『枕草子』原文全文を読む(1)第1段~第24段|読みやすいふりがな付き

 このページでは、清少納言『枕草子』第1段から第24段までの原文全文を掲載しています。

『枕草子』の伝本には、主に「三巻本」「能因本」「前田本」「堺本」という4つの系統がありますが、当サイトでは「三巻本」を用いました。古文の教科書や参考書にも多く採用されており、一般に広く知られているためです。

 原文のままでも読みやすいよう、漢字には歴史的仮名遣いによるルビ(ふりがな)を付けております。現代語訳とあわせて読みたい方は、『枕草子』現代語訳全文(1)第1段~第24段をご覧ください。

目次

第1段「春はあけぼの」

 春はるは、あけぼの。

 やうやう白しろくなりゆく、山際やまぎは少すこし明あかりて、紫むらさきだちたる雲くもの細ほそくたなびきたる。

 夏なつは、夜よ。

 月つきの頃ころはさらなり、闇やみもなほ、蛍ほたるの多おほく飛とび違ちがひたる。また、ただ一ひとつ二ふたつなど、ほのかにうち光ひかりて行ゆくもをかし。雨あめなど降ふるもをかし。

 秋あきは、夕暮ゆふぐれ。

 夕日ゆふひのさして山やまの端はいと近ちかうなりたるに、烏からすの寝所ねどころへ行ゆくとて、三みつ四よつ、二ふたつ三みつなど、飛とび急いそぐさへあはれなり。まいて雁かりなどの連つらねたるが、いと小ちひさく見みゆるは、いとをかし。日入ひいり果はてて、風かぜの音おと、虫むしの音ねなど、はた言いふべきにあらず。

 冬ふゆは、つとめて。

 雪ゆきの降ふりたるは、言いふべきにもあらず、霜しものいと白しろきも、また、さらでもいと寒さむきに、火ひなど急いそぎ熾おこして、炭すみ持もて渡わたるも、いとつきづきし。昼ひるになりて、温ぬるく緩ゆるびもていけば、火桶ひをけの火ひも白しろき灰はひがちになりて悪わろし。

第2段「頃は正月」

 頃ころは、正月しやうぐわつ、三月さんぐわつ、四月しぐわつ、五月ごぐわつ、七八九月しちはちくぐわつ、十一二月じふいちにぐわつ、すべて折をりにつけつつ、一年ひととせながらをかし。

第3段「正月一日は」

 正月しやうぐわつ一日ついたちは、まいて空そらの気色けしきもうらうらと、珍めづらしう霞かすみこめたるに、世よにありとある人ひとは、みな姿すがた形かたち心こころことにつくろひ、君きみをも我われをも祝いはひなどしたる、さまことにをかし。

 七日なぬか、雪間ゆきまの若菜わかな摘つみ、あをやかに、例れいはさしもさるもの目近めぢかからぬ所ところに、もてさわぎたるこそをかしけれ。白馬あをうまみにとて、里人さとびとは車くるまきよげに仕立したて見みに行ゆく。中御門なかのみかどのとじきみ引ひきすぐるほど、頭かしら一所ひとところにゆるぎあひて、挿櫛さしぐしも落おち、用意よういせねば折をれなどして笑わらふもまたをかし。

 左衛門さゑもんの陣ぢんのもとに、殿上人てんじやうびとなどあまた立たちて、舎人とねりの弓ゆみどもとりて馬うまどもおどろかし笑わらふを、はつかに見入みいれたれば、立蔀たてじとみなどのみゆるに、主殿司とのもりづかさ、女官にようくわんなどの行ゆき違ちがひたるこそをかしけれ。いかばかりなる人ひと九重ここのへをならすらむ、など思おもひやらるるに。

 内裏うちにも、見みるは、いとせばきほどにて、舎人とねりの顔かほの衣きぬに現あらはれ、まことに黒くろきに、白しろき物ものいきつかぬ所ところは、雪ゆきのむらむら消きえ残のこりたる心地ここちして、いと見苦みぐるしく、馬うまのあがりさわぐなどもいと恐おそろしう見みゆれば、引ひき入いられてよくも見みえず。

 八日やうか、人ひとの喜よろこびして走はしらする車くるまの音おと、ことに聞きこえてをかし。

 十五日とをかあまりいつか、節供せく参まゐりすゑ、粥かゆの木き引ひき隠かくして、家いへの御達ごたち、女房にようばうなどの窺うかがふを、うたれじと用意よういして、常つねに後うしろを心遣こころづかひしたる気色けしきも、いとをかしきに、いかにしたるにかあらむ、うちあてたるは、いみじう興きようありてうち笑わらひたるはいとはえばえし。ねたしと思おもひたるもことわりなり。

