【全文】白居易『長恨歌』の原文と現代語訳(ルビ・ピンイン付き)

中国唐代の詩人、白居易(白楽天)によって作られた『長恨歌』は、玄宗皇帝と楊貴妃のエピソードを歌った漢詩です。

白居易の代表作の一つであり、日本の文学にも大きな影響を与えました。

紫式部も影響を受けた作家の一人で、『源氏物語』の「桐壺」の帖は、『長恨歌』のストーリーや表現がふんだんに取り入れられています。

このページでは、『長恨歌』の漢文・書き下し文・現代語訳の全文を掲載いたします。

『源氏物語』をはじめとする日本の古典文学をより面白く読むためにも、『長恨歌』の内容を知っておいてまったく損はありません。

現代語訳は全文で約2,600文字ですので、5分ほどで読めるかと思います。

ぜひ現代語訳だけでも読んでいただけると嬉しいです♪

ご興味のある方はぜひ原文も読んでみてください。

書き下し文にはルビを、漢文にはピンインを振りました。

漢詩はやはり、中国語で音読するのが非常に味わい深いです。

中国語をちょっとでもかじったことのある方は、ぜひ『長恨歌』の音読にも挑戦してみてくださいね♪

長明

予も漢語を学び直したいかも♪

目次

白居易『長恨歌』とは?

『長恨歌』が作られたのは元和元(806)年。

安史の乱により楊貴妃が命を落とした日、天宝15載6月14日(756年7月15日)から半世紀が経った年です。

安史の乱とは安禄山と史思明による反乱(両名の性をとって安史の乱)で、7年以上にもわたって続く大規模な戦争となりました。

一説によると、唐の人口の3分の2にあたる3,600万人が死亡したといわれています。

その一因となったのは、楊貴妃に対する玄宗皇帝の度を越えた寵愛。

楊貴妃を連れて蜀へと敗走する途上、馬嵬の地で護衛の兵士たちに楊貴妃の殺害を求められた玄宗皇帝は、その要求を受け入れざるを得ませんでした。

それから50年後の元和元(806)年、35歳で制科に合格した白居易は、馬嵬に近い盩厔県に赴任しました。

陳鴻、王質夫と3人で仙遊寺に集い、馬嵬で亡くなった楊貴妃について語り合ったことから『長恨歌』を作詩したそうです。

大勢の人々が犠牲になり、唐王朝が傾くきっかけとなった安史の乱、そして玄宗皇帝と楊貴妃のエピソードは、半世紀を経てもなお鮮明に語り継がれていたのでしょう。

『長恨歌』はあくまで物語という体で作られており、玄宗皇帝と楊貴妃の名前はぼかされていますが、前半部分はほとんど史実に基づいています。

後半部分は道士が貴妃の魂を探すというファンタジーとなっており、のちの文学や戯曲に多大な影響を与えました。

『源氏物語』もその一つで、桐壺帝と桐壺更衣のエピソードには『長恨歌』がベースにあります。

漢詩としては長編の作品ですが、全文を読むのにそれほどの時間はかかりません。

内容もわかりやすいので、読みやすいかと思います。

ぜひ現代語訳だけでも目を通していただけると嬉しいです♪

長明

ルビとピンインを振った原文も読んでみるといいかも♪

白居易『長恨歌』原文と現代語訳

漢の皇帝と楊家の娘

原文と書き下し文

 長 cháng 恨 hèn 歌 gē

 漢 hàn 皇 huáng 重 zhòng 色 sè 思 sī 傾 qīng 国 guó

 御 yù 宇 yǔ 多 duō 年 nián 求 qiú 不 bù 得 dé

 楊 yáng 家 jiā 有 yǒu 女 nǚ 初 chū 長 zhǎng 成 chéng

 養 yǎng 在 zài 深 shēn 閨 guī 人 rén 未 wèi 識 shí

 天 tiān 生 shēng 麗 lì 質 zhì 難 nán 自 zì 棄 qì

 一 yī 朝 zhāo 選 xuǎn 在 zài 君 jūn 王 wáng 側 cè

 迴 huí 眸 móu 一 yī 笑 xiào 百 bǎi 媚 mèi 生 shēng

 六 liù 宮 gōng 粉 fěn 黛 dài 無 wú 顔 yán 色 sè

 春 chūn 寒 hán 賜 cì 浴 yù 華 huá 清 qīng 池 chí

 温 wēn 泉 quán 水 shuǐ 滑 huá 洗 xǐ 凝 níng 脂 zhī

 侍 shì 児 ér 扶 fú 起 qǐ 嬌 jiāo 無 wú 力 lì

 始 shǐ 是 shì 新 xīn 承 chéng 恩 ēn 澤 zé 時 shí

 雲 yún 鬢 bìn 花 huā 顔 yán 金 jīn 歩 bù 揺 yáo

 芙 fú 蓉 róng 帳 zhàng 暖 nuǎn 度 dù 春 chūn 宵 xiāo

 春 chūn 宵 xiāo 苦 kǔ 短 duǎn 日 rì 高 gāo 起 qǐ

 従 cóng 此 cǐ 君 jūn 王 wáng 不 bù 早 zǎo 朝 cháo

 承 chéng 歓 huān 侍 shì 宴 yàn 無 wú 閑 xián 暇 xiá

 春 chūn 従 cóng 春 chūn 遊 yóu 夜 yè 専 zhuān 夜 yè

 後 hòu 宮 gōng 佳 jiā 麗 lì 三 sān 千 qiān 人 rén

 三 sān 千 qiān 寵 chǒng 愛 ài 在 zài 一 yī 身 shēn

 金 jīn 屋 wū 粧 zhuāng 成 chéng 嬌 jiāo 侍 shì 夜 yè

 玉 yù 楼 lóu 宴 yàn 罷 bà 酔 zuì 和 hé 春 chūn

 姉 zǐ 妹 mèi 弟 dì 兄 xiōng 皆 jiē 列 liè 土 tǔ

 可 kě 怜 lián 光 guāng 彩 cǎi 生 shēng 門 mén 戸 hù

 遂 suì 令 lìng 天 tiān 下 xià 父 fù 母 mǔ 心 xīn

 不 bù 重 zhòng 生 shēng 男 nán 重 zhòng 生 shēng 女 nǚ

長ちょう恨ごん歌か

漢皇かんこう色いろを重おもんじて傾国けいこくを思おもう

御宇ぎょう多た年ねん求もとむれども得えず

楊よう家かに女むすめ有あり初はじめて長成ちょうせいす

養やしなわれて深閨しんけいに在あれば人ひと未いまだ識しらず

天生てんせいの麗質れいしつは自おのずから棄すて難がたく

一朝いっちょうに選えらばれて君王くんのうの側かたわらに在あり

眸ひとみを迴めぐらして一ひとたび笑わらえば百ひゃくの媚こび生しょうじ

六宮りっきゅうの粉黛ふんたいは顔色がんしょく無なし

春寒はるさむくして浴よくを賜たまう華か清せいの池いけ

温泉おんせん水みず滑なめらかにして凝脂ぎょうしを洗あらう

侍児じじ扶たすけ起おこすも嬌きょうとして力ちから無なし

始はじめて是これ新あらたに恩沢おんたくを承うけし時ときなり

雲鬢うんびん花か顔がん金きん歩ほ揺よう

芙ふ蓉ようの帳とばりは暖あたたかくして春宵しゅんしょうを度わたる

春宵しゅんしょう苦はなはだ短みじかくて日ひ高たかくして起おく

此これ従より君王くんのう早朝そうちょうせず

歓かんを承うけ宴えんに侍じして閑かん暇か無なし

春はるは春はるの遊あそびに従したがい夜よるは夜よるを専もっぱらにす

後宮こうきゅうの佳か麗れい三千人さんぜんにん

三千さんぜんの寵愛ちょうあい一身いっしんに在あり

金きん屋おく粧よそおい成なりて嬌きょうとして夜よるに侍じし

玉楼ぎょくろう宴えん罷やみて酔よひて春はるに和わす

姉妹しまい弟兄ていけい皆みな土どに列れっす

憐あわれむ可べし光彩こうさい門もん戸こに生しょうず

遂ついに天てん下かの父母ふぼの心こころをして

男おとこを生うむを重おもんぜず女おんなを生うむを重おもんぜしむ

現代語訳

 漢の皇帝は女色を重んじて、国を傾けるほどの美女を望んでいた。しかし御治世の多年、どれだけ探し求めても得られなかった。

 楊家に娘あり、成人したばかりである。奥の部屋で大切に育てられていたため、人はまだ誰も知らない。天生の麗しい素質はおのずから捨てがたく、一朝に選ばれて君王のそばに仕える身となった。瞳をめぐらせて一たび微笑めば、百の愛嬌が生まれる。六宮の華やかに装う美女たちも、色気を無くしてしまう。

