このページでは、『平家物語』の「木曽の最期」について、原文の品詞分解と敬語表現をまとめています。現代語訳とあわせて確認したい方は、平家物語「木曽の最期」現代語訳をご覧ください。
目次
「木曽の最期」の品詞分解(1)木曽殿は信濃より
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木曽殿は信濃より、巴、山吹とて
- 木曽殿:名詞。木曽義仲。
- は:係助詞。
- 信濃:名詞。
- より:格助詞。起点。~から。
- 巴:名詞。
- 山吹:名詞。
- とて:格助詞。名称・引用を示す。ここでは「~という」の意。
二人の便女を具せられたり。
- 二人:名詞。
- の:格助詞。
- 便女:名詞。武将の身辺に仕える女性。
- を:格助詞。
- 具せ:サ行変格活用「具す」の未然形。連れる。
- られ:尊敬の助動詞「らる」の連用形。木曽殿への敬意。
- たり:存続の助動詞「たり」の終止形。「連れておられた」の意。
山吹は労りあって都にとどまりぬ。
- 山吹:名詞。
- は:係助詞。
- 労り:名詞。病気。
- あっ:ラ行変格活用「あり」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- 都:名詞。
- に:格助詞。
- とどまり:ラ行四段活用「とどまる」の連用形。
- ぬ:完了の助動詞「ぬ」の終止形。「とどまった」の意。
中にも巴は、色白く髪長く、
- 中:名詞。
- に:格助詞。
- も:係助詞。
- 巴:名詞。
- は:係助詞。
- 色白く:ク活用の形容詞「色白し」の連用形。
- 髪長く:ク活用の形容詞「髪長し」の連用形。
容顔まことにすぐれたり。
- 容顔:名詞。顔立ち。
- まことに:副詞。実に。
- すぐれ:ラ行下二段活用「すぐる」の連用形。
- たり:存続の助動詞「たり」の終止形。
ありがたき強弓、精兵、馬の上、かちだち、
- ありがたき:ク活用の形容詞「ありがたし」の連体形。めったにないほど優れている。
- 強弓:名詞。強い弓を引く弓の名手。
- 精兵:名詞。選り抜きの武者。
- 馬:名詞。
- の:格助詞。
- 上:名詞。ここでは馬上。
- かちだち:名詞。徒歩で戦うこと。
打ち物もっては鬼にも神にも
- 打ち物:名詞。太刀・薙刀などの武器。
- もっ:タ行四段活用「持つ」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- は:係助詞。
- 鬼:名詞。
- に:格助詞。
- も:係助詞。
- 神:名詞。
- に:格助詞。
- も:係助詞。
あはうどいふ一人当千の兵なり。
- あは:ハ行四段活用「あふ」の未然形。立ち向かう。
- う:推量の助動詞「む」の音便形・終止形。ここでは意志。「立ち向かおう」。
- ど:格助詞「と」が濁音化した形。引用。
- いふ:ハ行四段活用「いふ」の連体形。
- 一人当千:名詞。一人で千人に当たるほど強いこと。
- の:格助詞。
- 兵:名詞。武者。
- なり:断定の助動詞「なり」の終止形。
究竟の荒馬乗り、悪所落とし、戦といへば、
- 究竟:名詞。極めて優れていること。
- の:格助詞。
- 荒馬乗り:名詞。荒馬を乗りこなす者。
- 悪所落とし:名詞。険しい難所を馬で駆け下りること。
- 戦:名詞。
- と:格助詞。
- いへ:ハ行四段活用「いふ」の已然形。
- ば:接続助詞。ここでは「~となると」の意。
札よき鎧着せ、大太刀、強弓持たせて、
- 札:名詞。鎧を構成する小札。
- よき:ク活用の形容詞「よし」の連体形。
- 鎧:名詞。
- 着せ:サ行下二段活用「着す」の連用形。着せる。
- 大太刀:名詞。
- 強弓:名詞。
- 持た:タ行四段活用「持つ」の未然形。
- せ:使役の助動詞「す」の連用形。
- て:接続助詞。
まづ一方の大将には向けられけり。
- まづ:副詞。まず。
- 一方:名詞。一軍。
- の:格助詞。
- 大将:名詞。
- に:格助詞。
- は:係助詞。
- 向け:カ行下二段活用「向く」の未然形。差し向ける。
- られ:尊敬の助動詞「らる」の連用形。木曽殿への敬意。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
度々の高名、肩を並ぶるものなし。
- 度々:名詞。たびたび。
- の:格助詞。
- 高名:名詞。戦功。
- 肩:名詞。
- を:格助詞。
- 並ぶる:バ行下二段活用「並ぶ」の連体形。肩を並べる。
- もの:名詞。
- なし:ク活用の形容詞「なし」の終止形。
されば今度も多くのものども
- されば:接続詞。それゆえ。
- 今度:名詞。今回。
- も:係助詞。
- 多く:ク活用の形容詞「多し」の連用形。
- の:格助詞。
- ものども:名詞。多くの者たち。
落ちゆき討たれける中に、
- 落ちゆき:カ行四段活用「落ちゆく」の連用形。敗れて逃げていく。
- 討た:タ行四段活用「討つ」の未然形。
- れ:受身の助動詞「る」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- 中:名詞。
- に:格助詞。
七騎が内まで巴は討たれざりけり。
- 七騎:名詞。
- が:格助詞。連体格。~の。
- 内:名詞。
- まで:副助詞。
- 巴:名詞。
- は:係助詞。
- 討た:タ行四段活用「討つ」の未然形。
- れ:受身の助動詞「る」の未然形。
- ざり:打消の助動詞「ず」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
「木曽の最期」の品詞分解(2)木曽殿は長坂を経て
木曽は長坂を経て、
- 木曽:名詞。
- は:係助詞。
- 長坂:名詞。
- を:格助詞。
- 経:ハ行下二段活用「経」の連用形。
- て:接続助詞。
丹波路へおもむくとも聞こえけり。
- 丹波路:名詞。
- へ:格助詞。
- おもむく:カ行四段活用「おもむく」の終止形。
- と:格助詞。引用。
- も:係助詞。
- 聞こえ:ヤ行下二段活用「聞こゆ」の連用形。世間に評判になる。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
また、竜花越にかかって
- また:接続詞。
- 竜花越:名詞。
- に:格助詞。
- かかっ:ラ行四段活用「かかる」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
北国へとも聞こえけり。
- 北国:名詞。
- へ:格助詞。
- と:格助詞。引用。
- も:係助詞。
- 聞こえ:ヤ行下二段活用「聞こゆ」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
かかりしかども、今井がゆくへを聞かばやとて、
- かかり:ラ行四段活用「かかる」の連用形。
- しか:過去の助動詞「き」の已然形。
- ども:接続助詞。逆接。「~けれども」。
- 今井:名詞。
- が:格助詞。連体格。
- ゆくへ:名詞。行方。
- を:格助詞。
- 聞か:カ行四段活用「聞く」の未然形。
- ばや:終助詞。自己の願望。「~したい」の意。
- とて:格助詞。引用内容を受け「~と思って」の意。
勢田の方へ落ちゆくほどに、
- 勢田:名詞。
- の:格助詞。
- 方:名詞。
- へ:格助詞。
- 落ちゆく:カ行四段活用「落ちゆく」の連体形。敗走していく。
- ほど:名詞。うち。時。
- に:格助詞。
今井四郎兼平も八百余騎で勢田をかためたりけるが、
- 今井四郎兼平:名詞。
- も:係助詞。
- 八百余騎:名詞。
- で:格助詞。
- 勢田:名詞。
- を:格助詞。
- かため:マ行下二段活用「かたむ」の連用形。守り固める。
- たり:存続の助動詞「たり」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- が:接続助詞。逆接。
わづかに五十騎ばかりに討ちなされ、
- わづかに:ナリ活用の形容動詞「わづかなり」の連用形。
- 五十騎:名詞。
- ばかり:副助詞。程度。
- に:格助詞。結果の状態。
- 討ちなさ:サ行四段活用「討ちなす」の未然形。討って~の状態にする。
- れ:受身の助動詞「る」の連用形。
旗をば巻かせて、
- 旗:名詞。
- を:格助詞。
- ば:係助詞。
- 巻か:カ行四段活用「巻く」の未然形。
- せ:使役の助動詞「す」の連用形。
- て:接続助詞。
主のおぼつかなきに、都へとってかへすほどに、
- 主:名詞。主君、木曽義仲。
- の:格助詞。主格。「主が」の意。
- おぼつかなき:ク活用の形容詞「おぼつかなし」の連体形。気がかりだ。
- に:接続助詞。原因・理由。「~ので」。
- 都:名詞。
- へ:格助詞。
- とってかへす:サ行四段活用「とってかへす」の連体形。引き返す。
- ほど:名詞。うち。
- に:格助詞。
大津の打出の浜にて木曽殿にゆきあひたてまつる。
- 大津:名詞。