 新あたらしう通かよふ婿むこの君きみなどの内裏うちへまゐるほどをも心こころもとなう、所ところにつけて我われはと思おもひたる女房にようばうの、覗のぞき気色けしきばみ、奥おくの方かたにてたたずまふを、前まへにゐたる人ひとは心得こころえて笑わらふを、

「あなかま」

 とまねき制せいすれども、女をんなはたしらず顔がほにて、おほどかにてゐたまへり。

「ここなる物ものとりはべらむ」

 など言いひてよりは、走はしりうちて逃にぐれば、ある限かぎり笑わらふ。男君をとこぎみもにくからずうち笑わらみたるに、ことにおどろかず、顔かほすこし赤あかみてゐたるこそをかしけれ。

 また、かたみにうちて、をところさへぞうつめる。いかなる心こころにかあらむ、なきはらだちつつ、人ひとをのろひ、まがまがしく言いふもあるこそをかしけれ。内裏うちわたりなどのやむごとなきも、今日けふはみな乱みだれてかしこまりなし。

 除目ぢもくの頃ころなど、内裏うちわたりいとをかし。雪ゆき降ふり、いみじう凍こほりたるに、申文まうしぶみもて歩ありく。四位しゐ五位ごゐ、若わかやかに心地ここちよげなるはいと頼たのもしげなり、老おいて頭かしら白しろきなどが人ひとに案内あない言いひ、女房にようばうの局つぼねなどによりて、おのが身みのかしこきよしなど、心こころひとつをやりて説とき聞きかするを、若わかき人々ひとびとは真似まねをし笑わらへど、いかでか知しらむ。

「よきに奏そうしたまへ、啓けいしたまへ」

 など言いひても、得えたるはいとよし、得えずなりぬるこそいとあはれなれ。

第4段「三月三日は」

 三月さんぐわつ三日みつかは、うらうらとのどかに照てりたる。桃ももの花はなのいま咲さき始はじむる。柳やなぎなどをかしきこそさらなれ、それもまだ繭まゆに籠こもりたるはをかし。広ひろごりたるはうたてぞみゆる。

 おもしろく咲さきたる桜さくらを長ながく折をりて、大おほきなる瓶かめにさしたるこそをかしけれ。桜さくらの直衣なほしに出袿いだしうちきして、まらうどにもあれ、御おんせうとの君きみたちにても、そこ近ちかくゐて物ものなどうち言いひたる、いとをかし。

第5段「四月祭の頃」

 四月しぐわつ、祭まつりの頃ころいとをかし。上達部かんだちめ、殿上人てんじやうびとも、上うへの衣きぬの濃こき薄うすきばかりのけぢめにて、白襲しらがさねどの同おなじ様さまに、すずしげにをかし。木々きぎの木きの葉は、まだいと茂しげうはあらで、若わかやかに青あをみわたりたるに、霞かすみも霧きりも隔へだてぬ空そらの気色けしきの、なにとなくすずろにをかしきに、すこし曇くもりたる夕ゆふつ方かた、夜よなど、忍しのびたる郭公ほととぎすの、遠とほくそらかねかとおぼゆばかり、たどたどしきを聞ききつけたらむは、なに心地ここちかせむ。

 祭まつり近ちかくなりて、青朽葉あをくちば、二藍ふたあゐの物ものども押おし巻まきて、紙かみなどに気色けしきばかり押おし包つつみて、行いき違ちがひもて歩ありくこそをかしけれ。裾濃すそご、斑濃むらごなども、常つねよりはをかしく見みゆ。わらはべの、頭かしらばかりを洗あらひ繕つくろひて、なりはみな綻ほころび絶たえ、乱みだれかかりたるもあるが、屐子けいし、履くつなどに、

「緒をすげさせ。裏うらをさせ」

 などもてさわぎて、いつしかその日ひにならなむと、急いそぎ押おし歩ありくも、いとをかしや。

 あやしう踊をどり歩ありく者ものどもの、装束さうぞきしたてつれば、いみじく定者ぢやうざなどいふ法師ほふしのやうに練ねりさまよふ。いかに心こころもとなからむ、ほどほどにつけて、親おや、叔母をばの女をんな、姉あねなどの、供ともし、繕つくろひて、率ゐて歩ありくもをかし。

 蔵人くらうど思おもひしめたる人ひとの、ふとしもえならぬが、この日ひ青色あをいろきたるこそ、やがて脱ぬがせでもあらばや、とおぼゆれ。綾あやならぬは悪わろき。

第6段「同じことなれども」

 同おなじことなれども聞きき耳みみ異ことなるもの。

 法師ほふしの言葉ことば。をのこの言葉ことば。女をんなの詞ことば。下衆げすの詞ことばには、必かならず文字もじ余あまりたり。

第7段「思はむ子を法師に」

 思おもはむ子こを法師ほふしになしたらむこそ、いと心苦こころぐるしけれ。ただ木きの端はしなどのやうに思おもひたるこそ、いといとほしけれ。精進物さうじもののいと悪あしきをうち食くひ、寝ねぬるをも、若わかきはものもゆかしからむ、女をんななどのある所ところをも、などか忌いみたるやうにさし覗のぞかずもあらむ、それをもやすからず言いふ。

