このページでは、『平家物語』の「那須与一」について、原文の品詞分解と係り結び、敬語表現をまとめています。本文を短い区切りに分け、すべての語の品詞・活用・意味を確認できるようにしました。現代語訳とあわせて確認したい方は、平家物語「那須与一」現代語訳をご覧ください。
目次
「那須与一」品詞分解(1)さるほどに、阿波、讃岐に
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さるほどに、阿波、讃岐に
- さるほどに:接続詞。そうこうしているうちに。
- 阿波:名詞。
- 讃岐:名詞。
- に:格助詞。場所。
平家を背いて、源氏を待ちける者ども、
- 平家:名詞。
- を:格助詞。
- 背い:カ行四段活用「背く」の連用形のイ音便。
- て:接続助詞。
- 源氏:名詞。
- を:格助詞。
- 待ち:タ行四段活用「待つ」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- 者:名詞。
- ども:接尾語。複数を表す。
あそこの嶺、ここの洞より、
- あそこ:代名詞。
- の:格助詞。
- 嶺:名詞。
- ここ:代名詞。
- の:格助詞。
- 洞:名詞。谷間。
- より:格助詞。起点。~から。
十四、五騎、二十騎、うちつれうちつれ参りければ、
- 十四:名詞。
- 五:名詞。
- 騎:接尾語。馬に乗った武者を数える語。
- 二十:名詞。
- 騎:接尾語。
- うちつれうちつれ:ラ行下二段活用「うちつる」の連用形を重ねたもの。連れ立っては次々と。
- 参り:ラ行四段活用「参る」の連用形。謙譲語。参上する。語り手から判官への敬意。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ば:接続助詞。確定条件。~ので。
判官ほどなく三百余騎にぞなりにける。
- 判官:名詞。源義経。
- ほどなく:ク活用の形容詞「ほどなし」の連用形。まもなく。
- 三百余騎:名詞。
- に:格助詞。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「ける」。
- なり:ラ行四段活用「なる」の連用形。
- に:完了の助動詞「ぬ」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
「今日は日暮れぬ、
- 今日:名詞。
- は:係助詞。
- 日:名詞。
- 暮れ:ラ行下二段活用「暮る」の連用形。
- ぬ:完了の助動詞「ぬ」の終止形。
勝負を決すべからず」
- 勝負:名詞。
- を:格助詞。
- 決す:サ行変格活用「決す」の終止形。
- べから:可能の助動詞「べし」の未然形。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。「決することはできない」の意。
とて、引き退くところに、
- とて:格助詞。引用。~と言って。
- 引き退く:カ行四段活用「引き退く」の連体形。
- ところ:名詞。
- に:格助詞。
沖の方より尋常に飾りたる
- 沖:名詞。
- の:格助詞。
- 方:名詞。
- より:格助詞。起点。
- 尋常に:ナリ活用の形容動詞「尋常なり」の連用形。見苦しくなく美しく。
- 飾り:ラ行四段活用「飾る」の連用形。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
小船一艘、汀へ向ひて漕ぎよせけり。
- 小船:名詞。
- 一艘:名詞。
- 汀:名詞。波打ち際。
- へ:格助詞。方向。
- 向ひ:ハ行四段活用「向かふ」の連用形。
- て:接続助詞。
- 漕ぎよせ:サ行下二段活用「漕ぎよす」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
磯へ七、八段ばかりになりしかば、
- 磯:名詞。
- へ:格助詞。
- 七:名詞。
- 八:名詞。
- 段:接尾語。距離の単位。
- ばかり:副助詞。程度。~ほど。
- に:格助詞。
- なり:ラ行四段活用「なる」の連用形。
- しか:過去の助動詞「き」の已然形。
- ば:接続助詞。確定条件。~と。
船を横様になす。
- 船:名詞。
- を:格助詞。
- 横様に:ナリ活用の形容動詞「横様なり」の連用形。横向きに。
- なす:サ行四段活用「なす」の終止形。
あれはいかにと見るほどに、
- あれ:代名詞。
- は:係助詞。
- いかに:副詞。どうしたのか。
- と:格助詞。引用。
- 見る:マ行上一段活用「見る」の連体形。
- ほど:名詞。
- に:格助詞。
船の中より、年の齢十八、九ばかりなる
- 船:名詞。
- の:格助詞。
- 中:名詞。
- より:格助詞。起点。
- 年:名詞。
- の:格助詞。
- 齢:名詞。
- 十八:名詞。
- 九:名詞。
- ばかり:副助詞。程度。
- なる:断定の助動詞「なり」の連体形。
女房の、まことに優に美しきが、
- 女房:名詞。宮中や貴人の家に仕える女性。
- の:格助詞。同格。~で。
- まことに:副詞。本当に。
- 優に:ナリ活用の形容動詞「優なり」の連用形。上品で。
- 美しき:シク活用の形容詞「美し」の連体形。下に「人」などを補って読む。
- が:格助詞。主格。
柳の五衣に紅の袴着て、
- 柳:名詞。
- の:格助詞。
- 五衣:名詞。
- に:格助詞。
- 紅:名詞。
- の:格助詞。
- 袴:名詞。
- 着:カ行上一段活用「着る」の連用形。
- て:接続助詞。
皆紅の扇の日出したるを、
- 皆紅:名詞。
- の:格助詞。
- 扇:名詞。
- の:格助詞。同格。~で。
- 日:名詞。
- 出し:サ行四段活用「出だす」の連用形。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- を:格助詞。