 春はまだ寒くして、湯浴を賜わる華清の池。温泉の水はなめらかで、つややかな白い肌を洗う。侍女が支え起こすも、なまめかしく力なくゆらめく。初めてこれ新たに、帝の寵愛を承った時であった。雲のように豊かなびん髪、花のように美しい顔つき、歩けば揺れる金の髪飾り。芙蓉のとばりは暖かく、春の宵を過ごす。春の宵は苦しいほどに短くて、日が高くなってようやく起きた。これより君王、早朝のまつりごとを怠る。

娥眉馬前に死す

漢文

 驪 lí 宮 gōng 高 gāo 処 chù 入 rù 青 qīng 雲 yún

 仙 xiān 楽 yuè 風 fēng 飄 piāo 処 chù 処 chù 聞 wén

 緩 huǎn 歌 gē 慢 màn 舞 wǔ 凝 níng 糸 sī 竹 zhú

 尽 jìn 日 rì 君 jūn 王 wáng 看 kàn 不 bù 足 zú

 漁 yú 陽 yáng 鼙 pí 鼓 gǔ 動 dòng 地 dì 来 lái

 驚 jīng 破 pò 霓 ní 裳 cháng 羽 yǔ 衣 yī 曲 qǔ

 九 jiǔ 重 chóng 城 chéng 闕 què 煙 yān 塵 chén 生 shēng

 千 qiān 乗 shèng 万 wàn 騎 qí 西 xī 南 nán 行 xíng

翠 cuì 華 huá 揺 yáo 揺 yáo 行 xíng 復 fù 止 zhǐ

 西 xī 出 chū 都 dū 門 mén 百 bǎi 余 yú 里 lǐ

 六 liù 軍 jūn 不 bù 発 fā 無 wú 奈 nài 何 hé

 宛 wǎn 転 zhuǎn 娥 é 眉 méi 馬 mǎ 前 qián 死 sǐ

 花 huā 鈿 diàn 委 wěi 地 dì 無 wú 人 rén 收 shōu

 翠 cuì 翹 qiào 金 jīn 雀 què 玉 yù 搔 sāo 頭 tóu

 君 jūn 王 wáng 掩 yǎn 面 miàn 救 jiù 不 bù 得 dé

 迴 huí 看 kàn 血 xuè 涙 lèi 相 xiāng 和 hé 流 liú

 黄 huáng 埃 āi 散 sǎn 漫 màn 風 fēng 蕭 xiāo 索 suǒ

 雲 yún 桟 zhàn 縈 yíng 紆 yū 登 dēng 剣 jiàn 閣 gé

 峨 é 嵋 méi 山 shān 下 xià 少 shǎo 人 rén 行 xíng

 旌 jīng 旗 qí 無 wú 光 guāng 日 rì 色 sè 薄 bó

 蜀 shǔ 江 jiāng 水 shuǐ 碧 bì 蜀 shǔ 山 shān 青 qīng

 聖 shèng 主 zhǔ 朝 zhāo 朝 zhāo 暮 mù 暮 mù 情 qíng

 行 xíng 宮 gōng 見 jiàn 月 yuè 傷 shāng 心 xīn 色 sè

 夜 yè 雨 yǔ 聞 wén 鈴 líng 腸 cháng 断 duàn 声 shēng

書き下し文

驪宮りきゅう高たかき処ところ青雲せいうんに入いる

仙楽せんがく風かぜに飄ひるがえりて処処しょしょに聞きこゆ

緩かん歌か縵まん舞ぶ糸し竹ちくを凝こらし

尽日じんじつ君王くんのう看みれども足たりず

漁陽ぎょようの鼙へい鼓こ地ちを動うごかして来きたり

驚破きょうはす霓裳げいしょう羽衣ういの曲きょく

九重きゅうちょうの城闕じょうけつ煙塵えんじん生しょうじ

千乗せんじょう万ばん騎き西南せいなんに行ゆく

翠すい華か揺揺ようようとして行ゆきて復また止とまる

西にしのかた都と門もんを出いでて百ひゃく余里より

六軍りくぐん発はっせず奈何いかんともする無なく

宛転えんてんたる娥眉がび馬ば前ぜんに死しす

花か鈿でん地ちに委ゆだねられて人ひとの収おさむる無なし

翠翹すいぎょう金雀きんじゃく玉搔頭ぎょくそうとう

君王くんのう面めんを掩おおいて救すくい得えず

迴かえり看みれば血涙けつるい相あい和わして流ながる

黄埃こうあい散漫さんまんとして風かぜ蕭索しょうさくたり

雲桟うんさん縈えい紆うして剣閣けんかくに登のぼる

峨嵋がび山さん下か人ひとの行ゆくこと少すくなく

旌せい旗き光ひかり無なく日色にっしょく薄うすし

蜀江しょくこう水みず碧みどりにして蜀山しょくざん青あおし

聖主せいしゅ朝朝ちょうちょう暮暮ぼぼの情じょう

行宮あんぐうに月つきを見みれば傷心しょうしんの色いろ

夜雨やうに鈴すずを聞きけば腸ちょうの断たたれる声こえ

現代語訳

 驪宮は高いところ、青雲に入る。仙楽の音は風に乗り、あちらこちらで聞こえる。緩やかに歌い、ゆったりと舞い、管絃の音を情緒たっぷりに奏でて、一日を尽くしても君王は飽き足らない。

 漁陽の攻め太鼓が、大地をとどろかせて来た。驚き破られる霓裳羽衣の曲。九つ重なる城門には煙と塵が立ち昇り、一千の馬車と一万の騎兵が西南へ逃げ行く。

 翠華の御旗はゆらゆらと迷い、進んではまた止まる。都の門を西へ出て百里余り、六軍は出発せず、いかんともできない。みやびな眉の美しい人は、馬嵬の地を前に死す。花のかんざしは地にうち捨てられて、拾おうとする人はいない。かわせみの髪飾りも、金雀のかんざしも、宝玉のくしも。君王は玉顔を覆うばかりで、救おうにも救えない。振り返って見れば、血と涙が相混じって流れていた。

 黄色い砂埃は散漫として風にわびしく舞い上がり、雲上の桟橋を絶壁にまといつくようにして剣閣山を登る。峨嵋山のふもとは人の往来も少なく、色あざやかな御旗は山影で光なく、日差しの色も薄い。蜀江の水は碧緑に澄み、蜀山は青々と美しい。聖主は朝朝暮暮、亡き人への慕情に沈む。行宮から月を見れば、傷心の顔色を浮かべ、雨の夜に鈴の音を聞けば、断腸の声を上げる。