 まいて、験者げんざなどはいと苦くるしげなめり。困こうじてうち眠ねむれば、

「眠ねぶりなどのみして」

 などもどかる、いと所ところせく、いかにおぼゆらむ。

 これは昔むかしのことなめり。今様いまやうは安やすげなり。

第8段「大進生昌が家に」

 大進だいじん生昌なりまさが家いへに、宮みやのいでさせたまふに、東ひむがしの門かどは四足よつあしになして、それより御輿みこしは入いらせたまふ。北きたの門かどより、女房にようばうの車くるまどもも、また陣ぢんのゐねば、入いりなむと思おもひて、頭かしらつき悪わろき人ひとも、いたうも繕つくろはず、寄よせて降ふるべきものと思おもひ侮あなづりたるに、檳榔毛びらうげの車くるまなどは、門かど小ちひさければ、障さはりてえ入いらねば、例れいの筵道えんだう敷しきて降ふるるに、いとにくく腹立はらだたしけれども、いかがはせむ。殿上人てんじやうびと、地下ぢげなるも、陣ぢんに立たち添そひて見みるも、いとねたし。

 御前おまへに参まゐりて、ありつる様やう啓けいすれば、

「ここにても、人ひとは見みるまじうやは。などかはさしもうち解とけつる」

 と笑わらはせたまふ。

「されど、それは目慣めなれにてはべれば、よく仕立したててはべらむにしもこそ、驚おどろく人ひともはべらめ。さてもかばかりの家いへに、車くるま入いらぬ門かどやはある。見みえば笑わらはむ」

 など言いふほどにしも、

「これ、参まゐらせたまへ」

 とて、御硯おんすずりなどさし入いる。

「いで、いと悪わろくこそおはしけれ。などその門かど、はたせばくは作つくりて住すみたまひける」

 と言いへば、笑わらひて、

「家いへのほど、身みのほどに合あはせてはべるなり」

 といらふ。

「されど、門かどの限かぎりを高たかう作つくる人ひともありけるは」

 と言いへば、

「あな、恐おそろし」

 と驚おどろきて、

「それは于定国うていこくがことにこそはべるなれ。古ふるき進士しんじなどにはべらずは、承うけたまはり知しるべきにもはべらざりけり。たまたまこの道みちにまかり入いりにければ、かうだにわきまへ知しられはべる」

 と言いふ。

「その御道おんみちもかしこからざめり。筵道えんだう敷しきたれど、みな落おち入いり騒さわぎつるは」

 と言いへば、

「雨あめの降ふりはべりつれば、さもはべりつらむ。よしよし、また仰おほせられかくることもぞはべる。まかり立たちなむ」

 とて往いぬ。

「何事なにごとぞ、生昌なりまさがいみじうおぢつる」

 と問とはせたまふ。

「あらず、車くるまの入いりはべらざりつること、言いひはべりつる」

 と申まうして下おりたり。

 同おなじ局つぼねに住すむ若わかき人々ひとびとなどして、万よろづのことも知しらず、眠ねぶたければみな寝ねぬ。東ひむがしの対たいの西にしの廂ひさし、北きたかけてあるに、北きたの障子さうじに懸金かけがねもなかりけるを、それも尋たづねず、家いへあるじなれば、案内あないを知しりて開あけてけり。あやしくかればみさわぎたる声こゑにて、

「候さぶらはむはいかに、いかに」

 と、あまたたび言いふ声こゑにぞおどろきて見みれば、几帳きちやうの後うしろに立たてたる灯台とうだいの光ひかりはあらはなり。障子さうじを五寸ごすんばかり開あけて言いふなりけり。いみじうをかし。さらにかやうのすきずきしきわざ、夢ゆめにせぬものを、わが家いへにおはしましたりとて、無下むげに心こころにまかするなめり、と思おもふも、いとをかし。

 傍かたはらなる人ひとを押おし起おこして、

「かれ見みたまへ。かかる見みえぬもののあめるは」

 と言いへば、頭かしらもたげて見みやりて、いみじう笑わらふ。

「あれはたそ、けさうに」

 と言いへば、

「あらず。家いへぬしと局つぼねあるじと、定さだめ申まうすべきことのはべるなり」

 と言いへば、

「門かどのことをこそ聞きこえつれ、障子さうじ開あけたまへとやは聞きこえつる」

 と言いへば、

「なほそのことも申まうさむ。そこに候さぶらはむはいかに、いかに」

 と言いへば、

「いと見苦みぐるしきこと。さらにえおはせじ」

 とて笑わらふめれば、

「若わかき人ひとおはしけり」

 とて、引ひき立たてて往いぬる、後のちに、笑わらふこといみじう、開あけむとならば、ただ入いりねかし、消息せうそこを言いはむに、よかなりとは、たれか言いはむ、と、げにぞをかしき。