- の:格助詞。
- 打出の浜:名詞。
- にて:格助詞。場所。「~で」。
- 木曽殿:名詞。
- に:格助詞。
- ゆきあひ:ハ行四段活用「ゆきあふ」の連用形。出会う。
- たてまつる:ラ行四段活用の補助動詞「たてまつる」の終止形。謙譲。今井から木曽殿への敬意。
互ひになか一町ばかりよりそれと見知って、
- 互ひに:副詞。互いに。
- なか一町:名詞。互いの間がおよそ一町であること。
- ばかり:副助詞。程度。
- より:格助詞。起点。
- それ:代名詞。
- と:格助詞。認定。「それと」。
- 見知っ:ラ行四段活用「見知る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
主従駒をはやめて寄りあうたり。
- 主従:名詞。主君と家来。
- 駒:名詞。馬。
- を:格助詞。
- はやめ:マ行下二段活用「はやむ」の連用形。速くする。
- て:接続助詞。
- 寄りあう:ハ行四段活用「寄りあふ」の連用形のウ音便。
- たり:完了の助動詞「たり」の終止形。
木曽殿、今井が手を取ってのたまひけるは、
- 木曽殿:名詞。
- 今井:名詞。
- が:格助詞。連体格。
- 手:名詞。
- を:格助詞。
- 取っ:ラ行四段活用「取る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- のたまひ:ハ行四段活用「のたまふ」の連用形。尊敬語。作者から木曽殿への敬意。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- は:係助詞。
「義仲、六条河原でいかにもなるべかりつれども、
- 義仲:名詞。
- 六条河原:名詞。
- で:格助詞。
- いかに:副詞。どのように。
- も:係助詞。
- なる:ラ行四段活用「なる」の終止形。ここでは死ぬ意。
- べかり:推量の助動詞「べし」の連用形。ここでは意志・予定。
- つれ:完了の助動詞「つ」の已然形。
- ども:接続助詞。逆接。
なんぢがゆくへの恋しさに、
- なんぢ:代名詞。お前。
- が:格助詞。連体格。
- ゆくへ:名詞。
- の:格助詞。
- 恋しさ:名詞。恋しさ。会いたい気持ち。
- に:格助詞。原因・理由。
多くの敵の中を駆け割って、
- 多く:ク活用の形容詞「多し」の連用形。
- の:格助詞。
- 敵:名詞。
- の:格助詞。
- 中:名詞。
- を:格助詞。
- 駆け割っ:ラ行四段活用「駆け割る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
これまでは逃れたるなり」
- これ:代名詞。
- まで:副助詞。
- は:係助詞。
- 逃れ:ラ行下二段活用「逃る」の連用形。
- たる:完了の助動詞「たり」の連体形。
- なり:断定の助動詞「なり」の終止形。
今井四郎、「御諚まことにかたじけなう候ふ。
- 今井四郎:名詞。今井四郎兼平。
- 御諚:名詞。主君の仰せ。
- まことに:副詞。
- かたじけなう:ク活用の形容詞「かたじけなし」の連用形のウ音便。ありがたい。
- 候ふ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の終止形。丁寧語。
兼平も勢田で討ち死につかまつるべう候ひつれども、
- 兼平:名詞。
- も:係助詞。
- 勢田:名詞。
- で:格助詞。
- 討ち死に:名詞。
- つかまつる:ラ行四段活用「つかまつる」の終止形。謙譲語。ここでは「いたす」。
- べう:推量の助動詞「べし」の連用形のウ音便。ここでは意志。
- 候ひ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の連用形。丁寧語。
- つれ:完了の助動詞「つ」の已然形。
- ども:接続助詞。逆接。
御ゆくへのおぼつかなさにこれまで参って候ふ」
- 御ゆくへ:名詞。お行方。「御」は接頭語。
- の:格助詞。
- おぼつかなさ:名詞。気がかりなこと。
- に:格助詞。原因・理由。
- これ:代名詞。
- まで:副助詞。
- 参っ:ラ行四段活用「参る」の連用形の促音便。謙譲語。
- て:接続助詞。
- 候ふ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の終止形。丁寧語。
とぞ申しける。
- と:格助詞。引用。
- ぞ:係助詞。強意。
- 申し:サ行四段活用「申す」の連用形。謙譲語。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。「ぞ」の係り結び。
木曽殿、「契りはいまだ朽ちせざりけり。
- 木曽殿:名詞。
- 契り:名詞。約束。縁。
- は:係助詞。
- いまだ:副詞。まだ。
- 朽ちせ:サ行変格活用「朽ちす」の未然形。朽ちる、なくなる。
- ざり:打消の助動詞「ず」の連用形。
- けり:詠嘆を伴う過去の助動詞「けり」の終止形。
義仲が勢は敵におしへだてられ、
- 義仲:名詞。
- が:格助詞。連体格。
- 勢:名詞。軍勢。
- は:係助詞。
- 敵:名詞。
- に:格助詞。受身の動作主。
- おしへだて:タ行下二段活用「おしへだつ」の未然形。
- られ:受身の助動詞「らる」の連用形。
山林に馳せ散って
- 山林:名詞。
- に:格助詞。
- 馳せ散っ:ラ行四段活用「馳せ散る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
この辺にもあるらんぞ。
- こ:代名詞。
- の:格助詞。
- 辺:名詞。
- に:格助詞。
- も:係助詞。
- ある:ラ行変格活用「あり」の終止形。
- らん:現在推量の助動詞「らむ」の終止形。「いるだろう」。
- ぞ:終助詞。念押し・強意。
汝が巻かせて持たせたる旗あげさせよ」
- 汝:代名詞。お前。
- が:格助詞。連体格。
- 巻か:カ行四段活用「巻く」の未然形。
- せ:使役の助動詞「す」の連用形。
- て:接続助詞。
- 持た:タ行四段活用「持つ」の未然形。
- せ:使役の助動詞「す」の連用形。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- 旗:名詞。
- あげ:ガ行下二段活用「あぐ」の未然形。
- させよ:使役の助動詞「さす」の命令形。「上げさせよ」。
とのたまへば、今井が旗を差しあげたり。
- と:格助詞。引用。
- のたまへ:ハ行四段活用「のたまふ」の已然形。尊敬語。
- ば:接続助詞。順接の確定条件。
- 今井:名詞。
- が:格助詞。連体格。
- 旗:名詞。
- を:格助詞。
- 差しあげ:ガ行下二段活用「差しあぐ」の連用形。
- たり:完了の助動詞「たり」の終止形。
京より落つる勢ともなく、
- 京:名詞。
- より:格助詞。起点。
- 落つる:タ行上二段活用「落つ」の連体形。敗走する。
- 勢:名詞。軍勢。
- と:格助詞。
- も:係助詞。
- なく:ク活用の形容詞「なし」の連用形。
勢田より落つるものともなく、
- 勢田:名詞。
- より:格助詞。
- 落つる:タ行上二段活用「落つ」の連体形。
- もの:名詞。
- と:格助詞。
- も:係助詞。
- なく:ク活用の形容詞「なし」の連用形。
今井が旗をみつけて三百余騎ぞ馳せ集まる。
- 今井:名詞。
- が:格助詞。連体格。
- 旗:名詞。
- を:格助詞。
- みつけ:カ行下二段活用「見つく」の連用形。見つける。
- て:接続助詞。
- 三百余騎:名詞。
- ぞ:係助詞。強意。
- 馳せ集まる:ラ行四段活用「馳せ集まる」の連体形。「ぞ」の係り結び。
木曽大いに悦んで、「この勢あらば、
- 木曽:名詞。
- 大いに:副詞。たいそう。非常に。
- 悦ん:バ行四段活用「悦ぶ」の連用形の撥音便。
- で:接続助詞「て」の濁音化。
- こ:代名詞。
- の:格助詞。
- 勢:名詞。
- あら:ラ行変格活用「あり」の未然形。
- ば:接続助詞。仮定条件。「~ならば」。
などか最後の戦せざるべき。
- など:副詞。どうして。
- か:係助詞。反語。
- 最後:名詞。
- の:格助詞。
- 戦:名詞。
- せ:サ行変格活用「す」の未然形。
- ざる:打消の助動詞「ず」の連体形。
- べき:意志の助動詞「べし」の連体形。係助詞「か」を受ける反語。「どうして~しないでいられようか」の意。
ここにしぐらうで見ゆるは誰が手やらん」
- ここ:代名詞。
- に:格助詞。
- しぐらう:ハ行四段活用「しぐらふ」の連用形のウ音便。遠く密集して見える。
- で:接続助詞「て」の濁音化。
- 見ゆる:ヤ行下二段活用「見ゆ」の連体形。見える。
- は:係助詞。
- 誰:代名詞。
- が:格助詞。連体格。
- 手:名詞。軍勢。
- やらん:連語。「にやあらん」の変化した形。疑問。「~であろうか」の意。
「甲斐の一条次郎殿とこそ承り候へ」
- 甲斐:名詞。
- の:格助詞。
- 一条次郎殿:名詞。
- と:格助詞。