船のせがひに挟み立て、
- 船:名詞。
- の:格助詞。
- せがひ:名詞。船の両側に張り出した板。
- に:格助詞。
- 挟み立て:タ行下二段活用「挟み立つ」の連用形。
陸へ向ってぞ招いたる。
- 陸:名詞。
- へ:格助詞。
- 向っ:ハ行四段活用「向かふ」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「たる」。
- 招い:カ行四段活用「招く」の連用形のイ音便。
- たる:完了の助動詞「たり」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
判官、後藤兵衛実基を召して、
- 判官:名詞。
- 後藤兵衛実基:名詞。
- を:格助詞。
- 召し:サ行四段活用「召す」の連用形。尊敬語。お呼び寄せになる。語り手から判官への敬意。
- て:接続助詞。
「あれはいかに」とのたまへば、
- あれ:代名詞。
- は:係助詞。
- いかに:副詞。どうしたことか。
- と:格助詞。引用。
- のたまへ:ハ行四段活用「のたまふ」の已然形。尊敬語。おっしゃる。語り手から判官への敬意。
- ば:接続助詞。確定条件。~と。
「射よとにこそ候めれ。
- 射よ:ヤ行上一段活用「射る」の命令形。
- と:格助詞。引用。
- に:断定の助動詞「なり」の連用形。
- こそ:係助詞。強意。結びは「めれ」。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の終止形。丁寧の補助動詞。~ございます。実基から判官への敬意。
- めれ:推定の助動詞「めり」の已然形。係助詞「こそ」の結び。
ただし大将軍の矢面に進んで、
- ただし:接続詞。
- 大将軍:名詞。
- の:格助詞。主格。
- 矢面:名詞。
- に:格助詞。
- 進ん:マ行四段活用「進む」の連用形の撥音便。
- で:接続助詞「て」が撥音便の後で濁ったもの。
傾城を御覧ぜば、
- 傾城:名詞。美女。
- を:格助詞。
- 御覧ぜ:サ行変格活用「御覧ず」の未然形。尊敬語。ご覧になる。実基から判官への敬意。
- ば:接続助詞。仮定条件。~ならば。
手だれにねらうて射落とせとの
- 手だれ:名詞。腕利き。
- に:格助詞。
- ねらう:ハ行四段活用「ねらふ」の連用形のウ音便。
- て:接続助詞。
- 射落とせ:サ行四段活用「射落とす」の命令形。
- と:格助詞。引用。
- の:格助詞。
計ごとと覚え候。
- 計ごと:名詞。計略。
- と:格助詞。
- 覚え:ヤ行下二段活用「覚ゆ」の連用形。思われる。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の終止形。丁寧の補助動詞。~ます。実基から判官への敬意。
さも候へ、扇をば
- さ:副詞。そのように。
- も:係助詞。
- 候へ:ハ行四段活用「候ふ」の命令形。丁寧語。「さも候へ」で「それはそれとして」の意。実基から判官への敬意。
- 扇:名詞。
- を:格助詞。
- ば:係助詞「は」が濁ったもの。
射させらるべうや候らん」と申す。
- 射:ヤ行上一段活用「射る」の未然形。
- させ:使役の助動詞「さす」の未然形。
- らる:尊敬の助動詞「らる」の終止形。実基から判官への敬意。
- べう:適当の助動詞「べし」の連用形「べく」のウ音便。
- や:係助詞。疑問。結びは「らん」。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の終止形。丁寧の補助動詞。実基から判官への敬意。
- らん:現在推量の助動詞「らむ」の連体形。係助詞「や」の結び。
- と:格助詞。引用。
- 申す:サ行四段活用「申す」の終止形。謙譲語。申し上げる。語り手から判官への敬意。
「那須与一」品詞分解(2)射つべき仁は御方に
「射つべき仁は御方に
- 射:ヤ行上一段活用「射る」の連用形。
- つ:強意の助動詞「つ」の終止形。
- べき:可能の助動詞「べし」の連体形。「きっと射ることができる」の意。
- 仁:名詞。人。
- は:係助詞。
- 御方:名詞。味方。
- に:格助詞。
誰かある」とのたまへば、
- 誰:代名詞。
- か:係助詞。疑問。結びは「ある」。
- ある:ラ行変格活用「あり」の連体形。係助詞「か」の結び。
- と:格助詞。引用。
- のたまへ:ハ行四段活用「のたまふ」の已然形。尊敬語。おっしゃる。語り手から判官への敬意。
- ば:接続助詞。確定条件。~と。
「上手どもいくらも候中に、
- 上手:名詞。
- ども:接尾語。複数を表す。
- いくら:副詞。たくさん。
- も:係助詞。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の連体形。丁寧語。おります。実基から判官への敬意。
- 中:名詞。
- に:格助詞。
下野の国の住人、
- 下野:名詞。
- の:格助詞。
- 国:名詞。
- の:格助詞。
- 住人:名詞。
那須太郎資高が子に与一宗高こそ、
- 那須太郎資高:名詞。
- が:格助詞。連体修飾。
- 子:名詞。
- に:断定の助動詞「なり」の連用形。「子である」の意。
- 与一宗高:名詞。
- こそ:係助詞。強意。結びは「候へ」。
小兵で候へども、手ききて候へ」
- 小兵:名詞。体が小さく、弓を引く力の弱い者。
- で:「にて」が変化した語。~で。
- 候へ:ハ行四段活用「候ふ」の已然形。丁寧の補助動詞。実基から判官への敬意。
- ども:接続助詞。逆接確定条件。~けれども。
- 手:名詞。腕前。
- きき:カ行四段活用「きく」の連用形。すぐれている。
- て:接続助詞。
- 候へ:ハ行四段活用「候ふ」の已然形。丁寧の補助動詞。係助詞「こそ」の結び。実基から判官への敬意。