太液芙蓉、未央柳

漢文

 天 tiān 旋 xuán 地 dì 転 zhuàn 迴 huí 龍 lóng 馭 yù

 到 dào 此 cǐ 躊 chóu 躇 chú 不 bù 能 néng 去 qù

 馬 mǎ 嵬 wéi 坡 pō 下 xià 泥 ní 土 tǔ 中 zhōng

 不 bù 見 jiàn 玉 yù 顔 yán 空 kōng 死 sǐ 処 chù

 君 jūn 臣 chén 相 xiāng 顧 gù 尽 jìn 霑 zhān 衣 yī

 東 dōng 望 wàng 都 dū 門 mén 信 xìn 馬 mǎ 帰 guī

 帰 guī 来 lái 池 chí 苑 yuàn 皆 jiē 依 yī 旧 jiù

 太 tài 液 yè 芙 fú 蓉 róng 未 wèi 央 yāng 柳 liǔ

 芙 fú 蓉 róng 如 rú 面 miàn 柳 liǔ 如 rú 眉 méi

 対 duì 此 cǐ 如 rú 何 hé 不 bù 涙 lèi 垂 chuí

 春 chūn 風 fēng 桃 táo 李 lǐ 花 huā 開 kāi 日 rì

 秋 qiū 雨 yǔ 梧 wú 桐 tóng 叶 yè 落 luò 時 shí

 西 xī 宮 gōng 南 nán 苑 yuàn 多 duō 秋 qiū 草 cǎo

 落 luò 叶 yè 満 mǎn 階 jiē 紅 hóng 不 bù 掃 sǎo

 梨 lí 園 yuán 弟 dì 子 zǐ 白 bái 髪 fà 新 xīn

 椒 jiāo 房 fáng 阿 ā 監 jiān 青 qīng 娥 é 老 lǎo

 夕 xī 殿 diàn 蛍 yíng 飛 fēi 思 sī 悄 qiǎo 然 rán

 孤 gū 灯 dēng 挑 tiǎo 尽 jìn 未 wèi 成 chéng 眠 mián

 遅 chí 遅 chí 鐘 zhōng 鼓 gǔ 初 chū 長 cháng 夜 yè

 耿 gěng 耿 gěng 星 xīng 河 hé 欲 yù 曙 shǔ 天 tiān

 鴛 yuān 鴦 yāng 瓦 wǎ 冷 lěng 霜 shuāng 華 huá 重 zhòng

 翡 fěi 翠 cuì 衾 qīn 寒 hán 誰 shuí 与 yǔ 共 gòng

 悠 yōu 悠 yōu 生 shēng 死 sǐ 別 bié 経 jīng 年 nián

 魂 hún 魄 pò 不 bù 曾 céng 来 lái 入 rù 夢 mèng

 臨 lín 邛 qióng 道 dào 士 shì 鴻 hóng 都 dū 客 kè

 能 néng 以 yǐ 精 jīng 誠 chéng 致 zhì 魂 hún 魄 pò

 為 wèi 感 gǎn 君 jūn 王 wáng 展 zhǎn 転 zhuǎn 思 sī

 遂 suì 教 jiào 方 fāng 士 shì 殷 yīn 勤 qín 覓 mì

 排 pái 空 kōng 馭 yù 気 qì 奔 bēn 如 rú 電 diàn

 昇 shēng 天 tiān 入 rù 地 dì 求 qiú 之 zhī 遍 biàn

 上 shàng 窮 qióng 碧 bì 落 luò 下 xià 黄 huáng 泉 quán

 両 liǎng 処 chù 茫 máng 茫 máng 皆 jiē 不 bù 見 jiàn

書き下し文

天てん旋めぐり地ち転てんじて龍馭りゅうぎょを迴めぐらし

此ここに到いたりて躊躇ちゅうちょして去さること能あたわず

馬ば嵬かい坡はの下もと泥でい土どの中なか

玉顔ぎょくがんを見みず空むなしく死しせる処ところ

君臣くんしん相あい顧かえりみて尽ことごとく衣ころもを霑うるおす

東ひがしのかた都と門もんを望のぞみて馬うまに信まかせて帰かえる

帰かえり来きたれば池ち苑えん皆みな旧きゅうに依よる

太たい液えきの芙ふ蓉よう未び央おうの柳やなぎ

芙ふ蓉ようは面めんの如ごとく柳やなぎは眉まゆの如ごとし

此これに対たいして如何いかんぞ涙なみだ垂たれざらん

春風しゅんぷう桃とう李り花開はなひらく日ひ

秋雨しゅうう梧ご桐どう葉は落おつる時とき

西宮せいきゅう南苑なんえん秋草しゅうそう多おおく

落葉らくよう階きざはしに満みちて紅くれないを掃はらわず

梨り園えんの弟てい子し白髪はくはつ新あらたに

椒房しゅうぼうの阿あ監らん青せい娥が老おゆ

夕せき殿でんに蛍ほたる飛とびて思おもい悄しょう然ぜんたり

孤こ灯とう挑かかげ尽つくすも未いまだ眠ねむりを成なさず

遅遅ちちたる鐘しょう鼓こ初はじめて長ながき夜よる

耿耿こうこうたる星せい河が曙あけんと欲ほっする天てん

鴛鴦えんおう瓦がわらは冷ひややかにして霜そう華かは重おもく

翡ひ翠すいの衾しとねは寒さむくして誰たれとか共ともにせん

悠悠ゆうゆうたる生せい死し別わかれて年としを経へたり

魂魄こんぱく曾かつて来きたりて夢ゆめに入いらず

臨りん邛きょうの道どう士し鴻こう都との客かく

能よく精せい誠せいを以もって魂魄こんぱくを致いたす

君王くんのうの展転てんてんの思おもいに感かんずるが為ために

遂ついに方ほう士しをして殷いん勤ぎんに覓もとめしむ

空くうを排はいし気きを馭ぎょして奔はしること電いなずまの如ごとし

天てんに昇のぼり地ちに入いりて之これを求もとむること遍あまねし

上うえは碧落へきらくを窮きわめ下したは黄泉こうせん

両処りょうしょ茫茫ぼうぼうとして皆みな見みえず

現代語訳

 天はめぐり、地は転じて、龍の御車を都へと引き返す。この地に至ると歩みを躊躇して、立ち去ることができない。馬嵬の坂道の下、泥土の中、玉顔を見ず、空しく死んだところ。君臣たちも互いに回顧して、ことごとく衣を潤す。東に都の門を望み、馬に身を任せて帰る。

 都に帰り着くと、宮殿の御池も御苑もみな依然として残っている。太液池の芙蓉も、未央宮の柳も。芙蓉は亡き人の顔のごとく、柳は眉のごとし。これに対して、どうして涙が垂れないことがあろうか。春の風に桃李の花が開く日も、秋の雨に梧桐の葉が落ちる時も。西の御殿も南の御苑も秋の草が多く茂り、落ち葉はきざはしに満ちて紅を掃き清めない。梨園の芸妓は白髪が新たに、椒房の女官は青々と描いた眉が老いを引き立たせる。

 夕暮れの宮殿に蛍が飛び交い、憂いの思いにうち沈んでいる。孤灯の明かりをともし尽くすも、いまだ眠りを成さない。遅々と鳴り響く鐘鼓が告げる、秋の夜長の始まり。白々と消えゆく星の運河に、明けんと欲する天の空。鴛鴦瓦は冷ややかで、霜花は重い。翡翠のしとねは寒くして、誰と共にしようか。悠々たる生死、別れて年を経た。亡き人の魂はいまだかつて来たことがなく、夢に現れてくれない。

 臨邛の道士、鴻都の客。精神誠意の力をもってして、死者の魂とつながることができる者である。君王の夜も眠れぬ思いに共感するがために、ついに仙術をして入念に探し求めさせた。空をしりぞけ、大気を駆けて走るさまは稲妻のごとし。天に昇っては地に潜り、くまなくこれを求め、上は碧天の彼方まで達し、下は黄泉の国まで。どちらも果てしなく広がるばかりで何も見えない。