- こそ:係助詞。強意。
- 承り:ラ行四段活用「承る」の連用形。謙譲語。
- 候へ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の已然形。「こそ」の係り結び。丁寧語。
「勢はいくらほどあるやらん」
- 勢:名詞。
- は:係助詞。
- いくら:副詞。どれほど。
- ほど:名詞。程度。
- ある:ラ行変格活用「あり」の連体形。
- やらん:連語。「にやあらん」の変化した形。疑問。「~であろうか」の意。
「六千余騎と聞こえ候へ」
- 六千余騎:名詞。
- と:格助詞。引用。
- 聞こえ:ヤ行下二段活用「聞こゆ」の連用形。
- 候へ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の已然形。丁寧語。
「さてはよい敵ござんなれ。
- さては:接続詞。それならば。
- よい:ク活用の形容詞「よし」の連体形のイ音便。
- 敵:名詞。
- ござんなれ:連語。「にこそあるなれ」の変化した形。推定。「~であるらしい」「~であるようだ」の意。
同じう死なば、よからう敵にかけあうて、
- 同じう:シク活用の形容詞「同じ」の連用形のウ音便。
- 死な:ナ行変格活用「死ぬ」の未然形。
- ば:接続助詞。仮定条件。
- よから:ク活用の形容詞「よし」の未然形。
- う:婉曲の助動詞「む」の連体形が音便化した形。「~ような」の意。
- 敵:名詞。
- に:格助詞。
- かけあう:ハ行四段活用「かけあふ」の連用形のウ音便。攻めかかって戦う。
- て:接続助詞。
大勢の中でこそ討ち死にをもせめ」
- 大勢:名詞。
- の:格助詞。
- 中:名詞。
- で:格助詞。
- こそ:係助詞。強意。
- 討ち死に:名詞。
- を:格助詞。
- も:係助詞。
- せ:サ行変格活用「す」の未然形。
- め:推量の助動詞「む」の已然形。「こそ」の係り結び。ここでは意志。
とて、まっさきにこそ進みけれ。
- とて:格助詞。引用を受け「~と言って」。
- まっさきに:副詞。真っ先に。
- こそ:係助詞。強意。
- 進み:マ行四段活用「進む」の連用形。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。「こそ」の係り結び。
「木曽の最期」の品詞分解(3)木曽左馬頭、その日の装束には
木曽左馬頭、その日の装束には、
- 木曽左馬頭:名詞。木曽義仲。左馬頭は官職名。
- そ:代名詞。
- の:格助詞。
- 日:名詞。
- の:格助詞。
- 装束:名詞。服装。
- に:格助詞。
- は:係助詞。
赤地の錦の直垂に唐綾縅の鎧着て、
- 赤地:名詞。
- の:格助詞。
- 錦:名詞。
- の:格助詞。
- 直垂:名詞。
- に:格助詞。
- 唐綾縅:名詞。
- の:格助詞。
- 鎧:名詞。
- 着:カ行上一段活用「着る」の連用形。
- て:接続助詞。
鍬形打ったる甲の緒締め、
- 鍬形:名詞。兜の飾り。
- 打っ:タ行四段活用「打つ」の連用形の促音便。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- 甲:名詞。兜。
- の:格助詞。
- 緒:名詞。
- 締め:マ行下二段活用「締む」の連用形。
厳物作りの大太刀帯き、石打ちの矢の、
- 厳物作り:名詞。いかめしく立派な作り。
- の:格助詞。
- 大太刀:名詞。
- 帯き:カ行四段活用「帯く」の連用形。腰に差す。
- 石打ち:名詞。矢羽の種類。
- の:格助詞。
- 矢:名詞。
- の:格助詞。
その日のいくさに射て
- そ:代名詞。
- の:格助詞。
- 日:名詞。
- の:格助詞。
- いくさ:名詞。
- に:格助詞。
- 射:ヤ行上一段活用「射る」の連用形。
- て:接続助詞。
少々残ったるを頭高に負ひなし、
- 少々:副詞。少し。
- 残っ:ラ行四段活用「残る」の連用形の促音便。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- を:格助詞。
- 頭高に:ナリ活用の形容動詞「頭高なり」の連用形。矢を肩越しに高く見せるさま。
- 負ひなし:サ行四段活用「負ひなす」の連用形。背負う。
滋籐の弓持って、
- 滋籐:名詞。滋籐の弓。
- の:格助詞。
- 弓:名詞。
- 持っ:タ行四段活用「持つ」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
聞こゆる木曽の鬼葦毛といふ馬の、
- 聞こゆる:ヤ行下二段活用「聞こゆ」の連体形。名高い。
- 木曽:名詞。
- の:格助詞。
- 鬼葦毛:名詞。馬の名。
- と:格助詞。
- いふ:ハ行四段活用「いふ」の連体形。
- 馬:名詞。
- の:格助詞。
極めて太うたくましいに、
- 極めて:副詞。非常に。
- 太う:ク活用の形容詞「太し」の連用形のウ音便。
- たくましい:シク活用の形容詞「たくまし」の連体形のイ音便。
- に:格助詞。ここでは馬に、の意。
金覆輪の鞍置いてぞ乗ったりける。
- 金覆輪:名詞。金具で縁取った装飾。
- の:格助詞。
- 鞍:名詞。
- 置い:カ行四段活用「置く」の連用形のイ音便。
- て:接続助詞。
- ぞ:係助詞。強意。
- 乗っ:ラ行四段活用「乗る」の連用形の促音便。
- たり:存続の助動詞「たり」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。「ぞ」の係り結び。
鐙踏んばり立ちあがり、大音声をあげて名乗りけるは、
- 鐙:名詞。
- 踏んばり:ラ行四段活用「踏んばる」の連用形。
- 立ちあがり:ラ行四段活用「立ちあがる」の連用形。
- 大音声:名詞。大声。
- を:格助詞。
- あげ:ガ行下二段活用「あぐ」の連用形。
- て:接続助詞。
- 名乗り:ラ行四段活用「名乗る」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- は:係助詞。
「昔は聞きけんものを、
- 昔:名詞。
- は:係助詞。
- 聞き:カ行四段活用「聞く」の連用形。
- けん:過去推量の助動詞「けむ」の連体形。ここでは「聞いたことがあるだろう」。
- ものを:接続助詞。逆接・詠嘆。「~けれども」「~のになあ」の意。
木曽の冠者、今は見るらん、
- 木曽:名詞。
- の:格助詞。
- 冠者:名詞。若者。ここでは木曽義仲。
- 今:名詞。
- は:係助詞。
- 見る:マ行上一段活用「見る」の終止形。
- らん:現在推量の助動詞「らむ」の終止形。「今は見ているだろう」。
左馬頭兼伊予守、朝日の将軍源義仲ぞや。
- 左馬頭兼伊予守:名詞。官職名。
- 朝日:名詞。
- の:格助詞。
- 将軍:名詞。
- 源義仲:名詞。
- ぞ:終助詞。念押し・強意。
- や:間投助詞。呼びかけ。
甲斐の一条次郎とこそ聞け。
- 甲斐:名詞。
- の:格助詞。
- 一条次郎:名詞。
- と:格助詞。
- こそ:係助詞。強意。
- 聞け:カ行四段活用「聞く」の已然形。「こそ」の係り結び。
互ひによい敵ぞ。
- 互ひに:副詞。
- よい:ク活用の形容詞「よし」の連体形のイ音便。
- 敵:名詞。好敵手。
- ぞ:終助詞。強意。
義仲討って、兵衛佐に見せよや」
- 義仲:名詞。
- 討っ:タ行四段活用「討つ」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- 兵衛佐:名詞。ここでは源頼朝。
- に:格助詞。
- 見せよ:サ行下二段活用「見す」の命令形。見せよ。
- や:間投助詞。呼びかけ。
とて、喚いて駆く。
- とて:格助詞。引用を受け「~と言って」。
- 喚い:カ行四段活用「喚く」の連用形のイ音便。大声で叫ぶ。
- て:接続助詞。
- 駆く:カ行下二段活用「駆く」の終止形。馬を走らせる。
一条の次郎、「ただ今名乗るは大将軍ぞ。
- 一条:名詞。
- の:格助詞。
- 次郎:名詞。
- ただ今:副詞。たった今。
- 名乗る:ラ行四段活用「名乗る」の連体形。
- は:係助詞。
- 大将軍:名詞。
- ぞ:終助詞。強意。
あますなものども、もらすな若党、討てや」
- あます:サ行四段活用「あます」の終止形。討ち残す。
- な:終助詞。禁止。「~するな」。
- ものども:名詞。者たち。
- もらす:サ行四段活用「もらす」の終止形。逃す。
- な:終助詞。禁止。
- 若党:名詞。若い従者・兵。
- 討て:タ行四段活用「討つ」の命令形。
- や:間投助詞。呼びかけ。
とて、大勢の中に取りこめて、
- とて:格助詞。引用を受け「~と言って」。
- 大勢:名詞。
- の:格助詞。
- 中:名詞。
- に:格助詞。
- 取りこめ:マ行下二段活用「取りこむ」の連用形。囲い込む。
- て:接続助詞。
我討っ取らんとぞ進みける。
- 我:代名詞。自分。
- 討っ取ら:ラ行四段活用「討っ取る」の未然形。
- ん:意志の助動詞「む」の終止形。
