おせち料理に入っているカリッとした小魚。
アーモンドフィッシュの小魚のようで、とても美味しいですよね。
魚なのに「田作り」または「ごまめ」と呼ばれるこの一品は、主に関東地方で祝い肴三種の一つとされ、おせちに欠かせない料理です。
この記事では田作り(ごまめ)の名称の由来と、おせち込められた意味を解説します。
田作り(ごまめ)とは?

田作り(ごまめ)とは、乾燥させたカタクチイワシの幼魚を炒り、しょうゆ・みりん・砂糖などで作った甘辛いタレに絡めた料理のことです。
乾燥させたカタクチイワシの幼魚そのものを「田作り」または「ごまめ」といい、名称の由来は諸説あります。
田作りの由来
田作りという名称は、干したイワシが田畑の肥料として使われていたことに由来します。
海に囲まれた日本では、古くから魚を原料とした肥料が利用されてきました。
乾燥イワシは「干鰯(ほしか)」と呼ばれ、田んぼに干鰯をまくと豊作になったことから、田作りと呼ばれるようになったようです。
江戸時代には特に綿花栽培との相性が良かったことから、綿花の産地であった上方(現在の近畿地方)での需要が急増します。
干鰯の流通を担う干鰯問屋が生まれ、享保9(1724)年には130万俵もの干鰯が全国各地から大坂へ集まったと記録されています。
一般的な肥料は草木灰や家畜の糞尿など自給するものでしたが、干鰯はお金を払って購入する「金肥(きんぴ)」という高級肥料でした。
このように特別な肥料であり、豊作をもたらす縁起物であったことから、カタクチイワシの干物を使った料理が正月料理に加えられ、「田作り」と呼ばれるようになったのかもしれません。
ごまめの語源
田作りは別名「ごまめ」とも呼ばれます。
特に関西地方では、田作りよりもごまめと呼ぶ人の方が多いそうです。
ごまめの語源も諸説あり、「細群(こまむれ)」が転訛したというのがWikipediaにも記載されている定説のようですが、根拠不明のためあくまでも一説に過ぎないようです。
五穀豊穣を祈願して「五万米」という漢字が当てられ、「ごまめ」と呼ばれるようになったという説は一理あるかもしれません。
江戸時代には料理としての田作りが、「ごまめ」という名称で京都御所の正月儀式に供されていたそうです。
宮廷に献上するに際して、田作りといういかにも身分の低そうな名前でなく、上品で縁起も良さそうな「五万米(ごまめ)」という名称に変えたというのはあり得ると思います。
ただ、「ごまめの歯ぎしり」「ごまめの魚交じり」といった慣用表現もあり、「ごまめ=ザコ」ということなので、普通に「小さい魚(こまいめ)」を語源とするのが妥当そうです。
ほかにも目がゴマのように黒いことから「ごまめ」と呼ばれるようになったという説もあります。
おせちの田作り(ごまめ)の意味

おせちの田作り(ごまめ)は、その言葉の由来通りに「五穀豊穣」を願う意味があります。
料理としての田作り(ごまめ)が庶民の間でも食べられるようになったのは江戸時代以降といわれていますが、カタクチイワシの干物は保存食として古代から食されていたことでしょう。
おせち料理というのはもともと、季節の変わり目である「節」に豊作を願って神様に供される「御節供(おせちく)」という食べ物に由来します。
古くから良質な肥料として利用されていた干しイワシを、御節供として供えていた可能性も十分あるのではないでしょうか。
そのほか、稚魚を使っていることから「子孫繁栄」を願う意味もあるそうですが、それはちょっと後付けな気がします。
いずれにしても簡単に作れて、アーモンドフィッシュで代用してもいいと思いますし、お正月のおせちには田作り(ごまめ)を加えてはいかがでしょうか。