 つとめて、御前おまへに参まゐりて啓けいすれば、

「さることも聞きこえざりつるものを。昨夜よべのことにめでて行ゆきたりけるなり。あはれ、かれをはしたなう言いひけむこそ、いとほしけれ」

 とて、笑わらはせたまふ。

 姫宮ひめみやの御方おんかたのわらはべの装束さうぞく、つかうまつるべきよし仰おほせらるるに、

「この袙あこめのうはおそひは、何なにの色いろにかつかうまつらすべき」

 と申まうすを、また笑わらふもことわりなり。

「姫宮ひめみやの御前おまへのものは、例れいのやうにては、にくげに候さぶらはむ。ちうせい折敷をしきに、ちうせい高坏たかつきなどこそよくはべらめ」

 と申まうすを、

「さてこそは、うはおそひ着きたらむわらはも、参まゐりよからめ」

 と言いふを、なほ、

「例れいの人ひとのやうに、これなかくな言いひ笑わらひそ。いと謹厚きんこうなるものを」

 と、いとほしがらせたまふも、をかし。

 中間なかまなるをりに、

「大進だいじん、まづもの聞きこえむとあり」

 と言いふを聞きこしめして、

「またなでふこと言いひて、笑わらはれむとならむ」

 と仰おほせらるるもまたをかし。

「行ゆきて聞きけ」

 と宣のたまはすれば、わざと出いでたれば、

「一夜ひとよの門かどのこと、中納言ちゆうなごんに語かたりはべりしかば、いみじう感かんじ申まうされて、いかでさるべからむをりに心こころのどかに対面たいめんして、申まうし承うけたまはらむとなむ申まうされつる」

 とて、またことごともなし。一夜ひとよのことや言いはむ、と心こころときめきしつれど、

「いま静しづかに、御局みつぼねに候さぶらはむ」

 とて往いぬれば、帰かへり参まゐりたるに、

「さて、何事なにごとぞ」

 と宣のたまはすれば、申まうしつることを、さなむと啓けいすれば、

「わざと消息せうそこし、呼よび出いづべきことにはあらぬや。おのづから端はしつ方かた、局つぼねなどにゐたらむときも言いへかし」

 とて笑わらへば、

「おのが心地ここちにかしこしと思おもふ人ひとのほめたる、うれしとや思おもふ、と告つげ聞きかするならむ」

 と宣のたまはする、御気色みけしきも、いとめでたし。

第9段「うへに候ふ御猫は」

 うへに候さぶらふ御猫おんねこは、冠かうぶりにて命婦みやうぶのおとどとて、いみじうをかしければ、かしづかせたまふが、端はしに出いでて臥ふしたるに、乳母めのとの馬命婦うまのみやうぶ、

「あな、まさなや。入いりたまへ」

 と呼よぶに、日ひのさし入いりたるに、眠ねぶりてゐたるを、おどすとて、

「翁丸おきなまろ、いづら。命婦みやうぶのおとど食くへ」

 と言いふに、まことかとて、痴しれ者ものは走はしりかかりたれば、怯おびえ惑まどひて、御簾みすのうちに入いりぬ。

 朝餉あさがれひのおまへに、上うへおはしますに、御覧ごらんじていみじう驚おどろかせたまふ。猫ねこを御懐おんふところに入いれさせたまひて、男をのこども召めせば、蔵人くらうど忠隆ただたか、なりなか参まゐりたれば、

「この翁丸おきなまろ打うち調てうじて、犬島いぬじまへつかはせ。ただいま」

 と仰おほせらるれば、集あつまり狩かり騒さわぐ。馬命婦うまのみやうぶをもさいなみて、

「乳母めのと替かへてむ。いと後うしろめたし」

 と仰おほせらるれば、御前おまへにも出いでず。犬いぬは狩かり出いでて、滝口たきぐちなどして追おひつかはしつ。

「あはれ、いみじうゆるぎありきつるものを。三月さんぐわつ三日みつか、頭とうの弁べんの、柳やなぎかづらせさせ、桃ももの花はなをかざしにささせ、桜さくら腰こしにさしなどしてありかせたまひし折をり、かかる目め見みむとは思おもはざりけむ」

 などあはれがる。

「御膳おものの折をりは、必かならず向むかひ候さぶらふに、さうざうしうこそあれ」

 など言いひて、三四日みかよかになりぬる、昼ひるつ方かた、犬いぬいみじう鳴なく声こゑのすれば、なぞの犬いぬのかく久ひさしう鳴なくにかあらむ、と聞きくに、万よろづの犬いぬ訪とぶらひ見みに行ゆく。