- と:格助詞。引用。
- ぞ:係助詞。強意。
- 進み:マ行四段活用「進む」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。「ぞ」の係り結び。
木曽三百余騎、六千余騎が中を縦様、横様、蜘蛛手、
- 木曽三百余騎:名詞。木曽方の三百余騎。
- 六千余騎:名詞。
- が:格助詞。連体格。
- 中:名詞。
- を:格助詞。
- 縦様:名詞。縦方向。
- 横様:名詞。横方向。
- 蜘蛛手:名詞。四方八方。
十文字に駆け割って、後ろへつっと出でたれば、
- 十文字:名詞。十字の形。
- に:格助詞。
- 駆け割っ:ラ行四段活用「駆け割る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- 後ろ:名詞。
- へ:格助詞。
- つっと:副詞。さっと。
- 出で:ダ行下二段活用「出づ」の連用形。
- たれ:完了の助動詞「たり」の已然形。
- ば:接続助詞。偶然条件。「~すると」。
五十騎ばかりになりにけり。
- 五十騎:名詞。
- ばかり:副助詞。程度。
- に:格助詞。
- なり:ラ行四段活用「なる」の連用形。
- に:完了の助動詞「ぬ」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
そこを破ってゆくほどに、
- そこ:代名詞。
- を:格助詞。
- 破っ:ラ行四段活用「破る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- ゆく:カ行四段活用「ゆく」の連体形。
- ほど:名詞。うち。
- に:格助詞。
土肥の二郎実平、二千余騎で支へたり。
- 土肥の二郎実平:名詞。土肥実平。
- 二千余騎:名詞。
- で:格助詞。
- 支へ:ハ行下二段活用「支ふ」の連用形。防ぎ止める。
- たり:存続の助動詞「たり」の終止形。
それをも破ってゆくほどに、
- それ:代名詞。
- を:格助詞。
- も:係助詞。
- 破っ:ラ行四段活用「破る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- ゆく:カ行四段活用「ゆく」の連体形。
- ほど:名詞。
- に:格助詞。
あそこでは四五百騎、ここでは二三百騎、百四五十騎、
- あそこ:代名詞。
- で:格助詞。
- は:係助詞。
- 四五百騎:名詞。
- ここ:代名詞。
- で:格助詞。
- は:係助詞。
- 二三百騎:名詞。
- 百四五十騎:名詞。
百騎ばかりが中を駆け割り駆け割りゆくほどに、
- 百騎:名詞。
- ばかり:副助詞。
- が:格助詞。
- 中:名詞。
- を:格助詞。
- 駆け割り:ラ行四段活用「駆け割る」の連用形。
- 駆け割り:ラ行四段活用「駆け割る」の連用形。反復。
- ゆく:カ行四段活用「ゆく」の連体形。
- ほど:名詞。
- に:格助詞。
主従五騎ほどにぞなりにける。
- 主従五騎:名詞。
- ほど:副助詞。程度。
- に:格助詞。
- ぞ:係助詞。強意。
- なり:ラ行四段活用「なる」の連用形。
- に:完了の助動詞「ぬ」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。「ぞ」の係り結び。
「木曽の最期」の品詞分解(4)五騎が内まで巴は討たれざれけり
五騎が内まで巴は討たれざれけり。
- 五騎:名詞。
- が:格助詞。連体格。
- 内:名詞。
- まで:副助詞。
- 巴:名詞。
- は:係助詞。
- 討た:タ行四段活用「討つ」の未然形。
- れ:受身の助動詞「る」の未然形。
- ざれ:打消の助動詞「ず」の已然形。原文の形。学校教材では「ざりけり」とする本文もある。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
木曽殿、「おのれはとうとう、女なればいづちへもゆけ。
- 木曽殿:名詞。
- おのれ:代名詞。ここでは巴を指す「お前」。
- は:係助詞。
- とうとう:副詞。「疾う疾う」。早く早く。
- 女:名詞。
- なれ:断定の助動詞「なり」の已然形。
- ば:接続助詞。順接の確定条件。「女なのだから」。
- いづち:代名詞。どこ。
- へ:格助詞。
- も:係助詞。
- ゆけ:カ行四段活用「ゆく」の命令形。
我は討ち死にせんと思ふなり。
- 我:代名詞。
- は:係助詞。
- 討ち死に:名詞。
- せ:サ行変格活用「す」の未然形。
- ん:意志の助動詞「む」の終止形。
- と:格助詞。引用。
- 思ふ:ハ行四段活用「思ふ」の連体形。
- なり:断定の助動詞「なり」の終止形。
もし人手にかからば自害をせんずれば、
- もし:副詞。
- 人手:名詞。他人の手。
- に:格助詞。
- かから:ラ行四段活用「かかる」の未然形。
- ば:接続助詞。仮定条件。
- 自害:名詞。
- を:格助詞。
- せ:サ行変格活用「す」の未然形。
- んずれ:意志の助動詞「むず」の已然形。
- ば:接続助詞。原因・理由。「自害しようと思うので」。
木曽殿の最後のいくさに、
- 木曽殿:名詞。
- の:格助詞。連体格。
- 最後:名詞。
- の:格助詞。
- いくさ:名詞。
- に:格助詞。
女を具せられたりけりなんど
- 女:名詞。
- を:格助詞。
- 具せ:サ行変格活用「具す」の未然形。
- られ:尊敬の助動詞「らる」の連用形。木曽殿への敬意。
- たり:存続の助動詞「たり」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
- なんど:副助詞。「など」の意。
言はれん事もしかるべからず」
- 言は:ハ行四段活用「言ふ」の未然形。
- れ:受身の助動詞「る」の未然形。
- ん:推量の助動詞「む」の連体形。ここでは婉曲。「言われるような」。
- 事:名詞。
- も:係助詞。
- しかる:ラ行変格活用「しかり」の連体形。そのようである。
- べから:推量の助動詞「べし」の未然形。ここでは当然・適当。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。「そうあってはならない」。
とのたまひけれども、
- と:格助詞。引用。
- のたまひ:ハ行四段活用「のたまふ」の連用形。尊敬語。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ども:接続助詞。逆接。
なほ落ちもゆかざりけるが、
- なほ:副詞。それでもやはり。
- 落ち:タ行上二段活用「落つ」の連用形。敗走する。
- も:係助詞。
- ゆか:カ行四段活用「ゆく」の未然形。
- ざり:打消の助動詞「ず」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- が:接続助詞。
あまりに言はれ奉て、
- あまりに:副詞。あまりにも。
- 言は:ハ行四段活用「言ふ」の未然形。
- れ:受身の助動詞「る」の連用形。
- 奉:ラ行四段活用の補助動詞「奉る」の連用形「奉り」が促音便化した形。謙譲。巴から木曽殿への敬意。
- て:接続助詞。
「あっぱれ、よからうかたきがな。
- あっぱれ:感動詞。ああ。
- よから:ク活用の形容詞「よし」の未然形。
- う:婉曲の助動詞「む」の連体形が音便化した形。「~ような」の意。
- かたき:名詞。敵。
- がな:終助詞。願望。「~があればなあ」。
最後のいくさして見せ奉らん」
- 最後:名詞。
- の:格助詞。
- いくさ:名詞。
- し:サ行変格活用「す」の連用形。
- て:接続助詞。
- 見せ:サ行下二段活用「見す」の連用形。
- 奉ら:ラ行四段活用の補助動詞「奉る」の未然形。謙譲。
- ん:意志の助動詞「む」の終止形。
とてひかへたるところに、武蔵国に聞こえたる大力、
- とて:格助詞。引用を受け「~と言って」。
- ひかへ:ハ行下二段活用「ひかふ」の連用形。待ち構える。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- ところ:名詞。
- に:格助詞。
- 武蔵国:名詞。
- に:格助詞。
- 聞こえ:ヤ行下二段活用「聞こゆ」の連用形。名高い。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- 大力:名詞。力が非常に強いこと。
恩田の八郎師重、三十騎ばかりで出できたり。
- 恩田の八郎師重:名詞。
- 三十騎:名詞。
- ばかり:副助詞。
- で:格助詞。
- 出でき:カ行変格活用「出で来」の連用形。出て来る。
- たり:完了の助動詞「たり」の終止形。
巴、その中へ駆け入り、
- 巴:名詞。
- そ:代名詞。
- の:格助詞。
- 中:名詞。
- へ:格助詞。
- 駆け入り:ラ行四段活用「駆け入る」の連用形。
恩田の八郎に押し並べて、むずと取って引き落とし、
- 恩田の八郎:名詞。
- に:格助詞。