此恨綿綿無絶期

漢文

 忽 hū 聞 wén 海 hǎi 上 shàng 有 yǒu 仙 xiān 山 shān

 山 shān 在 zài 虚 xū 無 wú 縹 piāo 緲 miǎo 間 jiān

 楼 lóu 閣 gé 玲 líng 瓏 lóng 五 wǔ 雲 yún 起 qǐ

 其 qí 中 zhōng 綽 chuò 約 yuē 多 duō 仙 xiān 子 zǐ

 中 zhōng 有 yǒu 一 yī 人 rén 字 zì 太 tài 真 zhēn

 雪 xuě 膚 fū 花 huā 貌 mào 参 cēn 差 cī 是 shì

 金 jīn 闕 què 西 xī 廂 xiāng 叩 kòu 玉 yù 扃 jiōng

 転 zhuǎn 教 jiào 小 xiǎo 玉 yù 報 bào 双 shuāng 成 chéng

 聞 wén 道 dào 漢 hàn 家 jiā 天 tiān 子 zǐ 使 shǐ

 九 jiǔ 華 huá 帳 zhàng 裏 lǐ 夢 mèng 魂 hún 驚 jīng

 攬 lǎn 衣 yī 推 tuī 枕 zhěn 起 qǐ 徘 pái 徊 huái

 珠 zhū 箔 bó 銀 yín 屏 píng 邐 lǐ 迤 yǐ 開 kāi

 雲 yún 鬢 bìn 半 bàn 偏 piān 新 xīn 睡 shuì 覚 jué

 花 huā 冠 guān 不 bù 整 zhěng 下 xià 堂 táng 来 lái

 風 fēng 吹 chuī 仙 xiān 袂 mèi 飄 piāo 颻 yáo 挙 jǔ

 猶 yóu 似 sì 霓 ní 裳 cháng 羽 yǔ 衣 yī 舞 wǔ

 玉 yù 容 róng 寂 jì 寞 mò 涙 lèi 闌 lán 干 gān

 梨 lí 花 huā 一 yī 枝 zhī 春 chūn 帯 dài 雨 yǔ

 含 hán 情 qíng 凝 níng 睇 dì 謝 xiè 君 jūn 王 wáng

 一 yī 別 bié 音 yīn 容 róng 両 liǎng 眇 miǎo 茫 máng

 昭 zhāo 陽 yáng 殿 diàn 裏 lǐ 恩 ēn 愛 ài 絶 jué

 蓬 péng 萊 lái 宮 gōng 中 zhōng 日 rì 月 yuè 長 cháng

 迴 huí 頭 tóu 下 xià 望 wàng 人 rén 寰 huán 処 chù

 不 bù 見 jiàn 長 cháng 安 ān 見 jiàn 塵 chén 霧 wù

 唯 wéi 将 jiāng 旧 jiù 物 wù 表 biǎo 深 shēn 情 qíng

 鈿 diàn 合 hé 金 jīn 釵 chāi 寄 jì 将 jiāng 去 qù

 釵 chāi 留 liú 一 yī 股 gǔ 合 hé 一 yī 扇 shàn

 釵 chāi 擘 bò 黄 huáng 金 jīn 合 hé 分 fēn 鈿 diàn

 但 dàn 教 jiào 心 xīn 似 sì 金 jīn 鈿 diàn 堅 jiān

 天 tiān 上 shàng 人 rén 間 jiān 会 huì 相 xiāng 見 jiàn

 臨 lín 別 bié 殷 yīn 勤 qín 重 chóng 寄 jì 詞 cí

 詞 cí 中 zhōng 有 yǒu 誓 shì 両 liǎng 心 xīn 知 zhī

 七 qī 月 yuè 七 qī 日 rì 長 cháng 生 shēng 殿 diàn

 夜 yè 半 bàn 無 wú 人 rén 私 sī 語 yǔ 時 shí

 在 zài 天 tiān 願 yuàn 作 zuò 比 bǐ 翼 yì 鳥 niǎo

 在 zài 地 dì 願 yuàn 為 wéi 連 lián 理 lǐ 枝 zhī

 天 tiān 長 cháng 地 dì 久 jiǔ 有 yǒu 時 shí 尽 jìn

 此 cǐ 恨 hèn 綿 mián 綿 mián 無 wú 絶 jué 期 qī

書き下し文

忽たちまち聞きく海上かいじょうに仙山せんざん有ありと

山やまは虚きょ無む縹緲ひょうびょうの間かんに在あり

楼閣ろうかく玲瓏れいろうとして五ご雲うん起おこり

其その中なかに綽約しゃくやくとして仙せん子し多おおし

中なかに一人ひとり有あり字あざなは太真たいしん

雪ゆきの膚はだ花はなの貌かんばせ参しん差しとして是これなり

金闕きんけつの西廂せいしょうに玉扃ぎょっけいを叩たたき

転てんじて小玉しょうぎょくをして双成そうせいに報ほうぜしむ

聞道きくならく漢かん家かの天てん子しの使つかいと

九華きゅうかの帳裏ちょうり夢む魂こん驚おどろく

衣ころもを攬とり枕まくらを推おし起たちて徘徊はいかいす

珠箔しゅはく銀屛ぎんぺい邐迤りいとして開ひらく

雲うん鬢びん半なかば偏くたれて新あらたに睡ねむり覚さむ

花か冠かん整ととのえず堂どうを下おりて来きたる

風かぜは仙せん袂べいを吹ふきて飄颻ひょうようとして挙あがる

猶なほ似にたり霓げい裳しょう羽衣ういの舞まい

玉ぎょく容よう寂寞せきばくとして涙なみだ闌らん干かんたり

梨花りか一枝いっし春雨はるあめを帯おぶ

情じょうを含ふくみみ睇ひとみを凝こらして君王くんのうに謝しゃす

一ひとたび別わかれしより音容おんよう両ふたつながら眇茫びょうぼうたり

昭しょう陽よう殿でん裏り恩愛おんあい絶たえ

蓬萊ほうらい宮中きゅうちゅう日月じつげつ長ながし

頭こうべを迴めぐらして人寰じんかんの処ところを下したに望のぞめば

長安ちょうあんは見みえず塵じん霧むを見みる

唯ただ旧物きゅうぶつを将もって深情しんじょうを表あらわさん

鈿合でんごう金釵きんさい寄よせ将もち去さらしむ

釵さいは一いっ股こを留とどめて合ごうは一いっ扇せん

釵さいは黄金おうごんを擘さき合ごうは鈿でんを分わかつ

但ただ心こころをして金鈿きんでんの堅かたきに似にせしむれば

天上てんじょう人間じんかん会かならず相あい見まみえんと

別わかれに臨のぞんで殷いん勤ぎんに重かさねて詞ことばを寄よす

詞ことばの中なかに誓ちかい有あり両心りょうしんのみ知しる

七月しちがつ七日なのか長生ちょうせい殿でん

夜や半はん人ひと無なく私語しごの時とき

天てんに在ありては願ねがわくは比ひ翼よくの鳥とりと作なり

地ちに在ありては願ねがわくは連れん理りの枝えだと為ならんと

天てん長ながく地ち久ひさしきも時とき有ありて尽つきん

此この恨うらみ綿綿めんめんとして絶たえる期き無なからん

現代語訳

 たちまちに聞く、海上に仙女が住む山があると。山は虚無に霞んだ空間にあり、楼閣は宝石のように透明な輝きをまとい、五色の雲が立ちこめている。その中に、しなやかで美しい仙女多し。中に一人あり、字は太真。雪のように白い肌、華やかな容貌、ほとんど差がなくまさにこの方である。黄金の門をくぐり、西の廂へ進み、玉の扉をたたくと、小玉に取り次がせて双成へと知らせる。漢家の天子の使いであると聞くと、九華の花模様のとばりの中で夢を見ていた魂が、驚いて目を覚ます。

 衣を手に取り、枕を押すようにして起き上がると、とまどい足踏みする。心珠のすだれ、銀の屏風がするすると開く。雲のように豊かな髪は一方に偏り、新たに眠りから覚めたばかりの姿で、花冠も整えずに堂を下りて来た。風が仙女のたもとを吹き上げて、ひらひらと舞い上がる。まさに似ている、霓裳羽衣の舞に。玉のような顔つきは寂寞として、涙がはらはらと流れ落ちる。梨の花の一枝が、春の雨を帯びるように。