「証拠はいかに」とのたまへば、
- 証拠:名詞。
- は:係助詞。
- いかに:副詞。どうか。
- と:格助詞。引用。
- のたまへ:ハ行四段活用「のたまふ」の已然形。尊敬語。おっしゃる。語り手から判官への敬意。
- ば:接続助詞。確定条件。~と。
「かけ鳥などを争うて、
- かけ鳥:名詞。飛んでいる鳥を射ること。
- など:副助詞。例示。
- を:格助詞。
- 争う:ハ行四段活用「争ふ」の連用形のウ音便。
- て:接続助詞。
三に二は必ず射落とす者で候」
- 三:名詞。
- に:格助詞。
- 二:名詞。
- は:係助詞。
- 必ず:副詞。
- 射落とす:サ行四段活用「射落とす」の連体形。
- 者:名詞。
- で:「にて」が変化した語。~で。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の終止形。丁寧の補助動詞。~ございます。実基から判官への敬意。
「さらば召せ」とて召されたり。
- さらば:接続詞。それならば。
- 召せ:サ行四段活用「召す」の命令形。呼び寄せよ。
- とて:格助詞。引用。~と言って。
- 召さ:サ行四段活用「召す」の未然形。尊敬語。お呼びになる。語り手から判官への敬意。
- れ:尊敬の助動詞「る」の連用形。語り手から判官への敬意。
- たり:完了の助動詞「たり」の終止形。
与一、そのころは二十ばかりの男士なり。
- 与一:名詞。
- そ:代名詞。
- の:格助詞。
- ころ:名詞。
- は:係助詞。
- 二十:名詞。
- ばかり:副助詞。程度。
- の:格助詞。
- 男士:名詞。若者。
- なり:断定の助動詞「なり」の終止形。
かちに赤地の錦をもって、
- かち:名詞。濃い紺色。
- に:格助詞。
- 赤地:名詞。
- の:格助詞。
- 錦:名詞。
- を:格助詞。
- もっ:タ行四段活用「持つ」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
おほくび、はた袖色へたる直垂に、
- おほくび:名詞。衣の襟の部分。
- はた袖:名詞。袖の先に継ぎ足した部分。
- 色へ:ハ行下二段活用「色ふ」の連用形。彩る。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- 直垂:名詞。
- に:格助詞。
萌黄威の鎧着て、足白の太刀を帯き、
- 萌黄威:名詞。
- の:格助詞。
- 鎧:名詞。
- 着:カ行上一段活用「着る」の連用形。
- て:接続助詞。
- 足白:名詞。
- の:格助詞。
- 太刀:名詞。
- を:格助詞。
- 帯き:カ行四段活用「帯く」の連用形。身につける。
切斑の矢の、その日の軍に射て
- 切斑:名詞。
- の:格助詞。
- 矢:名詞。
- の:格助詞。同格。~で。
- そ:代名詞。
- の:格助詞。
- 日:名詞。
- の:格助詞。
- 軍:名詞。
- に:格助詞。
- 射:ヤ行上一段活用「射る」の連用形。
- て:接続助詞。
少々残ったりけるを、首高に負ひなし、
- 少々:副詞。少し。
- 残っ:ラ行四段活用「残る」の連用形の促音便。
- たり:存続の助動詞「たり」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- を:格助詞。
- 首高に:ナリ活用の形容動詞「首高なり」の連用形。矢が頭より高く突き出るさま。
- 負ひなし:サ行四段活用「負ひなす」の連用形。背負う。
薄切斑に鷹の羽作り交ぜたる
- 薄切斑:名詞。
- に:格助詞。
- 鷹:名詞。
- の:格助詞。
- 羽:名詞。
- 作り交ぜ:ザ行下二段活用「作り交ず」の連用形。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
ぬた目の鏑をぞ差し添へたる。
- ぬた目:名詞。
- の:格助詞。
- 鏑:名詞。かぶら矢。
- を:格助詞。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「たる」。
- 差し添へ:ハ行下二段活用「差し添ふ」の連用形。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
滋籐の弓脇に挟み、甲をば脱ぎ、
- 滋籐:名詞。
- の:格助詞。
- 弓:名詞。
- 脇:名詞。
- に:格助詞。
- 挟み:マ行四段活用「挟む」の連用形。
- 甲:名詞。かぶと。
- を:格助詞。
- ば:係助詞「は」が濁ったもの。
- 脱ぎ:ガ行四段活用「脱ぐ」の連用形。
高紐に懸け、判官の前に畏まる。
- 高紐:名詞。
- に:格助詞。
- 懸け:カ行下二段活用「懸く」の連用形。
- 判官:名詞。
- の:格助詞。
- 前:名詞。
- に:格助詞。
- 畏まる:ラ行四段活用「畏まる」の終止形。謹んで控える。
「那須与一」品詞分解(3)いかに宗高、あの扇の真中射て
「いかに宗高、あの扇の真中射て、
- いかに:感動詞。呼びかけ。どうだ。
- 宗高:名詞。
- あ:代名詞。
- の:格助詞。
- 扇:名詞。
- の:格助詞。
- 真中:名詞。
- 射:ヤ行上一段活用「射る」の連用形。
- て:接続助詞。
平家に見物せさせよかし」
- 平家:名詞。
- に:格助詞。
- 見物せ:サ行変格活用「見物す」の未然形。
- させよ:使役の助動詞「さす」の命令形。
- かし:終助詞。念押し。~よ。
与一畏まって申しけるは、
- 与一:名詞。
- 畏まっ:ラ行四段活用「畏まる」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- 申し:サ行四段活用「申す」の連用形。謙譲語。申し上げる。語り手から判官への敬意。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- は:係助詞。