- 押し並べ:バ行下二段活用「押し並ぶ」の連用形。馬を強引に並べる。
- て:接続助詞。
- むずと:副詞。力を込めて勢いよく。
- 取っ:ラ行四段活用「取る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- 引き落とし:サ行四段活用「引き落とす」の連用形。
我が乗ったる鞍の前輪に押し付けて
- 我:代名詞。
- が:格助詞。主格。
- 乗っ:ラ行四段活用「乗る」の連用形の促音便。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- 鞍:名詞。
- の:格助詞。
- 前輪:名詞。鞍の前方の高くなった部分。
- に:格助詞。
- 押し付け:カ行下二段活用「押し付く」の連用形。
- て:接続助詞。
ちっとも働かさず、首ねぢ切って捨ててんげり。
- ちっとも:副詞。少しも。
- 働かさ:サ行四段活用「働かす」の未然形。身動きさせる。
- ず:打消の助動詞「ず」の連用形。
- 首:名詞。
- ねぢ切っ:ラ行四段活用「ねぢ切る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- 捨て:タ行下二段活用「捨つ」の連用形。
- てんげり:連語。完了の助動詞「つ」の連用形「て」+過去の助動詞「けり」の終止形が音変化した形。「~てしまった」の意。
その後、物具脱ぎ捨て、
- そ:代名詞。
- の:格助詞。
- 後:名詞。
- 物具:名詞。武具。
- 脱ぎ捨て:タ行下二段活用「脱ぎ捨つ」の連用形。
東国の方へ落ちぞゆく。
- 東国:名詞。
- の:格助詞。
- 方:名詞。
- へ:格助詞。
- 落ち:タ行上二段活用「落つ」の連用形。
- ぞ:係助詞。強意。
- ゆく:カ行四段活用「ゆく」の連体形。「ぞ」の係り結び。
手塚太郎討ち死にす。手塚別当落ちにけり。
- 手塚太郎:名詞。
- 討ち死に:名詞。
- す:サ行変格活用「す」の終止形。
- 手塚別当:名詞。
- 落ち:タ行上二段活用「落つ」の連用形。
- に:完了の助動詞「ぬ」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
「木曽の最期」の品詞分解(5)今井四郎、木曽殿、主従二騎に
今井四郎、木曽殿、主従二騎になってのたまひけるは、
- 今井四郎:名詞。
- 木曽殿:名詞。
- 主従:名詞。
- 二騎:名詞。
- に:格助詞。
- なっ:ラ行四段活用「なる」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- のたまひ:ハ行四段活用「のたまふ」の連用形。尊敬語。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- は:係助詞。
「日ごろは何とも覚えぬ鎧が、
- 日ごろ:名詞。普段。
- は:係助詞。
- 何:代名詞。
- と:格助詞。
- も:係助詞。
- 覚え:ヤ行下二段活用「覚ゆ」の未然形。感じられる。
- ぬ:打消の助動詞「ず」の連体形。
- 鎧:名詞。
- が:格助詞。主格。
今日は重うなったるぞや」
- 今日:名詞。
- は:係助詞。
- 重う:ク活用の形容詞「重し」の連用形のウ音便。
- なっ:ラ行四段活用「なる」の連用形の促音便。
- たる:完了の助動詞「たり」の連体形。
- ぞ:終助詞。念押し・強意。
- や:間投助詞。詠嘆。
今井四郎申しけるは、
- 今井四郎:名詞。
- 申し:サ行四段活用「申す」の連用形。謙譲語。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- は:係助詞。
「御身もいまだ疲れさせたまはず。
- 御身:名詞。お体。
- も:係助詞。
- いまだ:副詞。まだ。
- 疲れ:ラ行下二段活用「疲る」の未然形。
- させ:尊敬の助動詞「さす」の連用形。
- たまは:ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の未然形。尊敬。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。
御馬も弱り候はず。
- 御馬:名詞。
- も:係助詞。
- 弱り:ラ行四段活用「弱る」の連用形。
- 候は:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の未然形。丁寧語。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。
何によってか一領の御着背長を
- 何:代名詞。
- に:格助詞。
- よっ:ラ行四段活用「よる」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- か:係助詞。疑問。
- 一領:名詞。鎧一そろい。
- の:格助詞。
- 御着背長:名詞。大将用の大鎧。
- を:格助詞。
重うは思し召し候ふべき。
- 重う:ク活用の形容詞「重し」の連用形のウ音便。
- は:係助詞。
- 思し召し:サ行四段活用「思し召す」の連用形。尊敬語。
- 候ふ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の終止形。丁寧語。
- べき:当然の助動詞「べし」の連体形。疑問の係助詞「か」を受ける係り結び。
それは御方に御勢が候はねば、
- それ:代名詞。
- は:係助詞。
- 御方:名詞。味方。
- に:格助詞。
- 御勢:名詞。味方の軍勢。
- が:格助詞。主格。
- 候は:ハ行四段活用「候ふ」の未然形。ある。
- ね:打消の助動詞「ず」の已然形。
- ば:接続助詞。原因・理由。
臆病でこそさは思し召し候へ。
- 臆病:名詞。
- で:格助詞。
- こそ:係助詞。強意。
- さ:副詞。そのように。
- は:係助詞。
- 思し召し:サ行四段活用「思し召す」の連用形。尊敬語。
- 候へ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の已然形。「こそ」の係り結び。
兼平一人候ふとも、余の武者千騎と思し召せ。
- 兼平:名詞。
- 一人:名詞。
- 候ふ:ハ行四段活用「候ふ」の終止形。おります。
- とも:接続助詞。逆接仮定。「~としても」。
- 余:名詞。ほか。
- の:格助詞。
- 武者千騎:名詞。
- と:格助詞。
- 思し召せ:サ行四段活用「思し召す」の命令形。尊敬語。「お思いください」。
矢七つ八つ候へば、しばらく防き矢仕らん。
- 矢:名詞。
- 七つ八つ:名詞。七、八本。
- 候へ:ハ行四段活用「候ふ」の已然形。ある。
- ば:接続助詞。原因・理由。
- しばらく:副詞。当分の間。
- 防き矢:名詞。敵を防ぐために射る矢。
- 仕ら:ラ行四段活用「仕る」の未然形。謙譲語。「いたす」。
- ん:意志の助動詞「む」の終止形。
あれに見え候ふ、粟津の松原と申す。
- あれ:代名詞。
- に:格助詞。
- 見え:ヤ行下二段活用「見ゆ」の連用形。
- 候ふ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の連体形。丁寧語。
- 粟津:名詞。
- の:格助詞。
- 松原:名詞。
- と:格助詞。
- 申す:サ行四段活用「申す」の終止形。謙譲語。
あの松の中で御自害候へ」
- あ:代名詞。
- の:格助詞。
- 松:名詞。
- の:格助詞。
- 中:名詞。
- で:格助詞。
- 御自害:名詞。
- 候へ:ハ行四段活用「候ふ」の命令形。ここでは「なさいませ」の意。
とて、打ってゆくほどに、
- とて:格助詞。引用を受け「~と言って」。
- 打っ:タ行四段活用「打つ」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- ゆく:カ行四段活用「ゆく」の連体形。
- ほど:名詞。うち。
- に:格助詞。
また新手の武者五十騎ばかり出できたり。
- また:接続詞。
- 新手:名詞。新たに加わる軍勢。
- の:格助詞。
- 武者五十騎:名詞。
- ばかり:副助詞。
- 出でき:カ行変格活用「出で来」の連用形。
- たり:完了の助動詞「たり」の終止形。
「君はあの松原へ入らせ給へ。
- 君:名詞。主君、木曽殿。
- は:係助詞。
- あ:代名詞。
- の:格助詞。
- 松原:名詞。
- へ:格助詞。
- 入ら:ラ行四段活用「入る」の未然形。
- せ:尊敬の助動詞「す」の連用形。
- 給へ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の命令形。尊敬。「お入りください」。
兼平はこの敵防き候はん」
- 兼平:名詞。
- は:係助詞。
- こ:代名詞。
- の:格助詞。
- 敵:名詞。
- 防き:カ行四段活用「防く」の連用形。防ぐ。
- 候は:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の未然形。丁寧語。