 御厠人みかはやうどなる者もの走はしり来きて、

「あな、いみじ。犬いぬを蔵人くらうど二人ふたりして打うちたまふ。死しぬべし。犬いぬを流ながさせたまひけるが、帰かへり参まゐりたるとて調てうじたまふ」

 と言いふ。心憂こころうのことや、翁丸おきなまろなり。

「忠隆ただたか、実房さねふさなんど打うつ」

 と言いへば、制せいしにやるほどに、からうじて鳴なきやみ、

「死しにければ、陣ぢんの外とに引ひき捨すてつ」

 と言いへば、あはれがりなどする、夕ゆふつ方かた、いみじげに腫はれ、あさましげなる犬いぬのわびしげなるが、わななきありけば、

「翁丸おきなまろか。この頃ころかかる犬いぬやはありく」

 と言いふに、

「翁丸おきなまろ」

 と言いへど、聞ききも入いれず。

「それ」

 とも言いひ、

「あらず」

 とも口々くちぐち申まうせば、

「右近うこんぞ見知みしりたる。呼よべ」

 とて召めせば、参まゐりたり。

「これは翁丸おきなまろか」

 と見みせさせたまふ。

「似にてははべれど、これはゆゆしげにこそはべるめれ。また、翁丸おきなまろかとだに言いへば、喜よろこびてまうで来くるものを、呼よべど寄より来こず。あらぬなめり。それは、打うち殺ころして捨すてはべりぬとこそ申まうしつれ。二人ふたりして打うたむには、はべりなむや」

 など申まうせば、心憂こころうがらせたまふ。

 暗くらうなりて、物もの食くはせたれど食くはねば、あらぬものに言いひなしてやみぬる、つとめて、御みけづり髪ぐし・御手水みてうづなど参まゐりて、御鏡みかがみを持もたせさせたまひて御覧ごらんずれば、候さぶらふに、犬いぬの柱はしらのもとにゐたるを見みやりて、

「あはれ、昨日きのふ翁丸おきなまろをいみじうも打うちしかな。死しにけむこそあはれなれ。何なにの身みにこのたびはなりぬらむ。いかにわびしき心地ここちしけむ」

 とうち言いふに、このゐたる犬いぬのふるひわななきて、涙なみだをただ落おとしに落おとすに、いとあさまし。さは翁丸おきなまろにこそはありけれ、昨夜よべは隠かくれ忍しのびてあるなりけり、と、あはれにそへてをかしきこと限かぎりなし。

 御鏡みかがみうち置おきて、

「さは翁丸おきなまろか」

 と言いふに、ひれ伏ふしていみじう泣なく。御前おまへにもいみじうおち笑わらはせたまふ。右近うこんの内侍ないし召めして、

「かくなむ」

 と仰おほせらるれば、笑わらひののしるを、上うへにも聞きこしめして渡わたりおはしましたり。

「あさましう、犬いぬなども、かかる心こころあるものなりけり」

 と笑わらはせたまふ。うへの女房にようばうなども、聞ききて参まゐり集あつまりて、呼よぶにも今いまぞ立たち動うごく。

「なほこの顔かほなどの腫はれたる、物もののてをせさせばや」

 と言いへば、

「つひにこれをいひ表あらはしつること」

 など笑わらふに、忠隆ただたか聞ききて、台盤所だいばんどころの方かたより、

「まことにやはべらむ。かれ見みはべらむ」

 と言いひたれば、

「あな、ゆゆし。さらに、さるものなし」

 と言いはすれば、

「さりとも、見付みつくる折をりもはべらむ。さのみもえ隠かくさせたまはじ」

 と言いふ。

 さて、かしこまり許ゆるされて、元もとの様やうになりにき。なほあはれがられて、ふるひ泣なき出いでたりしこそ、世よに知しらずをかしくあはれなりしか。人ひとなどこそ人ひとに言いはれて泣なきなどはすれ。

第10段「正月一日三月三日は」

 正月しやうぐわつ一日ついたち、三月さんぐわつ三日みつかは、いとうららかなる。

 五月ごぐわつ五日いつかは、曇くもり暮くらしたる。七月しちぐわつ七日なぬかは、曇くもり暮くらして、夕方ゆふかたは晴はれたる空そらに、月つきいと明あかく、星ほしの数かずも見みえたる。

 九月くぐわつ九日ここぬかは、暁あかつきがたより雨あめすこし降ふりて、菊きくの露つゆもこちたく、覆おほひたる綿わたなどもいたく濡ぬれ、移うつしの香かももてはやされて、つとめては止やみにたれど、なほ曇くもりて、ややもせば降ふり落おちぬべく見みえたるもをかし。

