるらしい。
- と:格助詞。
- 聞こゆれ:ヤ行下二段活用「聞こゆ」の已然形。謙譲語。申し上げる。清少納言から中納言隆家への敬意。
- ば:接続助詞。已然形に接続し、~すると。
「これは隆家が言にしてむ」
- これ:代名詞。清少納言の「海月のななり」という言葉を指す。
- は:係助詞。
- 隆家:名詞。
- が:格助詞。連体修飾。「隆家の」の意。
- 言:名詞。言葉。
- に:格助詞。
- し:サ行変格活用「す」の連用形。
- て:完了の助動詞「つ」の未然形。ここでは強意。
- む:意志の助動詞「む」の終止形。「てむ」で強い意志を表し、「~してしまおう」の意。
とて、笑ひたまふ。
- とて:格助詞「と」+接続助詞「て」。~と言って。
- 笑ひ:ハ行四段活用「笑ふ」の連用形。
- たまふ:ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の終止形。尊敬語。中納言隆家に対する敬意。
かやうのことこそは
かやうのことこそは、
- かやう:ナリ活用の形容動詞「かやうなり」の語幹。このような。
- の:格助詞。
- こと:名詞。
- こそ:係助詞。強意。結びは「べけれ」の已然形。
- は:係助詞。
かたはらいたきことのうちに入れつべけれど、
- かたはらいたき:ク活用の形容詞「かたはらいたし」の連体形。きまりが悪い。気恥ずかしい。
- こと:名詞。
- の:格助詞。
- うち:名詞。中。仲間。
- に:格助詞。
- 入れ:ラ行下二段活用「入る」の連用形。中に加える。
- つ:完了の助動詞「つ」の終止形。ここでは強意。
- べけれ:当然の助動詞「べし」の已然形。~に違いない。~べきだ。
- ど:接続助詞。逆接。~けれども。
「一つな落としそ」
- 一つ:名詞。一つ。
- な:副詞。終助詞「そ」と呼応して禁止を表す。
- 落とし:サ行四段活用「落とす」の連用形。ここでは書き落とす、省く。
- そ:終助詞。「な~そ」で「~するな」の禁止を表す。
と言へば、いかがはせむ。
- と:格助詞。
- 言へ:ハ行四段活用「言ふ」の已然形。
- ば:接続助詞。原因・理由。~ので。
- いかが:副詞。どう。どのように。
- は:係助詞。強意。
- せ:サ行変格活用「す」の未然形。
- む:意志の助動詞「む」の連体形。「いかがはせむ」で反語となり、「どうしようか、いや、どうしようもない」の意。
「中納言参りたまひて」の敬語法まとめ
| 敬語表現 | 敬語の種類 | 敬意の方向 |
|---|---|---|
| 参り | 謙譲語 | 清少納言 → 中宮定子 |
| 参りたまひ | 尊敬の補助動詞 | 清少納言 → 中納言隆家 |
| たてまつらせ | 謙譲語 | 清少納言 → 中宮定子 |
| たてまつらせたまふ | 尊敬の補助動詞 | 清少納言 → 中納言隆家 |
| 得てはべれ | 丁寧語 | 中納言隆家 → 中宮定子 |
| 参らせむ | 謙譲語 | 中納言隆家 → 中宮定子 |
| 求めはべる | 丁寧語 | 中納言隆家 → 中宮定子 |
| 申したまふ | 謙譲語 | 清少納言 → 中宮定子 |
| 申したまふ | 尊敬の補助動詞 | 清少納言 → 中納言隆家 |
| 問ひ聞こえ | 謙譲の補助動詞 | 清少納言 → 中納言隆家 |
| 聞こえさせたまふ | 尊敬の助動詞 | 清少納言 → 中宮定子 |
| 聞こえさせたまふ | 尊敬の補助動詞 | 清少納言 → 中宮定子 |
| いみじうはべり | 丁寧語 | 中納言隆家 → 中宮定子 |
| 申す | 謙譲語(丁寧な意味) | 中納言隆家 → 中宮定子 |
| のたまへ | 尊敬語 | 清少納言 → 中納言隆家 |
| 聞こゆれば | 謙譲語 | 清少納言 → 中納言隆家 |
| 笑ひたまふ | 尊敬の補助動詞 | 清少納言 → 中納言隆家 |
「中納言参りたまひて」の助動詞一覧
| 本文 | 助動詞 | 活用形 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 張らせて | す | 連用形 | 使役 |
| 参らせむ | む | 終止形 | 意志 |
| え張るまじければ | まじ | 已然形 | 不可能 |
| 求めはべるなり | なり | 終止形 | 断定 |
| 聞こえさせたまへば | さす | 連用形 | 尊敬 |
| まだ見ぬ | ず | 連体形 | 打消 |
| 骨のさまなり | なり | 終止形 | 断定 |
| 見えざりつ | ず | 連用形 | 打消 |
| 見えざりつ | つ | 終止形 | 完了 |
| 扇のにはあらで | なり | 連用形 | 断定 |
| 海月のななり | なり | 連体形 | 断定 |
| 海月のななり | なり | 終止形 | 推定 |
| 言にしてむ | つ | 未然形 | 強意 |
| 言にしてむ | む | 終止形 | 意志 |
| 入れつべけれど | つ | 終止形 | 強意 |
| 入れつべけれど | べし | 已然形 | 当然 |
| いかがはせむ | む | 連体形 | 意志 |
「中納言参りたまひて」の現代語訳
『枕草子』「中納言参りたまひて」の現代語訳については、こちらの記事をご覧ください。
あわせて読みたい


枕草子「中納言参りたまひて」の現代語訳・原文・あらすじをわかりやすく解説
清少納言『枕草子』第102段「中納言参りたまひて」は、中納言こと藤原隆家が、姉の中宮定子のもとを訪れ、「素晴らしい扇の骨を手に入れました!」と得意げに話すところ…