「射おほせ候はんこと不定に候。
- 射おほせ:サ行下二段活用「射おほす」の連用形。うまく射当てる。
- 候は:ハ行四段活用「候ふ」の未然形。丁寧の補助動詞。与一から判官への敬意。
- ん:推量の助動詞「む」の連体形。婉曲。
- こと:名詞。
- 不定に:ナリ活用の形容動詞「不定なり」の連用形。確かでない。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の終止形。丁寧の補助動詞。与一から判官への敬意。
射損じ候なば、
- 射損じ:サ行変格活用「射損ず」の連用形。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の連用形。丁寧の補助動詞。与一から判官への敬意。
- な:完了の助動詞「ぬ」の未然形。
- ば:接続助詞。仮定条件。~ならば。
ながき御方の御瑕にて候べし。
- ながき:ク活用の形容詞「ながし」の連体形。末長い。
- 御方:名詞。味方。
- の:格助詞。
- 御瑕:名詞。不名誉。
- に:断定の助動詞「なり」の連用形。
- て:接続助詞。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の終止形。丁寧の補助動詞。与一から判官への敬意。
- べし:推量の助動詞「べし」の終止形。
一定仕らんずる仁に
- 一定:副詞。確かに。
- 仕ら:ラ行四段活用「仕る」の未然形。謙譲語。いたす。与一から判官への敬意。
- んずる:推量の助動詞「んず」の連体形。
- 仁:名詞。人。
- に:格助詞。
おほせ付けらるべうや候らん」と申す。
- おほせ付け:カ行下二段活用「おほせ付く」の未然形。命じる。
- らる:尊敬の助動詞「らる」の終止形。与一から判官への敬意。
- べう:適当の助動詞「べし」の連用形「べく」のウ音便。
- や:係助詞。疑問。結びは「らん」。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の終止形。丁寧の補助動詞。与一から判官への敬意。
- らん:現在推量の助動詞「らむ」の連体形。係助詞「や」の結び。
- と:格助詞。引用。
- 申す:サ行四段活用「申す」の終止形。謙譲語。申し上げる。語り手から判官への敬意。
判官大いに怒って、
- 判官:名詞。
- 大いに:ナリ活用の形容動詞「大いなり」の連用形。
- 怒っ:ラ行四段活用「怒る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
「鎌倉を立って、西国へ赴かん殿原は、
- 鎌倉:名詞。
- を:格助詞。
- 立っ:タ行四段活用「立つ」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- 西国:名詞。
- へ:格助詞。
- 赴か:カ行四段活用「赴く」の未然形。
- ん:推量の助動詞「む」の連体形。婉曲。
- 殿原:名詞。武士たちを敬って呼ぶ語。
- は:係助詞。
義経が命を背くべからず。
- 義経:名詞。
- が:格助詞。連体修飾。
- 命:名詞。命令。
- を:格助詞。
- 背く:カ行四段活用「背く」の終止形。
- べから:当然の助動詞「べし」の未然形。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。「背いてはならない」の意。
少しも子細を存ぜん人は、
- 少し:副詞。
- も:係助詞。
- 子細:名詞。異議。
- を:格助詞。
- 存ぜ:サ行変格活用「存ず」の未然形。思う。
- ん:推量の助動詞「む」の連体形。婉曲。
- 人:名詞。
- は:係助詞。
とうとうこれより帰るべし」とぞのたまひける。
- とうとう:副詞。早く。さっさと。
- これ:代名詞。
- より:格助詞。起点。
- 帰る:ラ行四段活用「帰る」の終止形。
- べし:命令の助動詞「べし」の終止形。
- と:格助詞。引用。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「ける」。
- のたまひ:ハ行四段活用「のたまふ」の連用形。尊敬語。おっしゃる。語り手から判官への敬意。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
与一、重ねて辞せば
- 与一:名詞。
- 重ね:ナ行下二段活用「重ぬ」の連用形。
- て:接続助詞。
- 辞せ:サ行変格活用「辞す」の未然形。
- ば:接続助詞。仮定条件。~ならば。
悪かりなんとや思ひけん、
- 悪かり:シク活用の形容詞「悪し」の連用形。
- な:強意の助動詞「ぬ」の未然形。
- ん:推量の助動詞「む」の終止形。
- と:格助詞。引用。
- や:係助詞。疑問。結びは「けん」。
- 思ひ:ハ行四段活用「思ふ」の連用形。
- けん:過去推量の助動詞「けむ」の連体形。係助詞「や」の結び。
「はづれんは知り候はず、
- はづれ:ラ行下二段活用「はづる」の未然形。
- ん:推量の助動詞「む」の連体形。婉曲。
- は:係助詞。
- 知り:ラ行四段活用「知る」の連用形。
- 候は:ハ行四段活用「候ふ」の未然形。丁寧の補助動詞。与一から判官への敬意。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。
御諚で候へば
- 御諚:名詞。ご命令。
- で:「にて」が変化した語。~で。
- 候へ:ハ行四段活用「候ふ」の已然形。丁寧の補助動詞。与一から判官への敬意。
- ば:接続助詞。確定条件。~ので。
仕ってこそ見候はめ」