 情を含めて、ひとみを凝らして道士を見つめ、君王への感謝の言葉を告げる。

「一たびお別れしてから、御声も御姿も両方ともぼんやりとしていました。昭陽殿の中で賜った恩愛は絶えて、蓬萊宮の中で過ごす年月は長く感じられます。頭をめぐらせて人の世を下に眺めれば、長安は見えず、塵の霧が見えるばかりです。ただ、形見の遺品を頼りに、深い愛情を表したく存じます。螺鈿の小箱と、金のかんざしをお持ち帰りください。かんざしは一本を手元に留めて、小箱は一箱を。かんざしは黄金を割き、小箱は螺鈿を分けて、ただ二人の心を黄金と螺鈿のように堅く契れば、天上界でも人間界でも必ず、お互いに相いまみえるでしょう」

 別れに臨んで、ねんごろに重ねて詞を寄せる。詞の中に誓いあり、それは二人の心のみ知ること。七月七日、長生殿、夜半に人はなく、ささやき声で語る時。

「天にあっては、願わくは比翼の鳥となり、地にあっては、願わくは連理の枝となりましょう」

 天は長く、地は悠久であるも、時は有限であり、いつかは尽きる。この悲しみは綿々と続き、絶えることはないだろう。

【全文】白居易『長恨歌』現代語訳

 漢の皇帝は女色を重んじて、国を傾けるほどの美女を望んでいた。しかし御治世の多年、どれだけ探し求めても得られなかった。

 楊家に娘あり、成人したばかりである。奥の部屋で大切に育てられていたため、人はまだ誰も知らない。天生の麗しい素質はおのずから捨てがたく、一朝に選ばれて君王のそばに仕える身となった。瞳をめぐらせて一たび微笑めば、百の愛嬌が生まれる。六宮の華やかに装う美女たちも、色気を無くしてしまう。

 春はまだ寒くして、湯浴を賜わる華清の池。温泉の水はなめらかで、つややかな白い肌を洗う。侍女が支え起こすも、なまめかしく力なくゆらめく。初めてこれ新たに、帝の寵愛を承った時であった。雲のように豊かなびん髪、花のように美しい顔つき、歩けば揺れる金の髪飾り。芙蓉のとばりは暖かく、春の宵を過ごす。春の宵は苦しいほどに短くて、日が高くなってようやく起きた。これより君王、早朝のまつりごとを怠る。

 帝の歓心を承り、宴席にもそばでお仕えして閑暇なし。春は春の御遊びに付き従い、夜は夜のお供を専らに付き添う。後宮の華麗な美女たち三千人、三千の寵愛が一身にあり。金の御殿ではおめかしして艶やかに夜を興じ、玉の楼殿では宴を抜け出して酔いと春の気に調和する。

 姉妹兄弟みな領土を賜り、誰もがうらやむ光彩なる一門が誕生した。ついに天下の父母の心は、男子を生むことを重んぜず、女子を生むことを重んずるようになった。

 驪宮は高いところ、青雲に入る。仙楽の音は風に乗り、あちらこちらで聞こえる。緩やかに歌い、ゆったりと舞い、管絃の音を情緒たっぷりに奏でて、一日を尽くしても君王は飽き足らない。

 漁陽の攻め太鼓が、大地をとどろかせて来た。驚き破られる霓裳羽衣の曲。九つ重なる城門には煙と塵が立ち昇り、一千の馬車と一万の騎兵が西南へ逃げ行く。

 翠華の御旗はゆらゆらと迷い、進んではまた止まる。都の門を西へ出て百里余り、六軍は出発せず、いかんともできない。みやびな眉の美しい人は、馬嵬の地を前に死す。花のかんざしは地にうち捨てられて、拾おうとする人はいない。かわせみの髪飾りも、金雀のかんざしも、宝玉のくしも。君王は玉顔を覆うばかりで、救おうにも救えない。振り返って見れば、血と涙が相混じって流れていた。

 黄色い砂埃は散漫として風にわびしく舞い上がり、雲上の桟橋を絶壁にまといつくようにして剣閣山を登る。峨嵋山のふもとは人の往来も少なく、色あざやかな御旗は山影で光なく、日差しの色も薄い。蜀江の水は碧緑に澄み、蜀山は青々と美しい。聖主は朝朝暮暮、亡き人への慕情に沈む。行宮から月を見れば、傷心の顔色を浮かべ、雨の夜に鈴の音を聞けば、断腸の声を上げる。

 天はめぐり、地は転じて、龍の御車を都へと引き返す。この地に至ると歩みを躊躇して、立ち去ることができない。馬嵬の坂道の下、泥土の中、玉顔を見ず、空しく死んだところ。君臣たちも互いに回顧して、ことごとく衣を潤す。東に都の門を望み、馬に身を任せて帰る。

 都に帰り着くと、宮殿の御池も御苑もみな依然として残っている。太液池の芙蓉も、未央宮の柳も。芙蓉は亡き人の顔のごとく、柳は眉のごとし。これに対して、どうして涙が垂れないことがあろうか。春の風に桃李の花が開く日も、秋の雨に梧桐の葉が落ちる時も。西の御殿も南の御苑も秋の草が多く茂り、落ち葉はきざはしに満ちて紅を掃き清めない。梨園の芸妓は白髪が新たに、椒房の女官は青々と描いた眉が老いを引き立たせる。

 夕暮れの宮殿に蛍が飛び交い、憂いの思いにうち沈んでいる。孤灯の明かりをともし尽くすも、いまだ眠りを成さない。遅々と鳴り響く鐘鼓が告げる、秋の夜長の始まり。白々と消えゆく星の運河に、明けんと欲する天の空。鴛鴦瓦は冷ややかで、霜花は重い。翡翠のしとねは寒くして、誰と共にしようか。悠々たる生死、別れて年を経た。亡き人の魂はいまだかつて来たことがなく、夢に現れてくれない。

 臨邛の道士、鴻都の客。精神誠意の力をもってして、死者の魂とつながることができる者である。君王の夜も眠れぬ思いに共感するがために、ついに仙術をして入念に探し求めさせた。空をしりぞけ、大気を駆けて走るさまは稲妻のごとし。天に昇っては地に潜り、くまなくこれを求め、上は碧天の彼方まで達し、下は黄泉の国まで。どちらも果てしなく広がるばかりで何も見えない。

 たちまちに聞く、海上に仙女が住む山があると。山は虚無に霞んだ空間にあり、楼閣は宝石のように透明な輝きをまとい、五色の雲が立ちこめている。その中に、しなやかで美しい仙女多し。中に一人あり、字は太真。雪のように白い肌、華やかな容貌、ほとんど差がなくまさにこの方である。黄金の門をくぐり、西の廂へ進み、玉の扉をたたくと、小玉に取り次がせて双成へと知らせる。漢家の天子の使いであると聞くと、九華の花模様のとばりの中で夢を見ていた魂が、驚いて目を覚ます。

 衣を手に取り、枕を押すようにして起き上がると、とまどい足踏みする。心珠のすだれ、銀の屏風がするすると開く。雲のように豊かな髪は一方に偏り、新たに眠りから覚めたばかりの姿で、花冠も整えずに堂を下りて来た。風が仙女のたもとを吹き上げて、ひらひらと舞い上がる。まさに似ている、霓裳羽衣の舞に。玉のような顔つきは寂寞として、涙がはらはらと流れ落ちる。梨の花の一枝が、春の雨を帯びるように。