第11段「よろこび奏するこそ」

 喜よろこび奏そうするこそをかしけれ。後うしろをまかせて、御前おまへの方かたに向むかひて立たてるを。拝はいし舞踏ぶたふしさわぐよ。

第12段「今内裏の東をば」

 今内裏いまだいりの東ひむがしをば北きたの陣ぢんといふ。梨なしの木きの遥はるかに高たかきを、

「幾いく尋ひろあらむ」

 などいふ。権中将ごんのちゆうじやう、

「もとよりうち切きりて、定澄ぢやうちやう僧都そうづの枝扇えだあふぎにせばや」

 と宣のたまひしを、山階寺やましなでらの別当べつたうになりて喜よろこび申まうす日ひ、近衛司このゑづかさにてこの君きみの出いでたまへるに、高たかき屐子けいしをさへ履はきたれば、ゆゆしうたかし。出いでぬる後のちに、

「などその枝扇えだあふぎをば持もたせたまはぬ」

 といへば、

「物忘ものわすれせぬ」

 と笑わらひたまふ。

「定澄ぢやうちやう僧都そうづに袿うちきなし。すくせ君きみに袙あこめなし」

 と言いひけむ人ひとこそをかしけれ。

第13段「山は」

 山やまは 小倉山をぐらやま。かせ山やま。三笠山みかさやま。このくれ山やま。いりたちの山やま。わすれずの山やま。末すゑの松山まつやま。

 かたさり山やまこそ、いかならむとをかしけれ。

 いつはた山やま。かへる山やま。のちせの山やま。

 あさくら山やま、よそに見みるぞをかしき。

 おほひれ山やまもをかし。臨時りんじの祭まつりの舞人まひびとなどのおもひ出いでらるるなるべし。

 三輪みわの山やまをかし。

 たむけ山やま。まちかね山やま。たまさか山やま。みみなし山やま。

第14段「市は」

 市いちは たつの市いち。さとの市いち。つば市いち。

 大和やまとにあまたある中なかに、長谷はせに詣まうづる人ひとのかならずそこにとまるは、観音くわんおんの縁えんのあるにや、と心こころことなり。

 おふさの市いち。しかまの市いち。あすかの市いち。

第15段「峰は」

 峰みねは ゆづるはの峰みね。あみだの峰みね。いやたかの峰みね。

第16段「原は」

 原はらは みかの原はら。あしたの原はら。その原はら。

第17段「淵は」

 淵ふちは かしこ淵ふちは、いかなる底そこの心こころを見みて、さる名なを付つけけむとをかし。

 ないりその淵ふちは、たれにいかなる人ひとのをしへけむ。青色あをいろの淵ふちこそをかしけれ。蔵人くらうどなどの具ぐにしつべくて。

 かくれの淵ふち。いな淵ふち。

第18段「海は」

 海うみは 水みづうみ。よさの海うみ。かはふちの海うみ。

第19段「みささぎは」

 みささぎは うぐひすのみささぎ。かしはぎのみささぎ。あめのみささぎ。

第20段「わたりは」

 わたりは しかすがのわたり。こりずまのわたり。水みづはしのわたり。

第21段「たちは」

 たちは たまつくり。

第22段「家は」

 家いへは 近衛このゑの御門みかど。二条にでうみかゐ。一条いちでうもよし。

 そめどのの宮みや。せかい院ゐん。すがはらの院ゐん。冷泉院れんせいゐん。閑院かんゐん。朱雀院すざくゐん。をのの宮みや。

 こうばい。あがたの井戸ゐど。

 たけ三条さんでう。小八条こはちでう。小一条こいちでう。

第23段「清涼殿の丑寅の隅の」

 清涼殿せいりやうでんの丑寅うしとらの隅すみの、北きたの隔へだてなる御障子みさうじには、荒海あらうみの絵ゑ、生いきたるものどものおそろしげなる、手長てなが足長あしながをぞ描かきたる。上うへの御局みつぼねの戸と押おし開あけたれば、常つねに目めに見みゆるを、にくみなどして笑わらふ。

 勾欄かうらんのもとに青あをき瓶かめの大おほきなる据すゑて、桜さくらのいみじうおもしろき枝えだの五尺ごしやくばかりなるを、いと多おほくさしたれば、勾欄かうらんの外とまでこぼれ咲さきたる、昼ひるつ方かた、大納言だいなごん殿どの、桜さくらの直衣なほしのすこしなよらかなるに、濃こき紫むらさきの固紋かたもん指貫さしぬき、白しろき御衣おんぞども、上うへに濃こき綾あやのいとあざやかなるを出いだしてまゐりたまへるに、うへのこなたにおはしませば、戸口とぐちの前まへなる細ほそき板敷いたじきにゐたまひて、物ものなど奏そうしたまふ。

 御簾みすの内うちに、女房にようばう、桜さくらの唐衣からぎぬどもくつろかに脱ぬぎ垂たれて、藤ふぢ、山吹やまぶきなど色々いろいろに好このましうて、あまた小半蔀こはじとみの御簾みすよりも押おし出いでたるほど、昼ひの御座おましのかたには、御膳おものまゐる足音あしおと高たかし。警蹕けいひちなど