- 仕っ:ラ行四段活用「仕る」の連用形の促音便。謙譲語。いたす。与一から判官への敬意。
- て:接続助詞。
- こそ:係助詞。強意。結びは「め」。
- 見:マ行上一段活用「見る」の連用形。
- 候は:ハ行四段活用「候ふ」の未然形。丁寧の補助動詞。与一から判官への敬意。
- め:意志の助動詞「む」の已然形。係助詞「こそ」の結び。
とて、御前を罷り立ち、
- とて:格助詞。引用。~と言って。
- 御前:名詞。
- を:格助詞。
- 罷り立ち:タ行四段活用「罷り立つ」の連用形。謙譲語。退出する。語り手から判官への敬意。
黒き馬の太う逞しいに、
- 黒き:ク活用の形容詞「黒し」の連体形。
- 馬:名詞。
- の:格助詞。同格。~で。
- 太う:ク活用の形容詞「太し」の連用形「太く」のウ音便。
- 逞しい:シク活用の形容詞「逞し」の連体形「逞しき」のイ音便。下に「馬」を補って読む。
- に:格助詞。
小房の鞦かけ、まろぼや摺りたる
- 小房:名詞。
- の:格助詞。
- 鞦:名詞。
- かけ:カ行下二段活用「かく」の連用形。
- まろぼや:名詞。やどり木を丸く図案化した文様。
- 摺り:ラ行四段活用「摺る」の連用形。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
鞍置きてぞ乗ったりける。
- 鞍:名詞。
- 置き:カ行四段活用「置く」の連用形。
- て:接続助詞。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「ける」。
- 乗っ:ラ行四段活用「乗る」の連用形の促音便。
- たり:完了の助動詞「たり」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
弓取り直し、手綱かいくり、
- 弓:名詞。
- 取り直し:サ行四段活用「取り直す」の連用形。
- 手綱:名詞。
- かいくり:ラ行四段活用「かいくる」の連用形。たぐり寄せる。
汀へ向いて歩ませければ、
- 汀:名詞。
- へ:格助詞。
- 向い:ハ行四段活用「向かふ」の連用形「向かひ」が変化したもの。
- て:接続助詞。
- 歩ま:マ行四段活用「歩む」の未然形。
- せ:使役の助動詞「す」の連用形。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ば:接続助詞。確定条件。~と。
御方の兵ども、後を遥かに見送りて、
- 御方:名詞。味方。
- の:格助詞。
- 兵:名詞。
- ども:接尾語。複数を表す。
- 後:名詞。
- を:格助詞。
- 遥かに:ナリ活用の形容動詞「遥かなり」の連用形。
- 見送り:ラ行四段活用「見送る」の連用形。
- て:接続助詞。
「この若者一定仕り候ぬと覚え候」
- こ:代名詞。
- の:格助詞。
- 若者:名詞。
- 一定:副詞。きっと。
- 仕り:ラ行四段活用「仕る」の連用形。謙譲語。いたす。兵たちから判官への敬意。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の連用形。丁寧の補助動詞。兵たちから判官への敬意。
- ぬ:完了の助動詞「ぬ」の終止形。確述。きっと~する。
- と:格助詞。引用。
- 覚え:ヤ行下二段活用「覚ゆ」の連用形。思われる。
- 候:ハ行四段活用「候ふ」の終止形。丁寧の補助動詞。兵たちから判官への敬意。
と申しければ、
- と:格助詞。引用。
- 申し:サ行四段活用「申す」の連用形。謙譲語。申し上げる。語り手から判官への敬意。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ば:接続助詞。確定条件。~ので。
判官も頼もしげにぞ見たまひける。
- 判官:名詞。
- も:係助詞。
- 頼もしげに:ナリ活用の形容動詞「頼もしげなり」の連用形。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「ける」。
- 見:マ行上一段活用「見る」の連用形。
- たまひ:ハ行四段活用「たまふ」の連用形。尊敬の補助動詞。語り手から判官への敬意。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
「那須与一」品詞分解(4)矢比少し遠かりければ
矢比少し遠かりければ、
- 矢比:名詞。矢を射るのにちょうどよい距離。
- 少し:副詞。
- 遠かり:ク活用の形容詞「遠し」の連用形。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ば:接続助詞。確定条件。~ので。
海へ一段ばかり打ち入れたれども、
- 海:名詞。
- へ:格助詞。
- 一:名詞。
- 段:接尾語。距離の単位。
- ばかり:副助詞。程度。
- 打ち入れ:ラ行下二段活用「打ち入る」の連用形。馬を乗り入れる。
- たれ:完了の助動詞「たり」の已然形。
- ども:接続助詞。逆接確定条件。~けれども。
なほ扇のあはひ、七段ばかりは
- なほ:副詞。それでもやはり。
- 扇:名詞。
- の:格助詞。
- あはひ:名詞。間。距離。
- 七:名詞。
- 段:接尾語。
- ばかり:副助詞。程度。
- は:係助詞。
あるらんとこそ見えたりけれ。
- ある:ラ行変格活用「あり」の連体形。
- らん:現在推量の助動詞「らむ」の終止形。
- と:格助詞。引用。
- こそ:係助詞。強意。結びは「けれ」。
- 見え:ヤ行下二段活用「見ゆ」の連用形。
- たり:存続の助動詞「たり」の連用形。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。係助詞「こそ」の結び。
ころは二月十八日の酉の刻ばかりのことなるに、
- ころ:名詞。
- は:係助詞。