 情を含めて、ひとみを凝らして道士を見つめ、君王への感謝の言葉を告げる。

「一たびお別れしてから、御声も御姿も両方ともぼんやりとしていました。昭陽殿の中で賜った恩愛は絶えて、蓬萊宮の中で過ごす年月は長く感じられます。頭をめぐらせて人の世を下に眺めれば、長安は見えず、塵の霧が見えるばかりです。ただ、形見の遺品を頼りに、深い愛情を表したく存じます。螺鈿の小箱と、金のかんざしをお持ち帰りください。かんざしは一本を手元に留めて、小箱は一箱を。かんざしは黄金を割き、小箱は螺鈿を分けて、ただ二人の心を黄金と螺鈿のように堅く契れば、天上界でも人間界でも必ず、お互いに相いまみえるでしょう」

 別れに臨んで、ねんごろに重ねて詞を寄せる。詞の中に誓いあり、それは二人の心のみ知ること。七月七日、長生殿、夜半に人はなく、ささやき声で語る時。

「天にあっては、願わくは比翼の鳥となり、地にあっては、願わくは連理の枝となりましょう」

 天は長く、地は悠久であるも、時は有限であり、いつかは尽きる。この悲しみは綿々と続き、絶えることはないだろう。

【全文】白居易『長恨歌』の原文と書き下し文

 長 cháng 恨 hèn 歌 gē 長ちょう恨ごん歌か
 漢 hàn 皇 huáng 重 zhòng 色 sè 思 sī 傾 qīng 国 guó 漢皇かんこう色いろを重おもんじて傾国けいこくを思おもう
 御 yù 宇 yǔ 多 duō 年 nián 求 qiú 不 bù 得 dé 御宇ぎょう多た年ねん求もとむれども得えず
 楊 yáng 家 jiā 有 yǒu 女 nǚ 初 chū 長 zhǎng 成 chéng 楊よう家かに女むすめ有あり初はじめて長成ちょうせいす
 養 yǎng 在 zài 深 shēn 閨 guī 人 rén 未 wèi 識 shí 養やしなわれて深閨しんけいに在あれば人ひと未いまだ識しらず
 天 tiān 生 shēng 麗 lì 質 zhì 難 nán 自 zì 棄 qì 天生てんせいの麗質れいしつは自おのずから棄すて難がたく
 一 yī 朝 zhāo 選 xuǎn 在 zài 君 jūn 王 wáng 側 cè 一朝いっちょうに選えらばれて君王くんのうの側かたわらに在あり
迴 huí 眸 móu 一 yī 笑 xiào 百 bǎi 媚 mèi 生 shēng 眸ひとみを迴めぐらして一ひとたび笑わらえば百ひゃくの媚こび生しょうじ
 六 liù 宮 gōng 粉 fěn 黛 dài 無 wú 顔 yán 色 sè 六宮りっきゅうの粉黛ふんたいは顔色がんしょく無なし
 春 chūn 寒 hán 賜 cì 浴 yù 華 huá 清 qīng 池 chí 春寒はるさむくして浴よくを賜たまわる華か清せいの池いけ
 温 wēn 泉 quán 水 shuǐ 滑 huá 洗 xǐ 凝 níng 脂 zhī 温泉おんせん水みず滑なめらかにして凝脂ぎょうしを洗あらう
 侍 shì 児 ér 扶 fú 起 qǐ 嬌 jiāo 無 wú 力 lì 侍児じじ扶たすけ起おこすも嬌きょうとして力ちから無なし
 始 shǐ 是 shì 新 xīn 承 chéng 恩 ēn 澤 zé 時 shí 始はじめて是これ新あらたに恩沢おんたくを承うけし時ときなり
 雲 yún 鬢 bìn 花 huā 顔 yán 金 jīn 歩 bù 揺 yáo 雲鬢うんびん花か顔がん金きん歩ほ揺よう
 芙 fú 蓉 róng 帳 zhàng 暖 nuǎn 度 dù 春 chūn 宵 xiāo 芙ふ蓉ようの帳とばりは暖あたたかくして春宵しゅんしょうを度わたる
 春 chūn 宵 xiāo 苦 kǔ 短 duǎn 日 rì 高 gāo 起 qǐ 春宵しゅんしょう苦はなはだ短みじかくて日ひ高たかくして起おく
 従 cóng 此 cǐ 君 jūn 王 wáng 不 bù 早 zǎo 朝 cháo 此これ従より君王くんのう早朝そうちょうせず
 承 chéng 歓 huān 侍 shì 宴 yàn 無 wú 閑 xián 暇 xiá 歓かんを承うけ宴えんに侍じして閑かん暇か無なし
 春 chūn 従 cóng 春 chūn 遊 yóu 夜 yè 専 zhuān 夜 yè 春はるは春はるの遊あそびに従したがい夜よるは夜よるを専もっぱらにす
 後 hòu 宮 gōng 佳 jiā 麗 lì 三 sān 千 qiān 人 rén 後宮こうきゅうの佳か麗れい三千人さんぜんにん
 三 sān 千 qiān 寵 chǒng 愛 ài 在 zài 一 yī 身 shēn 三千さんぜんの寵愛ちょうあい一身いっしんに在あり
 金 jīn 屋 wū 粧 zhuāng 成 chéng 嬌 jiāo 侍 shì 夜 yè 金きん屋おく粧よそおい成なりて嬌きょうとして夜よるに侍じし
 玉 yù 楼 lóu 宴 yàn 罷 bà 酔 zuì 和 hé 春 chūn 玉楼ぎょくろう宴えん罷やみて酔よひて春はるに和わす
 姉 zǐ 妹 mèi 弟 dì 兄 xiōng 皆 jiē 列 liè 土 tǔ 姉妹しまい弟兄ていけい皆みな土どに列れっす
 可 kě 憐 lián 光 guāng 彩 cǎi 生 shēng 門 mén 戸 hù 憐あわれむ可べし光彩こうさい門もん戸こに生しょうず
 遂 suì 令 lìng 天 tiān 下 xià 父 fù 母 mǔ 心 xīn 遂ついに天てん下かの父母ふぼの心こころをして
 不 bù 重 zhòng 生 shēng 男 nán 重 zhòng 生 shēng 女 nǚ 男おとこを生うむを重おもんぜず女おんなを生うむを重おもんぜしむ
 驪 lí 宮 gōng 高 gāo 処 chù 入 rù 青 qīng 雲 yún 驪宮りきゅう高たかき処ところ青雲せいうんに入いる
 仙 xiān 楽 yuè 風 fēng 飄 piāo 処 chù 処 chù 聞 wén 仙楽せんがく風かぜに飄ひるがえりて処処しょしょに聞きこゆ
 緩 huǎn 歌 gē 慢 màn 舞 wǔ 凝 níng 糸 sī 竹 zhú 緩かん歌か縵まん舞ぶ糸し竹ちくを凝こらし
 尽 jìn 日 rì 君 jūn 王 wáng 看 kàn 不 bù 足 zú 尽日じんじつ君王くんのう看みれども足たりず
 漁 yú 陽 yáng 鼙 pí 鼓 gǔ 動 dòng 地 dì 来 lái 漁陽ぎょようの鼙へい鼓こ地ちを動うごかして来きたり
 驚 jīng 破 pò 霓 ní 裳 cháng 羽 yǔ 衣 yī 曲 qǔ 驚破きょうはす霓裳げいしょう羽衣ういの曲きょく
 九 jiǔ 重 chóng 城 chéng 闕 què 煙 yān 塵 chén 生 shēng 九重きゅうちょうの城闕じょうけつに煙塵えんじん生しょうじ
 千 qiān 乗 shèng 万 wàn 騎 qí 西 xī 南 nán 行 xíng 千乗せんじょう万ばん騎き西南せいなんに行ゆく
 翠 cuì 華 huá 揺 yáo 揺 yáo 行 xíng 復 fù 止 zhǐ 翠すい華か揺揺ようようとして行ゆきて復また止とまる