- ん:意志の助動詞「む」の終止形。
と申しければ、木曽殿のたまひけるは、
- と:格助詞。引用。
- 申し:サ行四段活用「申す」の連用形。謙譲語。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ば:接続助詞。順接。
- 木曽殿:名詞。
- のたまひ:ハ行四段活用「のたまふ」の連用形。尊敬語。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- は:係助詞。
「義仲、都にていかにもなるべかりつるが、
- 義仲:名詞。
- 都:名詞。
- にて:格助詞。場所。
- いかに:副詞。
- も:係助詞。
- なる:ラ行四段活用「なる」の終止形。ここでは死ぬ。
- べかり:推量の助動詞「べし」の連用形。ここでは意志・予定。
- つる:完了の助動詞「つ」の連体形。
- が:接続助詞。逆接。
これまで逃れくるは、
- これ:代名詞。
- まで:副助詞。
- 逃れ:ラ行下二段活用「逃る」の連用形。
- くる:カ行変格活用「来」の連体形。
- は:係助詞。
汝と一所で死なんと思ふ為なり。
- 汝:代名詞。お前。
- と:格助詞。共同。
- 一所:名詞。同じ場所。
- で:格助詞。
- 死な:ナ行変格活用「死ぬ」の未然形。
- ん:意志の助動詞「む」の終止形。
- と:格助詞。引用。
- 思ふ:ハ行四段活用「思ふ」の連体形。
- 為:名詞。
- なり:断定の助動詞「なり」の終止形。
所々で討たれんよりも、
- 所々:名詞。別々の場所。
- で:格助詞。
- 討た:タ行四段活用「討つ」の未然形。
- れ:受身の助動詞「る」の未然形。
- ん:推量の助動詞「む」の連体形。ここでは仮定・婉曲。
- より:格助詞。比較。
- も:係助詞。
一所でこそ討ち死にをもせめ」
- 一所:名詞。
- で:格助詞。
- こそ:係助詞。強意。
- 討ち死に:名詞。
- を:格助詞。
- も:係助詞。
- せ:サ行変格活用「す」の未然形。
- め:推量の助動詞「む」の已然形。「こそ」の係り結び。ここでは意志。
とて、馬の鼻を並べて
- とて:格助詞。引用を受け「~と言って」。
- 馬:名詞。
- の:格助詞。
- 鼻:名詞。
- を:格助詞。
- 並べ:バ行下二段活用「並ぶ」の連用形。
- て:接続助詞。
駆けんとしたまへば、今井四郎馬より飛び降り、
- 駆け:カ行下二段活用「駆く」の未然形。
- ん:意志の助動詞「む」の終止形。
- と:格助詞。引用。
- し:サ行変格活用「す」の連用形。
- たまへ:ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の已然形。尊敬。
- ば:接続助詞。順接。
- 今井四郎:名詞。
- 馬:名詞。
- より:格助詞。起点。
- 飛び降り:ラ行上二段活用「飛び降る」の連用形。
主の馬の口に取りついて
- 主:名詞。木曽殿。
- の:格助詞。
- 馬:名詞。
- の:格助詞。
- 口:名詞。馬の口・くつわの辺り。
- に:格助詞。
- 取りつい:カ行四段活用「取りつく」の連用形のイ音便。
- て:接続助詞。
申しけるは、
- 申し:サ行四段活用「申す」の連用形。謙譲語。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- は:係助詞。
「弓矢取りは、年ごろ日ごろいかなる高名候へども、
- 弓矢取り:名詞。武士。
- は:係助詞。
- 年ごろ:名詞。長年。
- 日ごろ:名詞。普段。
- いかなる:ナリ活用の形容動詞「いかなり」の連体形。どのような。
- 高名:名詞。武功。
- 候へ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の已然形。丁寧語。
- ども:接続助詞。逆接。
最後の時不覚しつれば、
- 最後:名詞。
- の:格助詞。
- 時:名詞。
- 不覚:名詞。しくじり。
- し:サ行変格活用「す」の連用形。
- つれ:完了の助動詞「つ」の已然形。
- ば:接続助詞。原因・理由。
長き疵にて候ふなり。
- 長き:ク活用の形容詞「長し」の連体形。
- 疵:名詞。不名誉。恥。
- にて:格助詞。
- 候ふ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の連体形。丁寧語。
- なり:断定の助動詞「なり」の終止形。
御身は疲れさせ給ひて候ふ。
- 御身:名詞。
- は:係助詞。
- 疲れ:ラ行下二段活用「疲る」の未然形。
- させ:尊敬の助動詞「さす」の連用形。
- 給ひ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形。尊敬。
- て:接続助詞。
- 候ふ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の終止形。丁寧語。
続く勢は候はず。
- 続く:カ行四段活用「続く」の連体形。
- 勢:名詞。
- は:係助詞。
- 候は:ハ行四段活用「候ふ」の未然形。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。
敵に押し隔てられ、
- 敵:名詞。
- に:格助詞。
- 押し隔て:タ行下二段活用「押し隔つ」の未然形。
- られ:受身の助動詞「らる」の連用形。
言ふかひなき人、郎等に組み落とされさせ給ひて、
- 言ふかひなき:ク活用の形容詞「言ふかひなし」の連体形。取るに足らない。
- 人:名詞。
- 郎等:名詞。家来。
- に:格助詞。
- 組み落とさ:サ行四段活用「組み落とす」の未然形。
- れ:受身の助動詞「る」の未然形。
- させ:尊敬の助動詞「さす」の連用形。
- 給ひ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形。尊敬。
- て:接続助詞。
討たれさせ給ひなば、
- 討た:タ行四段活用「討つ」の未然形。
- れ:受身の助動詞「る」の未然形。
- させ:尊敬の助動詞「さす」の連用形。
- 給ひ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形。尊敬。
- な:完了の助動詞「ぬ」の未然形。
- ば:接続助詞。仮定条件。「もし討たれてしまわれたなら」。
『さばかり日本国に聞こえさせ給ひつる木曽殿をば、
- さばかり:副詞。それほど。
- 日本国:名詞。
- に:格助詞。
- 聞こえ:ヤ行下二段活用「聞こゆ」の未然形。名高い。
- させ:尊敬の助動詞「さす」の連用形。
- 給ひ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形。尊敬。
- つる:完了の助動詞「つ」の連体形。
- 木曽殿:名詞。
- を:格助詞。
- ば:係助詞。
それがしが郎等の討ち奉たる』
- それがし:代名詞。私。
- が:格助詞。連体格。
- 郎等:名詞。
- の:格助詞。主格。
- 討ち:タ行四段活用「討つ」の連用形。
- 奉:ラ行四段活用の補助動詞「奉る」の連用形「奉り」が促音便化した形。謙譲。郎等から木曽殿への敬意。
- たる:完了の助動詞「たり」の連体形。
なんど申さん事こそ口惜しう候へ。
- なんど:副助詞。「など」の意。
- 申さ:サ行四段活用「申す」の未然形。
- ん:推量の助動詞「む」の連体形。ここでは婉曲。
- 事:名詞。
- こそ:係助詞。強意。
- 口惜しう:シク活用の形容詞「口惜し」の連用形のウ音便。残念だ。
- 候へ:ハ行四段活用の補助動詞「候ふ」の已然形。「こそ」の係り結び。
ただあの松原へ入らせ給へ」
- ただ:副詞。すぐに。ただちに。
- あ:代名詞。
- の:格助詞。
- 松原:名詞。
- へ:格助詞。
- 入ら:ラ行四段活用「入る」の未然形。
- せ:尊敬の助動詞「す」の連用形。
- 給へ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の命令形。尊敬。
と申しければ、木曽、「さらば」とて、
- と:格助詞。引用。
- 申し:サ行四段活用「申す」の連用形。謙譲語。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ば:接続助詞。
- 木曽:名詞。
- さらば:接続詞。それならば。
- とて:格助詞。引用を受け「~と言って」。
粟津の松原へぞ駆けたまふ。
- 粟津:名詞。
- の:格助詞。
- 松原:名詞。
- へ:格助詞。
- ぞ:係助詞。強意。
- 駆け:カ行下二段活用「駆く」の連用形。
- たまふ:ハ行四段活用の補助動詞「たまふ」の連体形。「ぞ」の係り結び。尊敬。
「木曽の最期」の品詞分解(6)今井四郎只一騎、五十騎ばかり
今井四郎只一騎、五十騎ばかりが中へ駆け入り、
- 今井四郎:名詞。
- 只:副詞。ただ。