- 二月十八日:名詞。
- の:格助詞。
- 酉の刻:名詞。
- ばかり:副助詞。程度。
- の:格助詞。
- こと:名詞。
- なる:断定の助動詞「なり」の連体形。
- に:接続助詞。~が。
折節北風烈しくて、磯打つ浪も高かりけり。
- 折節:副詞。ちょうどそのとき。
- 北風:名詞。
- 烈しく:シク活用の形容詞「烈し」の連用形。
- て:接続助詞。
- 磯:名詞。
- 打つ:タ行四段活用「打つ」の連体形。
- 浪:名詞。
- も:係助詞。
- 高かり:ク活用の形容詞「高し」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
船はゆりあげゆりすゑただよへば、
- 船:名詞。
- は:係助詞。
- ゆりあげ:ガ行下二段活用「ゆりあぐ」の連用形。
- ゆりすゑ:ワ行下二段活用「ゆりすう」の連用形。
- ただよへ:ハ行四段活用「ただよふ」の已然形。
- ば:接続助詞。確定条件。~ので。
扇も串に定まらずひらめいたり。
- 扇:名詞。
- も:係助詞。
- 串:名詞。扇を挟んで立てた竿。
- に:格助詞。
- 定まら:ラ行四段活用「定まる」の未然形。
- ず:打消の助動詞「ず」の連用形。
- ひらめい:カ行四段活用「ひらめく」の連用形のイ音便。
- たり:存続の助動詞「たり」の終止形。
沖には平家、船を一面に並べて見物す。
- 沖:名詞。
- に:格助詞。
- は:係助詞。
- 平家:名詞。
- 船:名詞。
- を:格助詞。
- 一面:名詞。
- に:格助詞。
- 並べ:バ行下二段活用「並ぶ」の連用形。
- て:接続助詞。
- 見物す:サ行変格活用「見物す」の終止形。
陸には源氏、轡を並べてこれを見る。
- 陸:名詞。
- に:格助詞。
- は:係助詞。
- 源氏:名詞。
- 轡:名詞。
- を:格助詞。
- 並べ:バ行下二段活用「並ぶ」の連用形。
- て:接続助詞。
- これ:代名詞。
- を:格助詞。
- 見る:マ行上一段活用「見る」の終止形。
いづれもいづれも晴れならずといふことぞなき。
- いづれ:代名詞。
- も:係助詞。
- いづれ:代名詞。
- も:係助詞。
- 晴れ:名詞。晴れがましいこと。
- なら:断定の助動詞「なり」の未然形。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。
- と:格助詞。
- いふ:ハ行四段活用「いふ」の連体形。
- こと:名詞。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「なき」。
- なき:ク活用の形容詞「なし」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
与一、目を塞いで、
- 与一:名詞。
- 目:名詞。
- を:格助詞。
- 塞い:ガ行四段活用「塞ぐ」の連用形のイ音便。
- で:接続助詞「て」がイ音便の後で濁ったもの。
「南無八幡大菩薩、別してはわが国の神明、
- 南無:名詞。仏や神に帰依することを表す語。
- 八幡大菩薩:名詞。
- 別して:副詞。とりわけ。
- は:係助詞。
- わ:代名詞。
- が:格助詞。連体修飾。
- 国:名詞。
- の:格助詞。
- 神明:名詞。神。
日光権現、宇都宮、那須の湯泉大明神、
- 日光権現:名詞。
- 宇都宮:名詞。
- 那須:名詞。
- の:格助詞。
- 湯泉大明神:名詞。
願はくは、あの扇の真中射させてたばせたまへ。
- 願はく:ハ行四段活用「願ふ」の未然形に接尾語「く」が付いたもの。願うことには。
- は:係助詞。
- あ:代名詞。
- の:格助詞。
- 扇:名詞。
- の:格助詞。
- 真中:名詞。
- 射:ヤ行上一段活用「射る」の未然形。
- させ:使役の助動詞「さす」の連用形。
- て:接続助詞。
- たば:バ行四段活用「たぶ」の未然形。尊敬語。お与えになる。与一から神仏への敬意。
- せ:尊敬の助動詞「す」の連用形。与一から神仏への敬意。
- たまへ:ハ行四段活用「たまふ」の命令形。尊敬の補助動詞。与一から神仏への敬意。
これを射損ずるものならば、
- これ:代名詞。
- を:格助詞。
- 射損ずる:サ行変格活用「射損ず」の連体形。
- もの:名詞。
- なら:断定の助動詞「なり」の未然形。
- ば:接続助詞。仮定条件。~ならば。
弓切り折り自害して、人に二度面を向ふべからず。
- 弓:名詞。
- 切り折り:ラ行四段活用「切り折る」の連用形。
- 自害し:サ行変格活用「自害す」の連用形。
- て:接続助詞。
- 人:名詞。
- に:格助詞。
- 二度:名詞。
- 面:名詞。顔。
- を:格助詞。
- 向ふ:ハ行四段活用「向かふ」の終止形。
- べから:意志の助動詞「べし」の未然形。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。「~するつもりはない」の意。
今一度本国へむかへんとおぼしめさば、
- 今:副詞。もう。
- 一度:名詞。
- 本国:名詞。故郷。
- へ:格助詞。
- むかへ:ハ行下二段活用「迎ふ」の未然形。
- ん:意志の助動詞「む」の終止形。
- と:格助詞。引用。
- おぼしめさ:サ行四段活用「おぼしめす」の未然形。尊敬語。お思いになる。与一から神仏への敬意。
- ば:接続助詞。仮定条件。~ならば。
この矢はづさせたまふな」
- こ:代名詞。
- の:格助詞。
- 矢:名詞。
- はづさ:サ行四段活用「はづす」の未然形。
- せ:尊敬の助動詞「す」の連用形。与一から神仏への敬意。
- たまふ:ハ行四段活用「たまふ」の終止形。尊敬の補助動詞。与一から神仏への敬意。
- な:終助詞。禁止。~するな。
と、心の中に祈念して、
- と:格助詞。引用。