 西 xī 出 chū 都 dū 門 mén 百 bǎi 余 yú 里 lǐ 西にしのかた都と門もんを出いでて百ひゃく余里より
 六 liù 軍 jūn 不 bù 発 fā 無 wú 奈 nài 何 hé 六軍りくぐん発はっせず奈何いかんともする無なく
 宛 wǎn 転 zhuǎn 娥 é 眉 méi 馬 mǎ 前 qián 死 sǐ 宛転えんてんたる娥眉がび馬ば前ぜんに死しす
 花 huā 鈿 diàn 委 wěi 地 dì 無 wú 人 rén 收 shōu 花か鈿でん地ちに委ゆだねられて人ひとの収おさむる無なし
 翠 cuì 翹 qiào 金 jīn 雀 què 玉 yù 搔 sāo 頭 tóu 翠翹すいぎょう金雀きんじゃく玉搔頭ぎょくそうとう
 君 jūn 王 wáng 掩 yǎn 面 miàn 救 jiù 不 bù 得 dé 君王くんのう面めんを掩おおいて救すくい得えず
 迴 huí 看 kàn 血 xuè 涙 lèi 相 xiāng 和 hé 流 liú 迴かえり看みれば血涙けつるい相あい和わして流ながる
 黄 huáng 埃 āi 散 sǎn 漫 màn 風 fēng 蕭 xiāo 索 suǒ 黄埃こうあい散漫さんまんとして風かぜ蕭索しょうさくたり
 雲 yún 桟 zhàn 縈 yíng 紆 yū 登 dēng 剣 jiàn 閣 gé 雲桟うんさん縈えい紆うして剣閣けんかくに登のぼる
 峨 é 嵋 méi 山 shān 下 xià 少 shǎo 人 rén 行 xíng 峨嵋がび山さん下か人ひとの行ゆくこと少すくなく
 旌 jīng 旗 qí 無 wú 光 guāng 日 rì 色 sè 薄 bó 旌せい旗き光ひかり無なく日色にっしょく薄うすし
 蜀 shǔ 江 jiāng 水 shuǐ 碧 bì 蜀 shǔ 山 shān 青 qīng 蜀江しょくこう水みず碧みどりにして蜀山しょくざん青あおし
 聖 shèng 主 zhǔ 朝 zhāo 朝 zhāo 暮 mù 暮 mù 情 qíng 聖主せいしゅ朝朝ちょうちょう暮暮ぼぼの情じょう
 行 xíng 宮 gōng 見 jiàn 月 yuè 傷 shāng 心 xīn 色 sè 行宮あんぐうに月つきを見みれば傷心しょうしんの色いろ
 夜 yè 雨 yǔ 聞 wén 鈴 líng 腸 cháng 断 duàn 声 shēng 夜雨やうに鈴すずを聞きけば腸ちょうの断たたれる声こえ
 天 tiān 旋 xuán 地 dì 転 zhuàn 迴 huí 龍 lóng 馭 yù 天てん旋めぐり地ち転てんじて龍馭りゅうぎょを迴めぐらし
 到 dào 此 cǐ 躊 chóu 躇 chú 不 bù 能 néng 去 qù 此ここに到いたりて躊躇ちゅうちょして去さること能あたわず
 馬 mǎ 嵬 wéi 坡 pō 下 xià 泥 ní 土 tǔ 中 zhōng 馬ば嵬かい坡はの下もと泥でい土どの中なか
 不 bù 見 jiàn 玉 yù 顔 yán 空 kōng 死 sǐ 処 chù 玉顔ぎょくがんを見みず空むなしく死しせる処ところ
 君 jūn 臣 chén 相 xiāng 顧 gù 尽 jìn 霑 zhān 衣 yī 君臣くんしん相あい顧かえりみて尽ことごとく衣ころもを霑うるおす
 東 dōng 望 wàng 都 dū 門 mén 信 xìn 馬 mǎ 帰 guī 東ひがしのかた都と門もんを望のぞみて馬うまに信まかせて帰かえる
 帰 guī 来 lái 池 chí 苑 yuàn 皆 jiē 依 yī 旧 jiù 帰かえり来きたれば池ち苑えん皆みな旧きゅうに依よる
 太 tài 液 yè 芙 fú 蓉 róng 未 wèi 央 yāng 柳 liǔ 太たい液えきの芙ふ蓉よう未び央おうの柳やなぎ
 芙 fú 蓉 róng 如 rú 面 miàn 柳 liǔ 如 rú 眉 méi 芙ふ蓉ようは面めんの如ごとく柳やなぎは眉まゆの如ごとし
 対 duì 此 cǐ 如 rú 何 hé 不 bù 涙 lèi 垂 chuí 此これに対たいして如何いかんぞ涙なみだ垂たれざらん
 春 chūn 風 fēng 桃 táo 李 lǐ 花 huā 開 kāi 日 rì 春風しゅんぷう桃とう李り花開はなひらく日ひ
 秋 qiū 雨 yǔ 梧 wú 桐 tóng 叶 yè 落 luò 時 shí 秋雨しゅうう梧ご桐どう葉は落おつる時とき
 西 xī 宮 gōng 南 nán 苑 yuàn 多 duō 秋 qiū 草 cǎo 西宮せいきゅう南苑なんえん秋草しゅうそう多おおく
 落 luò 叶 yè 満 mǎn 階 jiē 紅 hóng 不 bù 掃 sǎo 落葉らくよう階きざはしに満みちて紅くれないを掃はらわず
 梨 lí 園 yuán 弟 dì 子 zǐ 白 bái 髪 fà 新 xīn 梨り園えんの弟てい子し白髪はくはつ新あらたに
 椒 jiāo 房 fáng 阿 ā 監 jiān 青 qīng 娥 é 老 lǎo 椒房しゅうぼうの阿あ監らん青せい娥が老おゆ
 夕 xī 殿 diàn 蛍 yíng 飛 fēi 思 sī 悄 qiǎo 然 rán 夕せき殿でんに蛍ほたる飛とびて思おもい悄しょう然ぜんたり
 孤 gū 灯 dēng 挑 tiǎo 尽 jìn 未 wèi 成 chéng 眠 mián 孤こ灯とう挑かかげ尽つくすも未いまだ眠ねむりを成なさず
 遅 chí 遅 chí 鐘 zhōng 鼓 gǔ 初 chū 長 cháng 夜 yè 遅遅ちちたる鐘しょう鼓こ初はじめて長ながき夜よる
 耿 gěng 耿 gěng 星 xīng 河 hé 欲 yù 曙 shǔ 天 tiān 耿耿こうこうたる星せい河が曙あけんと欲ほっする天てん
 鴛 yuān 鴦 yāng 瓦 wǎ 冷 lěng 霜 shuāng 華 huá 重 zhòng 鴛鴦えんおう瓦がわらは冷ひややかにして霜そう華かは重おもく
 翡 fěi 翠 cuì 衾 qīn 寒 hán 誰 shuí 与 yǔ 共 gòng 翡ひ翠すいの衾しとねは寒さむくして誰たれとか共ともにせん
 悠 yōu 悠 yōu 生 shēng 死 sǐ 別 bié 経 jīng 年 nián 悠悠ゆうゆうたる生せい死し別わかれて年としを経へたり
 魂 hún 魄 pò 不 bù 曾 céng 来 lái 入 rù 夢 mèng 魂魄こんぱく曾かつて来きたりて夢ゆめに入いらず
 臨 lín 邛 qióng 道 dào 士 shì 鴻 hóng 都 dū 客 kè 臨邛りんきょうの道どう士し鴻こう都との客かく
 能 néng 以 yǐ 精 jīng 誠 chéng 致 zhì 魂 hún 魄 pò 能よく精せい誠せいを以もって魂魄こんぱくを致いたす
 為 wèi 感 gǎn 君 jūn 王 wáng 展 zhǎn 転 zhuǎn 思 sī 君王くんのうの展転てんてんの思おもいに感かんずるが為ために
 遂 suì 教 jiào 方 fāng 士 shì 殷 yīn 勤 qín 覓 mì 遂ついに方ほう士しをして殷いん勤ぎんに覓もとめしむ
 排 pái 空 kōng 馭 yù 気 qì 奔 bēn 如 rú 電 diàn 空くうを排はいし気きを馭ぎょして奔はしること電いなずまの如ごとし