- 一騎:名詞。
- 五十騎:名詞。
- ばかり:副助詞。程度。
- が:格助詞。連体格。
- 中:名詞。
- へ:格助詞。
- 駆け入り:ラ行四段活用「駆け入る」の連用形。
鐙踏んばり立ちあがり、大音声あげて名乗りけるは、
- 鐙:名詞。
- 踏んばり:ラ行四段活用「踏んばる」の連用形。
- 立ちあがり:ラ行四段活用「立ちあがる」の連用形。
- 大音声:名詞。大声。
- あげ:ガ行下二段活用「あぐ」の連用形。
- て:接続助詞。
- 名乗り:ラ行四段活用「名乗る」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- は:係助詞。
「日来は音にも聞きつらん、
- 日来:名詞。日ごろ。
- は:係助詞。
- 音:名詞。評判。
- に:格助詞。
- も:係助詞。
- 聞き:カ行四段活用「聞く」の連用形。
- つ:強意の助動詞「つ」の終止形。下に推量の「らむ」を伴い、「きっと~」の意を添える。
- らん:現在推量の助動詞「らむ」の終止形。ここでは「聞いているだろう」。
今は目にも見給へ。
- 今:名詞。
- は:係助詞。
- 目:名詞。
- に:格助詞。
- も:係助詞。
- 見:マ行上一段活用「見る」の連用形。
- 給へ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の命令形。尊敬。
木曽殿の御乳母子、今井四郎兼平、生年三十三にまかりなる。
- 木曽殿:名詞。
- の:格助詞。
- 御乳母子:名詞。乳母の子。
- 今井四郎兼平:名詞。
- 生年三十三:名詞。三十三歳。
- に:格助詞。
- まかりなる:ラ行四段活用「まかりなる」の終止形。謙譲を含み「~歳になります」。
さる者ありとは
- さる:連体詞。そのような。
- 者:名詞。
- あり:ラ行変格活用「あり」の終止形。
- と:格助詞。引用。
鎌倉殿までも知ろし召されたるらんぞ。
- は:係助詞。
- 鎌倉殿:名詞。源頼朝。
- まで:副助詞。
- も:係助詞。
- 知ろし召さ:サ行四段活用「知ろし召す」の未然形。尊敬語。
- れ:尊敬の助動詞「る」の連用形。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- らん:現在推量の助動詞「らむ」の終止形。
- ぞ:終助詞。強意。
兼平討って見参にいれよ」
- 兼平:名詞。
- 討っ:タ行四段活用「討つ」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- 見参:名詞。お目にかけること。
- に:格助詞。
- いれよ:ラ行下二段活用「入る」の命令形。ここでは「お目にかけよ」。
とて射残したる八筋の矢を、
- とて:格助詞。引用を受け「~と言って」。
- 射残し:サ行四段活用「射残す」の連用形。
- たる:存続の助動詞「たり」の連体形。
- 八筋:名詞。八本。
- の:格助詞。
- 矢:名詞。
差し詰め引き詰め散々に射る。
- を:格助詞。
- 差し詰め:マ行下二段活用「差し詰む」の連用形。矢をつがえる。
- 引き詰め:マ行下二段活用「引き詰む」の連用形。続けざまに引く。
- 散々に:ナリ活用の形容動詞「散々なり」の連用形。激しく。
- 射る:ヤ行上一段活用「射る」の終止形。
死生は知らず、やにはに敵八騎射落とす。
- 死生:名詞。生死。
- は:係助詞。
- 知ら:ラ行四段活用「知る」の未然形。
- ず:打消の助動詞「ず」の連用形。
- やにはに:副詞。その場ですぐに。
- 敵八騎:名詞。
- 射落とす:サ行四段活用「射落とす」の終止形。
その後、打ち物抜いて、あれに馳せ合ひ、
- そ:代名詞。
- の:格助詞。
- 後:名詞。
- 打ち物:名詞。太刀など。
- 抜い:カ行四段活用「抜く」の連用形のイ音便。
- て:接続助詞。
- あれ:代名詞。
- に:格助詞。
- 馳せ合ひ:ハ行四段活用「馳せ合ふ」の連用形。
これに馳せ合ひ切って回るに、
- これ:代名詞。
- に:格助詞。
- 馳せ合ひ:ハ行四段活用「馳せ合ふ」の連用形。
- 切っ:ラ行四段活用「切る」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
- 回る:ラ行四段活用「回る」の連体形。
- に:格助詞。場面・状況。
面を合はする者ぞなき。
- 面:名詞。正面。
- を:格助詞。
- 合はする:サ行下二段活用「合はす」の連体形。向かい合う。
- 者:名詞。
- ぞ:係助詞。強意。
分捕りあまたしたりけり。
- なき:ク活用の形容詞「なし」の連体形。「ぞ」の係り結び。
- 分捕り:名詞。敵から奪った首・武具など。
- あまた:副詞。たくさん。
- し:サ行変格活用「す」の連用形。
- たり:完了の助動詞「たり」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
ただ、「射取れや」とて中に取りこめ、
- ただ:副詞。ただ。ひたすら。
- 射取れ:ラ行四段活用「射取る」の命令形。射て仕留めよ。
- や:間投助詞。呼びかけ。
- とて:格助詞。引用を受け「~と言って」。
- 中:名詞。
- に:格助詞。
- 取りこめ:マ行下二段活用「取りこむ」の連用形。取り囲む。
雨の降るやうに射けれども、
- 雨:名詞。
- の:格助詞。主格。
- 降る:ラ行四段活用「降る」の連体形。
- やうに:比況の助動詞「やうなり」の連用形。「~ように」の意。
- 射:ヤ行上一段活用「射る」の連用形。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ども:接続助詞。逆接。
鎧よければ裏かかず、
- 鎧:名詞。
- よけれ:ク活用の形容詞「よし」の已然形。
- ば:接続助詞。原因・理由。
- 裏:名詞。鎧の内側。
- かか:ラ行四段活用「かかる」の未然形。貫通する。
- ず:打消の助動詞「ず」の連用形。
あき間を射ねば手も負はず。
- あき間:名詞。鎧のすき間。
- を:格助詞。
- 射:ヤ行上一段活用「射る」の未然形。
- ね:打消の助動詞「ず」の已然形。
- ば:接続助詞。原因・理由。
- 手:名詞。傷。
- も:係助詞。
- 負は:ハ行四段活用「負ふ」の未然形。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。
木曽殿は只一騎、
- 木曽殿:名詞。
- は:係助詞。
- 只:副詞。ただ。
- 一騎:名詞。
粟津の松原へ駆け給ふが、
- 粟津:名詞。
- の:格助詞。
- 松原:名詞。
- へ:格助詞。
- 駆け:カ行下二段活用「駆く」の連用形。
- 給ふ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連体形。尊敬。
- が:接続助詞。
正月廿一日、入り相ばかりの事なるに、
- 正月廿一日:名詞。正月二十一日。
- 入り相:名詞。日没ごろ。
- ばかり:副助詞。程度。
- の:格助詞。
- 事:名詞。
- なる:断定の助動詞「なり」の連体形。
- に:接続助詞。時・状況を表す。
薄氷は張ったりけり、
- 薄氷:名詞。
- は:係助詞。
- 張っ:ラ行四段活用「張る」の連用形の促音便。
- たり:存続の助動詞「たり」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
深田ありとも知らずして、
- 深田:名詞。深い田。
- あり:ラ行変格活用「あり」の終止形。
- と:格助詞。引用。
- も:係助詞。
- 知ら:ラ行四段活用「知る」の未然形。
- ず:打消の助動詞「ず」の連用形。
- して:接続助詞。
馬をざっと打ち入れたれば、
- 馬:名詞。
- を:格助詞。
- ざっと:副詞。勢いよく。
- 打ち入れ:ラ行下二段活用「打ち入る」の連用形。
- たれ:完了の助動詞「たり」の已然形。
- ば:接続助詞。偶然条件。「~したところ」。
馬の頭も見えざりけり。
- 馬:名詞。
- の:格助詞。
- 頭:名詞。
- も:係助詞。
- 見え:ヤ行下二段活用「見ゆ」の未然形。
- ざり:打消の助動詞「ず」の連用形。
- けり:過去の助動詞「けり」の終止形。
あふれどもあふれども、打てども打てども働かず。
- あふれ:ラ行四段活用「あふる」の已然形。鐙で馬の腹を蹴る。
- ども:接続助詞。逆接。
- あふれ:ラ行四段活用「あふる」の已然形。
- ども:接続助詞。逆接。
- 打て:タ行四段活用「打つ」の已然形。
- ども:接続助詞。逆接。
- 打て:タ行四段活用「打つ」の已然形。
- ども:接続助詞。逆接。
- 働か:カ行四段活用「働く」の未然形。ここでは馬が動く。
- ず:打消の助動詞「ず」の終止形。
今井が行方の覚束なさに
- 今井:名詞。
- が:格助詞。連体格。
- 行方:名詞。
- の:格助詞。
- 覚束なさ:名詞。気がかりなこと。
- に:格助詞。原因・理由。