- 心:名詞。
- の:格助詞。
- 中:名詞。
- に:格助詞。
- 祈念し:サ行変格活用「祈念す」の連用形。
- て:接続助詞。
目を見開いたれば、
- 目:名詞。
- を:格助詞。
- 見開い:カ行四段活用「見開く」の連用形のイ音便。
- たれ:完了の助動詞「たり」の已然形。
- ば:接続助詞。確定条件。~と。
風も少し吹き弱り、扇も射よげにぞなったりける。
- 風:名詞。
- も:係助詞。
- 少し:副詞。
- 吹き弱り:ラ行四段活用「吹き弱る」の連用形。
- 扇:名詞。
- も:係助詞。
- 射よげに:ナリ活用の形容動詞「射よげなり」の連用形。射やすそうに。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「ける」。
- なっ:ラ行四段活用「なる」の連用形の促音便。
- たり:完了の助動詞「たり」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
「那須与一」品詞分解(5)与一、鏑を取って番ひ
与一、鏑を取って番ひ、
- 与一:名詞。
- 鏑:名詞。かぶら矢。
- を:格助詞。
- 取っ:ラ行四段活用「取る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- 番ひ:ハ行四段活用「番ふ」の連用形。矢を弓の弦にかける。
よっ引いてひやうと放つ。
- よっ引い:カ行四段活用「よっ引く」の連用形のイ音便。弓を十分に引き絞る。
- て:接続助詞。
- ひやうと:副詞。矢を放つ音。
- 放つ:タ行四段活用「放つ」の終止形。
小兵といふぢやう、十二束三伏、
- 小兵:名詞。
- と:格助詞。
- いふ:ハ行四段活用「いふ」の連体形。
- ぢやう:名詞。「定」。小兵にふさわしく。
- 十二束三伏:名詞。矢の長さ。
弓は強し、浦響くほど長鳴りして、
- 弓:名詞。
- は:係助詞。
- 強し:ク活用の形容詞「強し」の終止形。
- 浦:名詞。
- 響く:カ行四段活用「響く」の連体形。
- ほど:名詞。程度。
- 長鳴り:名詞。
- し:サ行変格活用「す」の連用形。
- て:接続助詞。
あやまたず扇の要際一寸ばかり置いて、
- あやまた:タ行四段活用「あやまつ」の未然形。
- ず:打消の助動詞「ず」の連用形。
- 扇:名詞。
- の:格助詞。
- 要際:名詞。扇の要の近く。
- 一寸:名詞。
- ばかり:副助詞。程度。
- 置い:カ行四段活用「置く」の連用形のイ音便。間を置く。
- て:接続助詞。
ひふつとぞ射切ったる。
- ひふつと:副詞。矢が扇を射切る音。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「たる」。
- 射切っ:ラ行四段活用「射切る」の連用形の促音便。
- たる:完了の助動詞「たり」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
鏑は海へ入りければ、
- 鏑:名詞。
- は:係助詞。
- 海:名詞。
- へ:格助詞。
- 入り:ラ行四段活用「入る」の連用形。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ば:接続助詞。確定条件。~と。
扇は空へぞ挙がりける。
- 扇:名詞。
- は:係助詞。
- 空:名詞。
- へ:格助詞。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「ける」。
- 挙がり:ラ行四段活用「挙がる」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
しばらくは虚空にひらめきけるが、
- しばらく:副詞。
- は:係助詞。
- 虚空:名詞。空中。
- に:格助詞。
- ひらめき:カ行四段活用「ひらめく」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- が:接続助詞。逆接。~が。
春風に一もみ二もみもまれて、
- 春風:名詞。
- に:格助詞。
- 一もみ:名詞。
- 二もみ:名詞。
- もま:マ行四段活用「もむ」の未然形。
- れ:受身の助動詞「る」の連用形。
- て:接続助詞。
海へさとぞ散りたりける。
- 海:名詞。
- へ:格助詞。
- さと:副詞。さっと。
- ぞ:係助詞。強意。結びは「ける」。
- 散り:ラ行四段活用「散る」の連用形。
- たり:完了の助動詞「たり」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。係助詞「ぞ」の結び。
夕日の輝いたるに、
- 夕日:名詞。
- の:格助詞。主格。
- 輝い:カ行四段活用「輝く」の連用形のイ音便。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- に:格助詞。
皆紅の扇の日出したるが、
- 皆紅:名詞。
- の:格助詞。
- 扇:名詞。
- の:格助詞。同格。~で。
- 日:名詞。
- 出し:サ行四段活用「出だす」の連用形。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- が:格助詞。主格。
白波の上に漂ひ、浮きぬ沈みぬゆられければ、
- 白波:名詞。
- の:格助詞。
- 上:名詞。
- に:格助詞。
- 漂ひ:ハ行四段活用「漂ふ」の連用形。
- 浮き:カ行四段活用「浮く」の連用形。
- ぬ:完了の助動詞「ぬ」の終止形。並列。~たり~たり。
- 沈み:マ行四段活用「沈む」の連用形。
- ぬ:完了の助動詞「ぬ」の終止形。並列。
- ゆら:ラ行四段活用「ゆる」の未然形。
