おせち料理に煮物として入れられる「くわい(慈姑)」。
普段食べることのない食材であるため、「くわいって何? なんでおせちに入ってるの?」と疑問に思っている方は少なくないかと思います。
この記事ではおせち料理の「くわい」について、どんな植物でどんな意味があるのか、わかりやすく解説します。

くわい(慈姑)とは?
クワイは「オモダカ」という水生植物の栽培品種です。


野生種のオモダカは東南アジア原産とされていますが、栽培品種であるクワイは中国で開発されたため、クワイの原産地は中国とされています。
日本へは奈良時代に伝来したとされており、特に江戸時代から盛んに栽培され、武家のお正月料理の食材として使われていたようです。
食用とされるのは地下茎が肥大化した塊茎の部分ですが、奈良時代には若芽も食されていたようで、万葉歌にも詠まれています。
君がため山田の沢に恵具採むと雪消の水に裳の裾濡れぬ(巻10-1839番)
あしひきの山沢恵具を採みに行かむ日だにも逢はせ母は責むとも(巻11-2760番)
「恵具」というのがクロクワイを指すといわれており、雪解けの頃に摘まれていたことから、当時から季節の節目に食べる「御節(おせち)」の一つだったのかもしれません。


クワイの語源については諸説ありますが、葉っぱの形が鍬に似ていることから「鍬の葉のイモ → クワイモ → クワイ」と転訛した、と新井白石が書いた語学書『東雅』で紹介されています。
原産地については近年、大阪府吹田市の伝統野菜として知られる「吹田クワイ」が、日本に自生していたオモダカが進化した日本原産種であることが明らかになりました。
吹田クワイは京都御所に200年近く献上された歴史があり、冬に収穫されることから、やはりお正月料理として食べられていたのはないでしょうか。
おせち料理のくわいの意味

おせち料理では煮物にしてクワイが入れられます。
塊茎から突き出た芽を「芽出たい(めでたい)」と掛ける縁起物であり、芽が大きくまっすぐ伸びることから「立身出世」を願う食材です。
地下茎の先にたくさんの塊茎をつけることから、子孫繁栄を祈願する食材でもあります。
クワイを六角形や八角形にかたどって、亀の甲羅に見立てれば、不老長寿を願うおせち料理に。
さらに、昔は「か」を「くわ」と表記したことから、「クワイ → カイ」で食べると「快」になる、一年を快く過ごせるという意味も持たせることができます。
このようにさまざまな願いを込めた縁起物であり、お正月に旬を迎える食材であることから、クワイはおせち料理の定番とされています。
普段はあまり食べることはありませんが、お正月のおせち料理にはぜひクワイを入れてみてください。

くわいはどこで買える?
おせち料理の定番といわれているクワイですが、実際に売っているところを見かけることはほとんどないですよね。
少なくとも私が住んでいる近所のスーパーでは、一度も見かけたことがありません。
都会のスーパーやデパ地下に行けば手に入るのかもしれませんが、クワイのためだけに行くのはちょっと面倒⋯⋯。
と、思ってネットで調べてみたら、クワイの缶詰があるんですね!
皮をむいたりする下処理も要らないので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか♪