「おし」

 といふ声こゑ聞きこゆるも、うらうらとのどかなる日ひのけしきなど、いとをかしきに、果はての御盤ごばん取とりたる蔵人くらうどまゐりて御膳おもの奏そうすれば、中なかの戸とよりわたらせたまふ。御供おんともに大納言だいなごん殿どのまゐらせたまひて、ありつる花はなのもとに帰かへりゐたまへり。

 宮みやの御前おまへの御几帳みきちやう押おし遣やりて、長押なげしのもとに出いでさせたまへるなど、なにとなくただめでたきを、候さぶらふ人ひとも思おもふことなき心地ここちするに、

「月つきも日ひもかはりゆけどもひさにふる三室みむろの山やまの」

 といふことを、ゆるるかにうち詠よみ出いだしてゐたまへる、いとをかしうおぼゆるにぞ、げにぞ千歳ちとせもあらまほしき御有様おんありさまなるや。

 陪膳はいぜんつかうまつる人ひとの、男をのこどもなど召めすほどもなくわたらせたまひぬ。

「御硯おんすずりの墨すみすれ」

 と仰おほせらるるに、目めは空そらにて、ただおはしますをのみ見みたてまつれば、ほとど継目つぎめも放はなちつべし。白しろき色紙しきしを押おし畳たたみて、

「これにただいま覚おぼえむ古ふるき事こと一ひとつづつ書かけ」

 と仰おほせらるる、外とにゐたまへるに、

「これはいかが」

 と申まうせば、

「とう書かきてまゐらせたまへ。男をのこは言こと加くはへ候さぶらふべきにもはべらず」

 とて、さし入いれたまへり。御硯おんすずり取とり下おろして、

「とくとく。ただ思おもひ回まはさで、難波津なにはづもなにも、ふと覚おぼえむことを」

 と責せめさせたまふに、などさは臆おくせしにか、すべて面おもてさへ赤あかみてぞ思おもひ乱みだるるや。春はるの歌うた、花はなの心こころなど、さいふいふも、上臈じやうらふ二ふたつ三みつばかり書かきて、

「これに」

 とあるに、

年としふれば齢よはひは老おいぬしかはあれど花はなをし見みればもの思おもひもなし

 といふことを、

「君きみをし見みれば」

 と書かきなしたる、御覧ごらんじ比くらべて、

「ただこの心こころどものゆかしかりつるぞ」

 と仰おほせらるるついでに、

「円融院ゑんゆうゐんの御時おほんときに、草子さうしに歌うた一ひとつ書かけと殿上人てんじやうびとに仰おほせられければ、いみじう書かきにくう、すまひ申まうす人々ひとびとありけるに、さらにただ、手ての良よさ悪あしさ、歌うたの折をりにあはざらむをも知しらじと仰おほせらるれば、侘わびてみな書かきける中なかに、ただいまの関白くわんぱく殿どの、三位さんみの中将ちゆうじやうと聞きこえける時とき、

潮しほの満みついつもの浦うらのいつもいつも君きみをば深ふかく思おもふはやわが

といふ歌うたを、末すゑを、頼たのむはやわがと書かきたまへりけるをなむ、いみじうめでさせたまひける」

 など仰おほせらるるも、すずろに汗あせあゆる心地ここちぞする。年若としわかからむ人ひと、はたさもえ書かくまじきことのさまにや、などぞおぼゆる。例れいの、ことよく書かく人々ひとびとも、あぢきなうみなつつまれて、書かき汚よごしなどしたるもあり。

 古今こきんの草子さうしを御前おまへに置おかせたまひて、歌うたどもの本もとを仰おほせられて、

「これが末すゑ、いかに」

 と問とはせたまふに、すべて、夜昼よるひる、心こころにかかりておぼゆるもあるが、け清ぎよう申まうし出いでられぬは、いかなるぞ。宰相さいしやうの君きみぞ十とをばかり、それもおぼゆるかは。まいて、五いつつ、六むつなどは、ただおぼえぬ由よしをぞ啓けいすべけれど、