- れ:受身の助動詞「る」の連用形。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ば:接続助詞。確定条件。~ので。
沖には平家、ふなばたを叩いて感じたり。
- 沖:名詞。
- に:格助詞。
- は:係助詞。
- 平家:名詞。
- ふなばた:名詞。
- を:格助詞。
- 叩い:カ行四段活用「叩く」の連用形のイ音便。
- て:接続助詞。
- 感じ:サ行変格活用「感ず」の連用形。感嘆する。
- たり:完了の助動詞「たり」の終止形。
陸には源氏、箙を叩いてどよめきけり。
- 陸:名詞。
- に:格助詞。
- は:係助詞。
- 源氏:名詞。
- 箙:名詞。矢を入れて背負う武具。
- を:格助詞。
- 叩い:カ行四段活用「叩く」の連用形のイ音便。
- て:接続助詞。
- どよめき:カ行四段活用「どよめく」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
「那須与一」の係り結びまとめ
係助詞「ぞ・なむ・や・か」があると文末は連体形、「こそ」があると文末は已然形になります。「那須与一」に出てくる係り結びは次のとおりです。
| 本文 | 係助詞 | 結び(活用形) |
|---|---|---|
| 判官ほどなく三百余騎にぞなりにける | ぞ | ける(連体形) |
| 陸へ向ってぞ招いたる | ぞ | たる(連体形) |
| 射よとにこそ候めれ | こそ | めれ(已然形) |
| 扇をば射させらるべうや候らん | や | らん(連体形) |
| 射つべき仁は御方に誰かある | か | ある(連体形) |
| 与一宗高こそ、小兵で候へども、手ききて候へ | こそ | 候へ(已然形) |
| ぬた目の鏑をぞ差し添へたる | ぞ | たる(連体形) |
| おほせ付けらるべうや候らん | や | らん(連体形) |
| とうとうこれより帰るべしとぞのたまひける | ぞ | ける(連体形) |
| 悪かりなんとや思ひけん | や | けん(連体形) |
| 仕ってこそ見候はめ | こそ | め(已然形) |
| 鞍置きてぞ乗ったりける | ぞ | ける(連体形) |
| 判官も頼もしげにぞ見たまひける | ぞ | ける(連体形) |
| 七段ばかりはあるらんとこそ見えたりけれ | こそ | けれ(已然形) |
| 晴れならずといふことぞなき | ぞ | なき(連体形) |
| 扇も射よげにぞなったりける | ぞ | ける(連体形) |
| ひふつとぞ射切ったる | ぞ | たる(連体形) |
| 扇は空へぞ挙がりける | ぞ | ける(連体形) |
| 海へさとぞ散りたりける | ぞ | ける(連体形) |
「那須与一」の敬語表現と敬意の方向まとめ
尊敬語
| 敬語 | 方向 | 意味 |
|---|---|---|
| 召して | 語り手 → 判官 | お呼び寄せになって |
| のたまへば/のたまひける | 語り手 → 判官 | おっしゃると/おっしゃった |
| 御覧ぜば | 後藤兵衛実基 → 判官 | ご覧になれば |
| 射させらる | 後藤兵衛実基 → 判官 | 射させなさる |
| 召されたり | 語り手 → 判官 | お呼びになった |
| おほせ付けらる | 那須与一 → 判官 | お命じになる |
| 見たまひける | 語り手 → 判官 | ご覧になった |
| たばせたまへ | 那須与一 → 神仏 | お与えください |
| おぼしめさば | 那須与一 → 神仏 | お思いになるならば |
| はづさせたまふな | 那須与一 → 神仏 | お外しにならないでください |
謙譲語
| 敬語 | 方向 | 意味 |
|---|---|---|
| 参りければ | 語り手 → 判官 | 参上したので |
| 申す/申しける/申しければ | 語り手 → 判官 | 申し上げる |
| 仕らんずる | 那須与一 → 判官 | いたすような |
| 仕ってこそ | 那須与一 → 判官 | いたして |
| 罷り立ち | 語り手 → 判官 | 退出し |
| 仕り候ひぬ | 味方の兵たち → 判官 | いたすでしょう |
丁寧語
| 敬語 | 方向 | 意味 |
|---|---|---|
| 射よとにこそ候めれ | 後藤兵衛実基 → 判官 | 射よということでございましょう |
| 覚え候 | 後藤兵衛実基 → 判官 | 思われます |
| さも候へ | 後藤兵衛実基 → 判官 | それはそれとして |
| 射させらるべうや候らん | 後藤兵衛実基 → 判官 | 射させなさるのがよいのではございませんか |
| いくらも候中に | 後藤兵衛実基 → 判官 | たくさんおります中に |
| 小兵で候へども、手ききて候へ | 後藤兵衛実基 → 判官 | 小柄ではございますが、腕は確かでございます |
| 射落とす者で候 | 後藤兵衛実基 → 判官 | 射落とす者でございます |
| 不定に候 | 那須与一 → 判官 | 確かではございません |
| 射損じ候なば | 那須与一 → 判官 | 射損じましたならば |
| 御瑕にて候べし | 那須与一 → 判官 | 恥となりましょう |
| おほせ付けらるべうや候らん | 那須与一 → 判官 | お命じになるのがよいのではございませんか |
| 知り候はず | 那須与一 → 判官 | わかりません |
| 御諚で候へば | 那須与一 → 判官 | ご命令でございますので |
| 見候はめ | 那須与一 → 判官 | やってみましょう |
| 仕り候ひぬと覚え候 | 味方の兵たち → 判官 | きっとやり遂げると思われます |
「那須与一」の現代語訳
「那須与一」の原文と現代語訳、語釈については、平家物語「那須与一」原文・現代語訳をご覧ください。