 昇 shēng 天 tiān 入 rù 地 dì 求 qiú 之 zhī 遍 biàn 天てんに昇のぼり地ちに入いりて之これを求もとむること遍あまねし
 上 shàng 窮 qióng 碧 bì 落 luò 下 xià 黄 huáng 泉 quán 上うえは碧落へきらくを窮きわめ下したは黄泉こうせん
 両 liǎng 処 chù 茫 máng 茫 máng 皆 jiē 不 bù 見 jiàn 両処りょうしょ茫茫ぼうぼうとして皆みな見みえず
 忽 hū 聞 wén 海 hǎi 上 shàng 有 yǒu 仙 xiān 山 shān 忽たちまち聞きく海上かいじょうに仙山せんざん有ありと
 山 shān 在 zài 虚 xū 無 wú 縹 piāo 緲 miǎo 間 jiān 山やまは虚きょ無む縹緲ひょうびょうの間かんに在あり
 楼 lóu 閣 gé 玲 líng 瓏 lóng 五 wǔ 雲 yún 起 qǐ 楼閣ろうかく玲瓏れいろうとして五ご雲うん起おこり
 其 qí 中 zhōng 綽 chuò 約 yuē 多 duō 仙 xiān 子 zǐ 其その中なかに綽約しゃくやくとして仙せん子し多おおし
 中 zhōng 有 yǒu 一 yī 人 rén 字 zì 太 tài 真 zhēn 中なかに一人ひとり有あり字あざなは太真たいしん
 雪 xuě 膚 fū 花 huā 貌 mào 参 cēn 差 cī 是 shì 雪ゆきの膚はだ花はなの貌かんばせ参しん差しとして是これなり
 金 jīn 闕 què 西 xī 廂 xiāng 叩 kòu 玉 yù 扃 jiōng 金闕きんけつの西廂せいしょうに玉扃ぎょっけいを叩たたき
 転 zhuǎn 教 jiào 小 xiǎo 玉 yù 報 bào 双 shuāng 成 chéng 転てんじて小玉しょうぎょくをして双成そうせいに報ほうぜしむ
 聞 wén 道 dào 漢 hàn 家 jiā 天 tiān 子 zǐ 使 shǐ 聞道きくならく漢かん家かの天てん子しの使つかいと
 九 jiǔ 華 huá 帳 zhàng 裏 lǐ 夢 mèng 魂 hún 驚 jīng 九華きゅうかの帳裏ちょうり夢む魂こん驚おどろく
 攬 lǎn 衣 yī 推 tuī 枕 zhěn 起 qǐ 徘 pái 徊 huái 衣ころもを攬とり枕まくらを推おし起たちて徘徊はいかいす
 珠 zhū 箔 bó 銀 yín 屏 píng 邐 lǐ 迤 yǐ 開 kāi 珠箔しゅはく銀屛ぎんぺい邐迤りいとして開ひらく
 雲 yún 鬢 bìn 半 bàn 偏 piān 新 xīn 睡 shuì 覚 jué 雲うん鬢びん半なかば偏くたれて新あらたに睡ねむり覚さむ
 花 huā 冠 guān 不 bù 整 zhěng 下 xià 堂 táng 来 lái 花か冠かん整ととのえず堂どうを下おりて来きたる
 風 fēng 吹 chuī 仙 xiān 袂 mèi 飄 piāo 颻 yáo 挙 jǔ 風かぜは仙せん袂べいを吹ふきて飄颻ひょうようとして挙あがる
 猶 yóu 似 sì 霓 ní 裳 cháng 羽 yǔ 衣 yī 舞 wǔ 猶なほ似にたり霓げい裳しょう羽衣ういの舞まい
 玉 yù 容 róng 寂 jì 寞 mò 涙 lèi 闌 lán 干 gān 玉ぎょく容よう寂寞せきばくとして涙なみだ闌らん干かんたり
 梨 lí 花 huā 一 yī 枝 zhī 春 chūn 帯 dài 雨 yǔ 梨花りか一枝いっし春雨はるあめを帯おぶ
 含 hán 情 qíng 凝 níng 睇 dì 謝 xiè 君 jūn 王 wáng 情じょうを含ふくみみ睇ひとみを凝こらして君王くんのうに謝しゃす
 一 yī 別 bié 音 yīn 容 róng 両 liǎng 眇 miǎo 茫 máng 一ひとたび別わかれしより音容おんよう両ふたつながら眇茫びょうぼうたり
 昭 zhāo 陽 yáng 殿 diàn 裏 lǐ 恩 ēn 愛 ài 絶 jué 昭しょう陽よう殿でん裏り恩愛おんあい絶たえ
 蓬 péng 萊 lái 宮 gōng 中 zhōng 日 rì 月 yuè 長 cháng 蓬萊ほうらい宮中きゅうちゅう日月じつげつ長ながし
 迴 huí 頭 tóu 下 xià 望 wàng 人 rén 寰 huán 処 chù 頭こうべを迴めぐらして人寰じんかんの処ところを下したに望のぞめば
 不 bù 見 jiàn 長 cháng 安 ān 見 jiàn 塵 chén 霧 wù 長安ちょうあんは見みえず塵じん霧むを見みる
 唯 wéi 将 jiāng 旧 jiù 物 wù 表 biǎo 深 shēn 情 qíng 唯ただ旧物きゅうぶつを将もって深情しんじょうを表あらわさん
 鈿 diàn 合 hé 金 jīn 釵 chāi 寄 jì 将 jiāng 去 qù 鈿合でんごう金釵きんさい寄よせ将もち去さらしむ
 釵 chāi 留 liú 一 yī 股 gǔ 合 hé 一 yī 扇 shàn 釵さいは一いっ股こを留とどめて合ごうは一いっ扇せん
 釵 chāi 擘 bò 黄 huáng 金 jīn 合 hé 分 fēn 鈿 diàn 釵さいは黄金おうごんを擘さき合ごうは鈿でんを分わかつ
 但 dàn 教 jiào 心 xīn 似 sì 金 jīn 鈿 diàn 堅 jiān 但ただ心こころをして金鈿きんでんの堅かたきに似にせしむれば
 天 tiān 上 shàng 人 rén 間 jiān 会 huì 相 xiāng 見 jiàn 天上てんじょう人間じんかん会かならず相あい見まみえんと
 臨 lín 別 bié 殷 yīn 勤 qín 重 chóng 寄 jì 詞 cí 別わかれに臨のぞんで殷いん勤ぎんに重かさねて詞ことばを寄よす
 詞 cí 中 zhōng 有 yǒu 誓 shì 両 liǎng 心 xīn 知 zhī 詞ことばの中なかに誓ちかい有あり両心りょうしんのみ知しる
 七 qī 月 yuè 七 qī 日 rì 長 cháng 生 shēng 殿 diàn 七月しちがつ七日なのか長生ちょうせい殿でん
 夜 yè 半 bàn 無 wú 人 rén 私 sī 語 yǔ 時 shí 夜や半はん人ひと無なく私語しごの時とき
 在 zài 天 tiān 願 yuàn 作 zuò 比 bǐ 翼 yì 鳥 niǎo 天てんに在ありては願ねがわくは比ひ翼よくの鳥とりと作なり
 在 zài 地 dì 願 yuàn 為 wéi 連 lián 理 lǐ 枝 zhī 地ちに在ありては願ねがわくは連れん理りの枝えだと為ならんと
 天 tiān 長 cháng 地 dì 久 jiǔ 有 yǒu 時 shí 尽 jìn 天てん長ながく地ち久ひさしきも時とき有ありて尽つきん
 此 cǐ 恨 hèn 綿 mián 綿 mián 無 wú 絶 jué 期 qī 此この恨うらみ綿綿めんめんとして絶たえる期き無なからん
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