「さやはけにくく、仰おほせごとをはえなうもてなすべき」

 と、わび、口惜くちをしがるも、をかし。知しると申まうす人ひとなきをば、やがてみな読よみ続つづけて、夾算けふさんせさせたまふを、

「これは、知しりたることぞかし。などかう、拙つたなうはあるぞ」

 と言いひ嘆なげく。中なかにも、古今こきんあまた書かき写うつしなどする人ひとは、みなもおぼえぬべきことぞかし。

「村上むらかみの御時おほんときに、宣耀殿せんえうでんの女御にようごと聞きこえけるは、小一条こいちでうの左ひだりの大臣殿おほいとのの御娘おんむすめにおはしけると、誰たれかは知しりたてまつらざらむ。まだ姫君ひめぎみと聞きこえけるとき、父ちち大臣おとどの教をしへ聞きこえたまひけることは、一ひとつには御手おんてを習ならひたまへ。次つぎには、琴きんの御琴おんことを、人ひとよりことに弾ひきまさらむとおぼせ。さては、古今こきんの歌うた二十巻はたまきを、みなうかべさせたまふを、御学問おんがくもんにはせさせたまへとなむ、聞きこえたまひける、と聞きこし召めしおきて、御物忌おんものいみなりける日ひ、古今こきんをもてわたらせたまひて、御几帳みきちやうを引ひき隔へだてさせたまひければ、女御にようご、例れいならずあやし、とおぼしけるに、草子さうしを広ひろげさせたまひて、その月つき、何なにの折をり、その人ひとのよみたる歌うたはいかにと問とひ聞きこえさせたまふを、かうなりけり、と心得こころえたまふもをかしきものの、ひがおぼえをもし、忘わすれたるところもあらば、いみじかるべきこと、と、わりなうおぼし乱みだれぬべし。

その方かたにおぼめかしからぬ人ひと、二ふたり、三人みたりばかり召めし出いでて、碁石ごいしして数かず置おかせたまふとて、強しひ聞きこえさせたまひけむほどなど、いかにめでたうをかしかりけむ。御前おまへに候さぶらひけむ人ひとさへこそ羨うらやましけれ。

せめて申まうさせたまへば、さかしう、やがて末すゑまではあらねども、すべて、つゆ違たがふことなかりけり。いかでなほ少すこし僻事ひがごと見みつけてをやまむと、ねたきまでにおぼしめしけるに、十巻とまきにもなりぬ。さらに不用ふようなりけりとて、御草子おんさうしに夾算けふさんさして大殿篭おほとのごもりぬるも、まためでたしかし。

いと久ひさしうありて、起おきさせたまへるに、なほこのこと、勝かち負まけなくてやませたまはむ、いと悪わろしとて、下しもの十巻とまきを、明日あすにならば、ことをぞ見みたまひ合あはするとて、今日けふ定さだめてむと、大殿油おほとなぶら参まゐりて、夜更よふくるまでよませたまひける。されど、つひに負まけ聞きこえさせたまはずなりにけり。上うへ、わたらせたまひて、かかることなど、殿とのに申まうしにたてまつられたりければ、いみじうおぼしさわぎて、御誦経みずきやうなどあまたせさせたまひて、そなたに向むきてなむ念ねんじ暮くらしたまひける。すきずきしう、あはれなることなり」

 など、語かたり出いでさせたまふを、上うへも聞きこし召めし、めでさせたまふ。

「我われは三巻みまき、四巻よまきをだにえ見果みはてじ」

 と、仰おほせらる。

「昔むかしは、えせ者ものなども、みなをかしうこそありけれ。この頃ころは、かやうなることやは聞きこゆる」

 など、御前おまへに候さぶらふ人々ひとびと、上うへの女房にようばう、こなた許ゆるされたるなど参まゐりて、口々くちぐち言いひいでなどしたるほどは、まことに、つゆ思おもふことなく、めでたくぞおぼゆる。

第24段「生ひ先なくまめやかに」

 生おひ先さきなく、まめやかに、えせざいはひなど見みてゐたらむ人ひとは、いぶせくあなづらはしく思おもひやられて、なほさりぬべからむ人ひとの娘むすめなどは、さしまじらはせ、世よの有様ありさまも見みせならはさまほしう、内侍ないしのすけなどにてしばしもあらせばや、とこそおぼゆれ。

 宮仕みやづかへする人ひとを、あはあはしう悪わろきことに言いひ思おもひたる男をとこなどこそ、いとにくけれ。

 げにそもまたさることぞかし。かけまくもかしこき御前おまへをはじめたてまつりて、上達部かんだちめ、殿上人てんじやうびと、五位ごゐ、四位しゐはさらにもいはず、見みぬ人ひとは少すくなくこそあらめ。女房にようばうの従者ずさ、その里さとより来くる者もの、長女をさめ、御厠人みかはやうどの従者ずさ、たびしかはらといふまで、いつかはそれをはじかくれたりし。殿とのばらなどはいとさしもやあらざらむ、それもある限かぎりかは、しかさぞあらむ。

 うへなどをいひてかしづきすゑたらむに、心こころにくからずおぼえむ、ことわりなれど、また内裏うちの内侍ないしのすけなどいひて、折々をりをり内裏うちへ参まゐり、祭まつりの使つかひなどに出いでたるも、面立おもだたしからずやはある。さて籠こもりゐぬるは、まいてめでたし。受領ずりやうの五節ごせち出いだすをりなど、いと鄙ひなび言いひ知しらぬことなど、人ひとに問とひ聞ききなどはせじかし。心こころにくきものなり。

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