振り仰ぎ給へる内甲を、
- 振り仰ぎ:ガ行四段活用「振り仰ぐ」の連用形。
- 給へ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の已然形。尊敬。
- る:完了の助動詞「り」の連体形。
- 内甲:名詞。兜の内側、顔の部分。
- を:格助詞。
三浦の石田次郎為久、追っかかって、
- 三浦:名詞。
- の:格助詞。
- 石田次郎為久:名詞。
- 追っかかっ:ラ行四段活用「追っかかる」の連用形の促音便。
- て:接続助詞。
よっ引いて、ひゃうふっと射る。
- よっ引い:カ行四段活用「よっ引く」の連用形のイ音便。力いっぱい引く。
- て:接続助詞。
- ひゃうふっと:副詞。矢が飛んで当たる音を表す。
- 射る:ヤ行上一段活用「射る」の終止形。
痛手なれば、真っ向を馬の頭に当てて
- 痛手:名詞。深い傷。
- なれ:断定の助動詞「なり」の已然形。
- ば:接続助詞。原因・理由。
- 真っ向:名詞。額・兜の正面。
- を:格助詞。
- 馬:名詞。
- の:格助詞。
- 頭:名詞。
- に:格助詞。
- 当て:タ行下二段活用「当つ」の連用形。
- て:接続助詞。
うつぶし給へる処に、
- うつぶし:サ行四段活用「うつぶす」の連用形。
- 給へ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の已然形。尊敬。
- る:完了の助動詞「り」の連体形。
- 処:名詞。
- に:格助詞。
石田が郎等二人落ちあうて、
- 石田:名詞。
- が:格助詞。連体格。
- 郎等二人:名詞。
- 落ちあう:ハ行四段活用「落ちあふ」の連用形のウ音便。
- て:接続助詞。
遂に木曽殿の首をば取ってんげり。
- 遂に:副詞。とうとう。
- 木曽殿:名詞。
- の:格助詞。
- 首:名詞。
- を:格助詞。
- ば:係助詞。
- 取っ:ラ行四段活用「取る」の連用形の促音便。
- てんげり:連語。完了の助動詞「つ」の連用形「て」+過去の助動詞「けり」の終止形が音変化した形。「~てしまった」の意。
太刀の先に貫き、高く差し上げ、
- 太刀:名詞。
- の:格助詞。
- 先:名詞。
- に:格助詞。
- 貫き:カ行四段活用「貫く」の連用形。
- 高く:ク活用の形容詞「高し」の連用形。
- 差し上げ:ガ行下二段活用「差し上ぐ」の連用形。
大音声をあげて、「この日頃、
- 大音声:名詞。
- を:格助詞。
- あげ:ガ行下二段活用「あぐ」の連用形。
- て:接続助詞。
- こ:代名詞。
- の:格助詞。
- 日頃:名詞。近ごろ。
日本国に聞こえさせ給つる木曽殿を、
- 日本国:名詞。
- に:格助詞。
- 聞こえ:ヤ行下二段活用「聞こゆ」の未然形。名高い。
- させ:尊敬の助動詞「さす」の連用形。
- 給:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の連用形。尊敬。
- つる:完了の助動詞「つ」の連体形。
- 木曽殿:名詞。
- を:格助詞。
三浦の石田次郎為久が討ち奉りたるぞや」
- 三浦:名詞。
- の:格助詞。
- 石田次郎為久:名詞。
- が:格助詞。主格。
- 討ち:タ行四段活用「討つ」の連用形。
- 奉り:ラ行四段活用の補助動詞「奉る」の連用形。謙譲。
- たる:完了の助動詞「たり」の連体形。
- ぞ:終助詞。念押し・強意。
- や:間投助詞。呼びかけ・詠嘆。
と名乗りければ、
- と:格助詞。引用。
- 名乗り:ラ行四段活用「名乗る」の連用形。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。
- ば:接続助詞。順接。
今井四郎、軍しけるがこれを聞き、
- 今井四郎:名詞。
- 軍:名詞。戦。
- し:サ行変格活用「す」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。
- が:接続助詞。
- これ:代名詞。
- を:格助詞。
- 聞き:カ行四段活用「聞く」の連用形。
「今は誰を庇はんとてか
- 今:名詞。
- は:係助詞。
- 誰:代名詞。
- を:格助詞。
- 庇は:ハ行四段活用「庇ふ」の未然形。
- ん:意志の助動詞「む」の終止形。
- とて:格助詞。引用を受け「~と思って」。
いくさをもすべき。
- か:係助詞。反語。
- いくさ:名詞。
- を:格助詞。
- も:係助詞。
- す:サ行変格活用「す」の終止形。
- べき:推量の助動詞「べし」の連体形。「か」の係り結び。反語。
これを見給へ東国の殿原。
- これ:代名詞。
- を:格助詞。
- 見:マ行上一段活用「見る」の連用形。
- 給へ:ハ行四段活用の補助動詞「給ふ」の命令形。尊敬。
- 東国:名詞。
- の:格助詞。
- 殿原:名詞。武士たちへの敬称。
日本一の剛の者の自害する手本。」
- 日本一:名詞。
- の:格助詞。
- 剛:名詞。剛勇。
- の:格助詞。
- 者:名詞。
- の:格助詞。
- 自害:名詞。
- する:サ行変格活用「す」の連体形。
- 手本:名詞。模範。
とて、太刀の先を口に含み、
- とて:格助詞。引用を受け「~と言って」。
- 太刀:名詞。
- の:格助詞。
- 先:名詞。
- を:格助詞。
- 口:名詞。
- に:格助詞。
- 含み:マ行四段活用「含む」の連用形。
馬より逆さまに飛び落ち、貫かつてぞ失せにける。
- 馬:名詞。
- より:格助詞。
- 逆さまに:ナリ活用の形容動詞「逆さまなり」の連用形。
- 飛び落ち:タ行上二段活用「飛び落つ」の連用形。
- 貫かつ:ラ行四段活用「貫かる」の連用形の促音便。ここでは太刀に体を貫かれる意。
- て:接続助詞。
- ぞ:係助詞。強意。
- 失せ:サ行下二段活用「失す」の連用形。ここでは死ぬ。
- に:完了の助動詞「ぬ」の連用形。
- ける:過去の助動詞「けり」の連体形。「ぞ」の係り結び。
さてこそ粟津のいくさはなかりけれ。
- さて:副詞。そのような次第で。
- こそ:係助詞。強意。
- 粟津:名詞。
- の:格助詞。
- いくさ:名詞。
- は:係助詞。
- なかり:ク活用の形容詞「なし」の連用形。
- けれ:過去の助動詞「けり」の已然形。「こそ」の係り結び。
「木曽の最期」の敬語表現と敬意の方向まとめ
尊敬語
| 敬語 | 方向 | 意味 |
|---|---|---|
| 具せられたり | 語り手 → 木曽義仲 | お連れになっていた |
| のたまふ | 語り手 → 木曽義仲 | おっしゃる |
| 思し召す | 今井兼平 → 木曽義仲 | お思いになる |
| 疲れさせたまはず | 今井兼平 → 木曽義仲 | お疲れになっていない |
| 入らせ給へ | 今井兼平 → 木曽義仲 | お入りください |
| 駆けたまふ | 語り手 → 木曽義仲 | お駆けになる |
| 振り仰ぎ給へる | 語り手 → 木曽義仲 | お振り仰ぎになった |
| うつぶし給へる | 語り手 → 木曽義仲 | うつ伏しになられた |
| 聞こえさせ給ひつる | 今井兼平 → 木曽義仲 | 世間に名高くいらっしゃった |
| 知ろし召されたる | 今井兼平 → 鎌倉殿 | ご存じでいらっしゃる |
| 見給へ | 今井兼平 → 東国の武士 | ご覧ください |
謙譲語
| 敬語 | 方向 | 意味 |
|---|---|---|
| ゆきあひたてまつる | 今井兼平 → 木曽義仲 | お会い申し上げる |
| 申す | 今井兼平 → 木曽義仲 | 申し上げる |
| 参る | 今井兼平 → 木曽義仲 | 参上する |
| つかまつる | 今井兼平 → 木曽義仲 | いたす |
| 仕る | 今井兼平 → 木曽義仲 | いたす |
| 奉る | 巴・郎等 → 木曽義仲 | ~申し上げる |
| 承る | 話し手 → 相手 | お聞きする・うかがう |
| まかりなる | 今井兼平 → 相手 | ~歳になります |
丁寧語
| 敬語 | 方向 | 意味 |
|---|---|---|
| 候ふ | 話し手 → 聞き手 | ございます・おります |
| かたじけなう候ふ | 今井兼平 → 木曽義仲 | ありがたくございます |
| 参って候ふ | 今井兼平 → 木曽義仲 | 参上しております |
| 承り候へ | 話し手 → 聞き手 | うかがっております |
| 御馬も弱り候はず | 今井兼平 → 木曽義仲 | お馬も弱っておりません |
| 思し召し候ふべき | 今井兼平 → 木曽義仲 | お思いになるでしょう |
| 防き候はん | 今井兼平 → 木曽義仲 | お防ぎいたしましょう |
| 長き疵にて候ふなり | 今井兼平 → 木曽義仲 | 長く残る不名誉なのでございます |
「木曽の最期」の現代語訳
「木曽の最期」の現代語訳については、こちらの記事をご覧ください。
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